組織診断・組織サーベイとは?目的や実施方法、大事なポイントを解説
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働き方改革や新型コロナウイルスの蔓延に伴う社会情勢の変化などにより、企業にとって柔軟な事業の適応がより一層必要になっています。
その中で、その事業の変化や強化を実現する組織づくりを行うために組織診断や、組織サーベイを導入する企業も多くなってきています。
本記事では、現在は多くの企業が導入している組織サーベイについて、その目的や陥りがちな落とし穴とその対処法、具体的な導入方法についてご紹介します。
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組織診断ツール・組織サーベイとは?
組織サーベイは、組織内の従業員を対象におこなうアンケート調査の総称です。従業員満足度を測る「従業員満足度調査」も、従業員エンゲージメントを測る「エンゲージメントサーベイ」も組織サーベイの一種だと言えるでしょう。
組織サーベイは、普段は目に見えにくい従業員の感情や意見、ニーズや不満を把握することで組織の強みを明確にしたり、課題を抽出したりするために用いられます。「組織がどの領域ではうまく機能していて、どの領域では改善が必要なのか?」など、理想の組織とのギャップを把握するために役立ちます。定期的に組織サーベイをおこなうことで組織の現状を把握できるだけでなく、様々な組織施策の効果測定をしてPDCAを回すことも可能です。
社内アンケートとの違い
サーベイと社内アンケートはともに情報収集の手段として類似していますが、主な違いはその目的にあります。社内アンケートは社内での意見を収集することを目的としていますが、サーベイは、特に人事領域においては、施策の優先順位を付けて実際に実行することを目的としています。社内アンケートは情報収集が目的であり、サーベイは施策の実行が目的である点で異なります。
■サーベイの種類と頻度について
組織診断ツール・サーベイには様々な種類があります。例えば、以下のようなものがあります。
・センサス:半年〜1年で行う中・大規模なサーベイ
・パルスサーベイ:週1回や月1回で行う簡易的なサーベイ
▼パルスサーベイについて詳しくはこちら
パルスサーベイとは?実施する意味やメリット・具体的な事例まで徹底解説!
・エンゲージメントサーベイ:会社と従業員の相思相愛度合いを測るサーベイ
▼エンゲージメントサーベイについて詳しくはこちら
エンゲージメントサーベイとは?実施する目的やメリット、具体的な質問事項を解説
・モラールサーベイ:従業員のモチベーションを評価するためのサーベイ
・従業員サーベイ:従業員の満足度などを測るサーベイ
●センサス
センサスは一般的に半年〜1年の周期で行うサーベイです。設問数は50〜100問程度で網羅的に組織診断を実行することができます。そのため、より詳細な課題設定やアクションの設計を行うことができるでしょう。
一方で、設問数が多いため頻繁に実施しすぎると従業員が負担に感じてしまい、「負担のわりに会社が改善活動をしてくれない」と不満が生まれる可能性があるため自社に適したサイクルを設計することが大切です。
● パルスサーベイ
パルスサーベイは、週に1回や月に1回など、短いスパンで繰り返すサーベイのことを言います。設問数を10個程度、重要な項目だけに絞って調査をおこなう点に特徴があります。パルスサーベイの主な目的は、継続的な経過観察を通して従業員満足度や組織内の変化を迅速に把握することです。
● エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、自社や自社の商品・サービスに対する従業員の感情や愛着度を調査するためのアンケートです。企業理念やビジョンに対する共感度や組織文化への適合度、上司や同僚との関係性など、様々な設問を通して従業員エンゲージメントを測定します。
● モラールサーベイ
モラールサーベイは、主に従業員のモチベーションを評価するためにおこなわれるアンケートで、「従業員意識調査」や「従業員満足度調査」と呼ばれることもあります。設問項目は企業によって異なりますが、一般的には給与や労働時間、業務内容や福利厚生、有給休暇の取得のしやすさなどについて、従業員がどのくらい満足しているか、または不満を感じているかを調査します。
● 従業員サーベイ
従業員サーベイとは、従業員を対象におこなわれるアンケート調査のことで、組織サーベイとほぼ同義です。仕事内容や労働条件、労働環境や報酬、ワークライフバランスや成長機会、組織文化、人間関係、評価、キャリアパスなどに関する設問を通して組織課題を抽出したり、組織改革の洞察を得たりするためにおこなわれます。
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組織診断・組織サーベイツールで生産性向上や離職率低下を実現!導入時のポイント、事例を紹介
組織サーベイが求められる背景
現在は商品のライフサイクルが短くなっており、一度売れたヒット商品が売れ続けることが滅多に無いようになってきています。また、転職が当たり前になり人材の流動化が進んでいます。
そのため企業は自社の方針を実現することや存続するために「方針や戦略の実行度を高める組織づくり」「従業員から選ばれる会社づくり」が大きな経営課題となっています。
その中で「組織サーベイ」により適切な現状把握を行うことで先回りした問題解決や適切な組織戦略の検討・実行を行うことができるため、多くの企業が注目しています。
ここで大切なのは、組織サーベイは「問題を発見するため」だけのツールでは無いということです。どのような会社にもその会社なりの風土や特徴があります。
それを無視して「問題」のみを探して対処し始めると人・時間・お金といった有限で貴重な経営資源を浪費することになります。適切に自社の伸ばしたい「強み」と、目指す姿に対する現状とのギャップ(課題・弱み)を分けて自己認知することが効果的な組織改善には大切です。
▼組織診断・組織サーベイを有効活用する3つのポイント 診断編
組織診断ツール・組織サーベイの目的
①従業員満足度調査~制度や待遇に満足してもらうための調査~
多くの日本企業が過去に取り組んできた調査の主流は「従業員満足度調査」と呼ばれるものです。
従業員が「待遇面で求めているもの」を把握し、社員満足を高めるための課題を明確化させることが目的です。
会社(雇用側)と従業員(被雇用側)という明確な雇用関係の中での企業経営に役立つものとされてきました。
調査の特徴としては「会社が提供している制度や給与」に関して「満足度」を調査することにあります。
給料や制度、福利厚生など「あると嬉しいもの(ないと困るもの)」についての調査なので、対応策を打つことで従業員の満足を引き出すことはできるものの、「あることで生産性が大きく向上するものではない」という点に注意が必要です。
この従業員満足度調査は、調査対象が制度や給与であるということから、人事が主管を担うことが多いものでした。
②ストレスチェック(個人認識サーベイ)~働きやすい環境づくりのための見える化の調査~
2015年に義務化されてから一気に広まったのが、「ストレスチェック」などの個人の認識を把握するサーベイです。労働安全衛生法によって、常時使用する労働者数が50人以上の事業場ではストレスチェックを年に一回実施することが義務化されています。
仕事量や職場の人間関係による精神障害による労災請求が増えており、自殺原因・動機の約半数が健康や仕事に関することであることが社会問題となり、従業員の「メンタルヘルス不調の予防」や「高ストレス者のケア・再発の防止」を目的として調査が行われています。
調査の特徴としては「個人がどう感じているか」に注目している点です。定義が難しい「働きがい」や無意識の自身の状態に関しても数値化することができることがメリットで、働きやすい環境かどうかが明確になります。
一方で、「どうすれば改善するのか」「改善したことで組織成果が高まるのか」が明確になりづらいため、改善施策が打ちづらいことがデメリットとして挙げられます。調査対象の範囲と情報の秘匿性から、労務が主管を担うことが多い施策となっています。
このような状況の中で、風通しの良い職場環境の重要性が高まっています。ストレスチェックやその他のサーベイは、従業員のストレスや不満を把握し、それに対応するための有効な手段となり得ます。職場環境を改善し、オープンでコミュニケーションが活発な職場を実現することは、従業員の幸福感と生産性の向上に直結し、結果的に企業全体のパフォーマンスの向上にも寄与します。
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③エンゲージメント調査(組織調査サーベイ)~働きがいと組織の生産性を同時に高めるための組織改善の調査~
昨今注目が集まっているのは「エンゲージメント調査」と呼ばれるものです。従業員の貢献意欲(仕事に対する熱意)を引き出すことを目的としています。
労働市場の自由化やジョブ型への移行が時代背景にあり、「魅力的な個人を惹きつける組織づくり」や「個性が活かされる生産性の高い組織づくり」を目的として調査が行われています。
会社や職場といった「組織」や上司の「マネジメント」に対する認識を把握し、「何をすれば生産性が高まるか」を見える化できることが特徴です。これまで勘や経験によって改善してきたマネジメントを、課題の見える化や施策の効果測定という側面でアシストすることができます。
組織改善に繋がる課題が明確になるというメリットがある一方で、デメリットとしては、あくまで組織全体の状態を調査するため、個人特定は難しくなります。
個人特定を仕組みに組み込むことは可能ですが、忖度や批判を恐れて正直な結果が把握できなくなることが多いため、個人を特定しない仕組みの方が、より正確な組織状態の把握に繋がります。
組織改善を目的とおいているため、これまでの調査よりも多岐に活用することができ、人事のみならず経営企画や現場の管理職が主管を担うことが多い施策となっています。
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組織サーベイが求められる背景
組織サーベイのメリット・デメリット
昨今は組織サーベイを導入する企業が増えていますが、必ずしもメリットばかりではありません。デメリットも押さえたうえで導入判断をするようにしましょう。
組織サーベイのメリット
組織サーベイをおこなうメリットの一つが、普段は見えにくい従業員の感情や意見、ニーズを把握できることです。さらに組織サーベイの結果を分析することで、組織の強みや成功ポイントを把握することもできますし、組織課題を抽出して、具体的な改善策を講じる手助けにもなります。また、従業員の離職のサインを察知できれば、いち早く離職防止の対応をすることができます。
組織サーベイのデメリット
組織サーベイを実施する際、設問設計が適切でないと調査結果の精度が低下する可能性があります。また、組織サーベイの設問数が多かったり実施頻度が多かったりすると、従業員の負担になります。従業員が「面倒くさいな」と感じると、真剣な回答が得られなくなるので注意が必要です。また、組織サーベイをやりっ放しにして、調査結果が組織改善や職場改善に活かされないと従業員の不満を招くおそれがあります。
組織サーベイ・組織診断を成功させるための導入手順
サーベイの種類やその内容をある程度ご紹介しましたが、どのような導入手順を踏めば組織サーベイ・組織診断を成功させられるのでしょうか。
設計~運用をステップごとに分けて、ポイントとともにご紹介します。
ステップ①「目的の確認」
基本的に導入時には経営陣・人事が運用を牽引していく場合が多いです。その牽引する側で「全体の概ねの傾向や会社全体への期待が分かればまずは良い」「各部署の問題点を細かく洗い出したかった」というような目的や得たい成果のズレが生じてしまうと現場での運用はうまくいきません。
そのため、まずは経営陣・人事でそもそも組織診断・組織サーベイを行う目的の共通認識を会議・打ち合わせを通じて作りましょう。
この過程の中で、
- 組織改善の「責任者」
- サーベイ推進の「実行者」
- 組織改善の「推進者」
といった役割・責任者を決めておくとその後の進め方で齟齬が抑えられるでしょう。
ステップ②「調査項目の設計」
次に、組織サーベイの調査項目を設計します。調査項目によって得られる結果の精度が変わるため、入念に検討する必要があります。調査項目を設計する際は、バイアスを排除することが重要です。偏った設問や誘導するような設問は避け、従業員の本音を引き出すことができるような設問を用意しましょう。また、多様な質問項目を組み込むことで、組織内の様々な側面をバランス良く把握できるようにしましょう。
ステップ③「サーベイの方法の検討」
これまでのステップでサーベイの内容が決まりました。次にどの対象に、どれくらいの頻度で、どのように回答してもらうかといった方法を検討しましょう。
基本的には半年・四半期周期の「センサス」を行い、月次で「パルスサーベイ」を実施することで運用が進みやすくはなります。
ただ、導入初期であることと現場の運用負荷を考えると最初は「センサス」で網羅的に現状を把握して対策とフィードバックを行って、2回目以降で徐々に現場に運用を移管していく際にパルスサーベイも活用すると良いでしょう。
対象については、自社のビジネスモデルを元に検討すると良いでしょう。基本的には正社員向けで実施する場合が多いですが、飲食店や小売りなどのアルバイト・パートの方が業務のボリュームを大きく担っている場合にはその方々も対象にするとより現状が明確になるでしょう。
ステップ④「事前の告知」
サーベイ実施にあたり、回答者である従業員への事前の告知は必ず行いましょう。ここでのポイントは、「サーベイを実施すること」のみを告知するのはNGだということです。
よくある失敗例としては、サーベイが「突然の御触書」になってしまうことです。
「手段・回答方法」のみ告知されては、従業員も「また仕事が増えるのか・・・」「また会社が何か始めたな」と言った受け取り方をしてしまい、サーベイ結果自体の有用性や施策への協力姿勢も低下してしまいます。
重要なのは、「なぜこのサーベイを行いたいのか」という「目的」や「このサーベイを元にどのように全員にとって良いことがあるのか」という「メリット」を明確に伝えることです。
方法としては全社員向けに説明会を設ける”サーベイ事前説明会”や、それが難しければ経営からメッセージの発信という形で告知するのが良いでしょう。
この目的を伝えた上で、サーベイ回答時の注意点(メリハリをつける、言葉の定義を伝える等)を周知することでより良いサーベイの回答を促進できるでしょう。
ステップ⑤「サーベイ実施」
いよいよサーベイ回答が開始したら、進捗率の確認を行いましょう。ステップ①で決めた「サーベイ推進の実行者」の方(多くの場合は人事)が全体・各部署の進捗率を確認し、進捗が芳しくない場合はリマインドを行いましょう。
部署ごとに回答率にばらつきが出ている場合には、「答え方がわからない」「定義がいまいち理解できない」といった職種ごとの違いや理解度の不足から来る進捗の悪さが生じている可能性があります。
この場合は実際に部署責任者と話した上で再度疑問点の払拭機会を会議の中に入れ込んでもらう、疑問を集約して回答するなどして最初に起こりがちなつまづきを解消してあげましょう。
従業員数にもよりますが、大体95%以上の回答率があれば組織状態が反映されたデータを得ることができます。各部署まんべんなく回答してもらえるようにしていきましょう。
ステップ⑥「サーベイ分析と課題設定」
サーベイの集計が完了した後は、結果を見て感じていた課題、感覚と比べてどうだったかを確認しましょう。各部署、役職など細かく見ていくとそれぞれの特徴や課題が出て来ます。
ここで大切なのは「問題に注視しすぎない」ということです。どうしても結果を見ると「問題点」が浮き彫りになるのですぐさま責任者への対応を迫ってしまう場合があります。
その前に、「この部署に求めている事、この部署の従業員に期待して欲しい事」といった「目指す状態から見てどうか?」という「課題」とそれに伴うアクションを考えるようにしましょう。
ステップ⑦「従業員へのフィードバック」
サーベイの「取りっぱなし」は従業員の不満を生む大きな要因の1つです。
「せっかく答えたのに何もアクションされない」「あの調査って意味ある?」といった声が挙がってくると、組織の改善に向けたアクションもスピード・質ともに低下してしまいます。
経営、管理職からの結果を受けて感じたこと、今後の具体的なアクションや逆にメンバーにも協力して欲しい事をしっかりフィードバックするようにしましょう。
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組織診断を実施する際の落とし穴とは?~単なる調査を行うだけでは逆効果?~
組織診断や組織サーベイは企業の目指すことを実現できる組織に近づくために効果的な手段です。しかし、単に調査を行うだけではむしろ従業員の不満を生み出す事にもなりかねません。
組織診断の実施にあたって、気を付けるべき「落とし穴」をご紹介するので、先んじて意識して組織診断を導入・運用してください。
①「組織診断実施によってエンゲージメントが下がる」という落とし穴
組織診断や組織サーベイは、「調査することから始まる」と考えられがちです。しかし、回答者側の目線から考えると「調査の告知から始まる」と捉えることが重要になります。
先述しましたが、調査の意図や目的を伝えず、急に調査を行ってしまうと、「悪い結果をつけたらばれるのではないか」「何のために使われるかわからない」「余計な仕事が増えた」と思われがちです。
また、組織改善などの本来の目的を伝えずに調査してしまうと、その後の協力が得られなかったりもします。
そうすると調査するだけで、エンゲージメントが下がる、という落とし穴に落ちてしまいます。
事前の告知や意図の説明を丁寧に行い、回答者にとってのメリットを納得してもらってこそ意味のある結果が得られます。
②「組織状態を分かった気になる」という落とし穴
組織診断や組織サーベイを調査すると、「自社内で比較してなんとなくの傾向や状態が分かる」だけで終わりがちですが、「要はどう対応すべきなのか」が分かることが重要になります。
満足度の結果や各項目の偏差値で見ると、「投資が必要なのか?」「数値結果をどのように捉えればいいのか?」という疑問が生まれることも多いです。数値を出すだけだと、状況がなんとなくでしから分からず、結果として改善が行われない、という落とし穴に落ちてしまいます。
他社と比較して改善を行うことはあまり意味がありませんが、過去の知見をもとに「要は何が起きていて」「どのように対応すべきなのか」が明確になる指標を用いることが重要になります。
③「全ての不満に応えようとする」という落とし穴
組織診断や組織サーベイで「満足度」だけを調査すると、「不満に応える」だけで終わってしまいますが、従業員が何を求めているのかという期待度と相対化することで課題が明確になります。
満足度の低いものには、「従業員が満たされていない」ものに加えて、「従業員にとって興味がない」ものも多く含まれます。
また、満足度の低いものから対処すると結果的に、会社としての方向性や優先順位を見失う、という落とし穴に落ちてしまいます。
期待度と満足度の二軸をもとに優先順位を確認し、会社として目指したい方向性を踏まえて、戦略的に対応していくことが重要になります。
適切に「現状への対応」と「未来への対策」を決められるようにしましょう。
④「対策の仕方がわからない」という落とし穴
組織診断や組織サーベイの結果が出た後に、現場に改善を促すと、「何を考えたらいいか分からない」という状況に陥りがちですが、大事なのは「まずアクションを起こしていく」ということです。
診断結果から自由に考えるように促してしまうと、「そもそもこの項目でいいのか」「本当にこのアクションでいいのか」と現場の管理職が悩み、結果として改善が始まるまでに時間がかかる(忘れ去られてしまう)、という落とし穴に落ちてしまいます。
改善アクションは難しいものではなく、簡単なものでも構いません。
例えば、「コミュニケーションの量が少なく、経営や管理職の意図が全く現場に伝わっていない」という課題に対してもまずは「管理職から率先して挨拶をする」「話をするときに、必ず目的から伝える」といったすぐにできるアクションを「実行」する事が大切です。
簡単なアクションでも、やり続けると組織は変化していきます。効果が出ると実行者のモチベーションにも繋がり、また新しいアクションが実行されやすくなります。
⑤「決めたアクションが実行されない」という落とし穴
組織診断や組織サーベイを用いて組織改善をする際には、変化の測定までに時間がかかってしまい、結果が忘れられたり、効果が検証しづらいことが起きがちですが、大事なのはアクションを検証し、 PDCAサイクルを回していくことです。
半年や1年に1回の診断だけだと、「アクションプランが実行されないまま放置される」「実行したとしても他の要素もあって検証できない」という状況に陥り、組織改善の実感も得られないため、さらにアクションが実行されない、という落とし穴に落ちてしまいます。
先述した「センサス」と「パルスサーベイ」の組み合わせのように、組織全体を把握する精密検査だけではなく、特定の項目に絞って月次や週次で組織改善の進捗を把握し、効果を検証しながらアクションを進める仕組みが重要になります。
⑥「アクションプランの軌道修正がされない」という落とし穴
組織診断や組織サーベイは気づいたら次の調査のタイミングになってしまっており、効果検証と施策維持を繰り返すだけの状況に陥りがちですが、大事なのは「結果を元に適切な手を打ち続ける」ということです。
「誰に」「何を」「どのように」を内部で決めていくのには限界もあるため、「決めるのに時間がかかった」「検証していたら時期が過ぎてしまった」という落とし穴に落ちてしまいます。
サーベイや仕組みだけではなく、コンサルタントの適切な助言も活用しながら、組織改善に向けて適切に軌道修正を行い、着実な改善に近づけていく事が大切です。
【参考資料のご紹介】
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組織診断で調査すべき項目とは?~エンゲージメント調査で大事なポイント~
組織診断の目的や把握したい課題内容によって、設問設計のフレームワークは異なります。
エンゲージメント調査は、従業員の貢献意欲(仕事に対する熱意)を引き出すことを目的としていますが、働く理由(エンゲージメントファクター)は様々です。
特に近年は、働く理由がより一層多様化してきており、給与や仕事内容、ポストだけではない様々な要素があります。
働く理由を分類すると、入社時に考える「会社に所属する理由」(理念や仕事、給与、風土など)と、実際に働いた際の「上司や職場などの身近な理由」に分かれます。
ここでは、日本最大級の組織のデータベース「モチベーションクラウド」において、働く理由(モチベーションファクター)をどのように分類しているかを説明します。
■「会社に所属する理由」
人が入社を決める際に考えるポイントは様々です。具体的には、安定性や理念、仕事内容や組織、人、制度や環境などがあり、モチベーションクラウドでは集団凝集性理論をもとに8つの領域を設計しています。
「会社基盤」・・・顧客基盤が安定しているか、話題性や知名度があるか等
「理念戦略」・・・企業の理念を発信できているか、戦略目的に対して納得感があるか等
「事業内容」・・・社会的意義や貢献感があるか、事業の成長性や将来性があるか等
「仕事内容」・・・自分に裁量があるか、専門能力を獲得できるか等
「組織風土」・・・会社として連帯感があるか、階層間の意思疎通ができているか等
「人的資源」・・・経営者を信頼できるか、魅力的な人材がいるか等
「施設環境」・・・業務環境が十分に整っているか、勤務場所は適しているか等
「制度待遇」・・・評価の仕組みは妥当か、休日の取り方はどうか等
■「上司や職場などの身近な理由」
普段の業務の中では、より具体的な周囲の人との関わりによって働く理由がつくられることも多くあります。モチベーションクラウドでは、特に影響の大きい「上司」「職場」に絞り、社会システム論などを背景に、8つの領域で設計しています。
●上司
~上司は、適切にコミュニケーションをとり、組織成果を最大化させる機能を担っているか~
「情報提供」・・・上司が戦略を伝えているか、役割分担や責任を明確にしているか等
「情報収集」・・・上司が部下の強みや持ち味を分かっているか、状況を把握しているか等
「判断行動」・・・上司が判断してくれるか、毅然とした態度を示しているか等
「支援行動」・・・上司が支援してくれているか、傾聴姿勢を持っているか等
■職場
~職場は、運動神経がよく、生産的で未来に向けて変化を起こしているか~
「外部適応」・・・職場として、顧客に優れた提案ができているか、ニーズを理解しているか等
「内部統合」・・・職場として、一体感があるか、業務連携が取れているか等
「変革活動」・・・職場として、環境変化を把握しているか、未来に向けてチャレンジしているか等
「継承活動」・・・職場として、事例を共有できているか、歴史や経緯を知っているか等
■働く理由をマーケティングする調査が重要
モチベーションクラウドの調査領域を説明しましたが、全てが満たせている組織は世の中に存在しません。
時間や予算も制約があるからこそ、選択と集中を行いながら、多くの従業員が「働く理由が満たされて意欲高く働く」状態を目指す必要があります。
その際に重要となるのが「働く理由のマーケティング」です。
従業員が「何に対して満足しているか」だけではなく、「何を求めているのか」「何に期待しているのか」を把握し、適切に手を打っていくことが重要です。
「落とし穴」でも記載しましたが、「期待度」を調査することで従業員の考えていることや求めているものを把握することができます。その中で会社として何に投資するのか、何への投資を止めるのかを判断していくことがポイントになります。
▼ 日本で最もエンゲージメントが高い会社が、エンゲージメントを向上させる秘訣を語る!記事はこちら
組織診断ツールの選び方・比較ポイント
組織診断ツールは、組織の健全性を評価し、強化するために不可欠です。しかし、適切なツールを選ぶには、その特徴を理解し、自社のニーズに合わせて選ぶことが重要です。以下は、組織診断ツールを選ぶ際の比較ポイントです。
設問の設計方法で選ぶ
組織診断ツールを選ぶ際、設問の設計方法は重要な要素です。設問が組織の特性やニーズに合致しているか、またはカスタマイズ可能かを確認する必要があります。
良い設問設計は、具体的かつ明確で、回答者に対して偏見や誤解を与えないものでなければなりません。また、多様な視点から組織の状況を把握できるよう、異なるタイプの質問(オープンクエスチョン、クローズドクエスチョン)を組み合わせることが望ましいです。
分析機能の有無で選ぶ
組織診断ツールの分析機能は、収集したデータを効果的に解釈し、意味のある洞察を提供する上で重要です。高度な分析機能を持つツールは、データのトレンド、パターン、関連性を明確に示し、組織が対策を講じる際の意思決定をサポートします。
特に、リアルタイムでの分析結果の提供や、多角的なデータ視覚化機能を備えたツールは、より迅速かつ効果的な対応を可能にします。
一方で、過度に高度な分析は運用をかえって難しくするため、自社の目的に合った分析機能を選びましょう。
アクション支援の有無で選ぶ
診断結果を基にした具体的なアクションプランの策定支援機能の有無も、ツール選定の重要なポイントです。アクション支援機能を備えたツールは、診断結果に基づいて実行可能な改善策を提案し、実行計画の作成や進捗管理を支援します。
このような機能は、組織内の問題に対して具体的かつ効果的に対応するために役立ち、持続可能な組織改善を促進します。組織診断をするだけでは意味はなく、そこで見つかった課題や目指す姿に対する改善活動を継続することが大切です。
▼組織サーベイを活かした「モチベーションクラウド」はこちら
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組織診断ツール・組織サーベイが現場で活用されるために
組織診断ツールや組織サーベイは、経営陣や人事が活用するだけではなく、現場のマネジメントでも使っていくことで、組織改善の成果を最大化することができます。
現場で活用していく上での最大のポイントは「従業員にとってのメリットが伝わっているか」という点です。
現場が自分たちでも使いたいと思うために、組織診断ツール・組織サーベイの調査だけではなく、組織で活用するための活用プランを描くことが重要です。
■組織診断ツール・組織サーベイの成果を最大化する活用プランの設計
組織診断ツールや組織サーベイは慣れると非常に活用しやすいものですが、慣れるまでは「やることが増えた」「やって意味があるのか」「成績表なのではないか」などと誤解を受けやすいことも事実です。
そのため、現場へ浸透させるためには、段階を追って組織を動かす活用プランを描くことが重要になります。組織の状態や風土に合わせてプランを描くことが重要になり、一足飛びでは「最大限使えている状態」にはなりません。
活用プランのポイントは大きく分けて3つです。
①トップのコミットをもとに、段階的に広げていく
どの組織も、変わるためにはトップのコミットが欠かせません。ただ、最初からコミットを引き出しづらいこともあります。エンゲージメント調査の有用性や事例などをもとにトップのコミットを引き出していくことがスタートです。
そして、トップのコミットを引き出した上で、階層ごとに段階を踏みながら、現場の管理職に組織改善の責任を手渡していくことが重要です。
ただ、責任を渡していったとしても、上位役職者が関わることを止めてはなりません。会社として組織や従業員に向き合う姿勢を示し続けることが重要になります。
②特定の部署で成功事例をつくる
組織改善は一朝一夕では実現しないため、成果が見えづらいことも悩みどころの一つです。だからこそ、最初から全ての組織を変えようとするのではなく、注力部署を絞った上で変革の成功事例を社内につくることが重要です。
特に改善が必要な組織や、改善したかったが停滞していた組織で変化が見られると、ナレッジも溜まる上に、周囲の組織も「うちの部署も改善したい」と思うようになるため、結果として会社全体の改善に向けた温度感が高まります。
③事業成果と接続する
エンゲージメントを指標化した「ものさし」は企業活動のKPIになるものの、KGIではありません。だからこそ、組織改善が進み、成功事例がいくつか生まれ始めた際には、事業や計数に関わる成果と、組織診断の結果を接続していくことが重要です。
モチベーションクラウドでも、エンゲージメントスコアと事業成果との研究成果として発表していますが、各社や各職場での生産性や利益率などとの相関を検証することで、組織の変化がどのようにビジネスにつながっているかを把握することができます。
組織の診断・改善のサイクルを回す、【モチベーションクラウド】がわかる動画はこちら
組織サーベイの成功事例
組織サーベイの成功事例として、株式会社マルハン様の事例をご紹介します。
▼詳細な内容についてはこちら
モチベーションクラウドを活用してやりがいと誇りに満ちた組織へ
当初の課題
株式会社マルハンは、近年の外部環境の急速な変化に直面しており、その結果、現場組織の活力が目に見えて低下していました。この低下は組織の全体的なパフォーマンスに影響を与え、組織の目標達成能力を妨げる可能性がありました。
同社は大規模な従業員構造を持っており、多くの従業員が各々の職務を遂行しています。しかし、その規模と複雑さのため、全ての現場の組織状況を正確に把握し、それに応じて適切な対策を講じることが困難でした。
この問題は、会社全体の効率と生産性に影響を与える可能性があり、対策が必要とされていました。これらの課題に対処するためには、組織全体のコミュニケーションと協働を改善し、効率的な運営を実現するための新たな戦略が求められていました。
実施内容
同社ではモチベーションクラウドを導入し、組織全体の状態を可視化することに重点を置き、コミュニケーションの活性化に努めました。これは、全員が同じ情報を共有し、解決策を見つけるための協力的な環境を作り出すことを目指して行われた取り組みです。
また、サーベイのクラウド化を実施しました。これにより、より迅速かつ効率的にフィードバックを収集し、従業員の意見を組み込むことができるようになりました。さらに、診断後のアクションプランの管理にも取り組んでおり、具体的な改善策を立案し、それらを実行に移すことができるようになりました。
加えて、効果測定も実施しています。これにより、私たちの取り組みが組織にどのような影響を与えているかを評価し、必要に応じて戦略を調整することが可能になりました。
効果
モチベーションクラウドを活用して、診断・改善・効果検証のサイクルを回すことで、組織内コミュニケーションの問題点が明確になり、その結果、経営層から現場へのメッセージ伝達の方法が大幅に改善されました。
この改善は、現場の店長との直接の面談を行い、彼らの視点から見える問題を理解することから始まりました。その後、具体的な改善項目を設定し、それらを実行に移すための戦略を立てることで、組織全体の改善を実現することができました。
結果として、「人生にヨロコビを」という経営理念に向けて、厳しい時代の中でも従業員それぞれがモチベーション高く働き、自分たちの存在意義について日々の仕事の中から感じることができる土台を作ることに成功しています。
おわりに~ここから世界で勝ち残っていくために必要な組織戦略~
戦後の高度経済成長期を経て、日本は急速に先進国の仲間入りを果たし、1960年代から80年代にかけては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるほど、日本企業の経営手法が高く評価されてきました。
ただ、直近のグローバルの調査では、エンゲージメントの高い(熱意のある)社員の比率や生産性の高さで日本企業は遅れを取っていると言われています。
また、今後一層の労働人口の減少が見込まれる中では、優秀な人材の確保や生産性向上はどの企業でも避けられない課題となっています。
日本企業の特徴は、技術力の高さや個々人の勤勉さ(学習意欲と読書習慣)だと言われてきました。ただ、決まったことを質を高く実施するだけでは勝てない時代に入ってきたことで、技術や個人の強みを掛け合わせる「組織」が重要な要素となっています。
欧米では個人主義が強いため、「個人をつなぎとめるための組織」という観点が過去から強く、エンゲージメントや組織開発に関して日本より10年先を進んでいます。
一方で、日本企業はもともと組織社会で、空気を読むような阿吽の呼吸が大事にされてきたからこそ、組織を科学されてきませんでした。
コロナ禍の中、リモートワークが普及し、マネジメントの難易度が高まっているという面からも、組織診断へのニーズが高まっています。
これまでの勘と経験を組織の学びにつなげる「組織診断」(エンゲージメントサーベイ)が今後の日本企業の成長の鍵を握ると考えています。
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組織サーベイに関するよくある質問
組織サーベイとは?
組織サーベイとは、組織内の従業員に対しておこなうアンケート調査のことです。組織に対する従業員の愛着度合いを把握する「従業員エンゲージメントサーベイ」も組織サーベイですし、従業員が自分の仕事や職場にどのくらい満足しているかを測定する「従業員満足度調査」も代表的な組織サーベイの一つです。組織サーベイでは様々な設問を通して従業員の意見やニーズを収集し、組織の強みを把握したり組織の課題を抽出したりします。
組織サーベイの調査項目とは?
組織サーベイの調査項目は企業によって変わってきますが、従業員のエンゲージメントや満足度、職場環境や組織風土、リーダーシップやコミュニケーションに関する設問が設けられるケースが多いようです。以下に、調査項目と設問の具体例をいくつか示します。
・エンゲージメントと満足度:「あなたは自分の組織に誇りを持っていますか?」
・リーダーシップとマネジメント:「管理職は組織のビジョンや方針を適切に伝えていますか?」
・職場環境と文化:「職場のメンバーは協力的でチームワークが奨励されていますか?」
・コミュニケーション:「業務に必要な情報は適切に共有されていますか?」
・キャリア成長と学習機会:「新しいスキルを習得する機会は提供されていますか?」