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組織開発とは?人材開発との違いや歴史、生産性やエンゲージメント向上に効果的なアプローチとは?

企業にとって、「人」「組織」に関する課題は尽きません。最近では新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わる企業も増加し、より「成果を出すためのチームづくり」や「多様な人材をまとめる方法」が更に大きな課題になってきています。

その中で、特に人事領域では「組織開発」というワードに注目が集まっています。しかし、「そもそも組織開発とは?」「聞いたことはあるけど何をすればいいの?」といった疑問もしばしば耳にします。

本記事では、より働きやすく、成果の出る組織づくりのために「組織開発とは何か」「人材開発との違いは何か」「具体的な方法は何か」といったことをご紹介します。

組織開発とは?

組織開発とは「Organization Development」(略してOD)と呼ばれており、「組織に所属している人自身の手で、自組織をよりよくしていく」という考え方です。元々この考えは、1950年代のアメリカで発展していきました。

今、日本でもこの考え方が注目されています。これまで当たり前であった「終身雇用制度」や「働き手の価値観」に大きな変化が出て来ました。以前までは、生涯同じ会社に従事することが当たり前であったため、同じ会社内でも価値観のズレはほとんど無いようなものでした。

しかし、現在では終身雇用制度に関して大手企業から撤廃する方向にあり、同時に年功序列制度も無くなり始めています。人材流入のタイミングも新卒入社、中途入社、その他様々なものがあり、男性や女性、外国人が多く働く企業も多くあります。

その中で、「働き続けてもポストが無い」「優秀な人材から抜けていく」「給料を上げたくても上げられない」といった多くの問題に直面しています。

「外部のコンサルに頼って自組織をよくする」ではなく、「組織に所属している人自身の手で、自組織をよりよくしていく」という考え方、つまり組織開発が注目されています。

組織開発の歴史

では、組織開発はどのように広まっていったのでしょうか。組織開発は1950年代からアメリカで発展していきました。その発展のきっかけになったのがディジタル・イクイップメント社の事例です。

同社の、「組織開発による大きな事業成長」が実現した事で、「組織開発」に注目が集まりました。ディジタル・イクイップメント社は、トランジスタという機器を使ったコンピュータの研究開発を行っている企業です。

創業者のオルセン氏が経営をしていましたが、上手くいかなくなったタイミングで、組織開発の先駆者であるエドガー・H・シャイン氏にアドバイスを求めました。心理学、行動科学、キャリアなどの知識を活用したエドガー・H・シャイン氏の助言を経営に取り入れた結果、同社は大きく変化しました。

それ以前は、創業者のオルセン氏が方針を考え、指示し、それを元に行動する傾向が強い組織でした。しかし、組織開発のノウハウを取り入れることで、現場からの意見を汲み取る組織に変化していきました。

その結果、現場のエンジニアのアイデアを製品に活かす事で、より顧客に選ばれる商品を生み出すことに成功し、事業が大きく成長しました。

まさしく、組織開発が事業に大きなインパクトを与えた好事例と言えるでしょう。それ以降、現在に至るまで組織開発のノウハウや、成功事例は数多く生み出されてきています。

人材開発と組織開発の違い

「組織開発」と似たもので、「人材開発」という言葉があります。「組織開発」と「人材開発」の違いを整理したいと思います。

■人材開発とは

人材開発とは、個々人の能力を伸ばそうとするアプローチのことを指します。人材開発によって従業員のスキルを向上させたり、仕事に対する姿勢を良くしたりすることでパフォーマンスの向上に期待できます。人材開発とは「人」に着手して企業の成果に繋げる考え方です。

■組織開発における効果的な考え方

一方、組織開発は「人」ではなく『「人」と「人」との関係性』に着手した考え方です。

人材開発により個人のスキルを向上させたとしても、成果に直結するとは限りません。なぜなら、どれだけ優秀なメンバーがいたとしても、職場内の関係性が悪ければ成果が出ないためです。

職場内での関係性によって人々のモチベーションが左右されることを考えると、人材開発と組織開発を併用し、個人スキルの向上と関係性の改善を行うことが成果最大化のポイントになるということです。

組織開発の目的

組織開発の目的は、「組織を環境に適応しながら、事業成果に繋げること」です。

つまり、環境の変化に素早く適応できる組織を戦略的に作る事がポイントなのです。
市場の変化に適応できなければ事業成果の最大化は図ることができず、時代に取り残されるのが目に見えるでしょう。では、組織を環境の変化に適応させる為には何が必要なのでしょうか?

それは「エンゲージメント」です。エンゲージメントとは「組織」と「所属する個人」との相思相愛度合いを表します。エンゲージメントが高ければ高いほど、会社の方針を現場に落としやすくなるため、環境変化に柔軟に適応することができるのです。

エンゲージメントを高めるには、エンゲージメントを可視化しPDCAを回す事が重要です。弊社では、エンゲージメントを可視化するツールを開発し提供しています。
https://www.motivation-cloud.com/

また、弊社リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学ビジネス・スクール岩本研究室の共同研究により、企業と従業員のエンゲージメントを測る指数、エンゲージメントスコアが「営業利益率」「労働生産性」と相関する傾向が見られています。
https://www.motivation-cloud.com/news/5197/

つまり、エンゲージメントを高めることは、環境の変化に素早く対応できる組織を創ると同時に、成果にも直結すると言えるのです。

組織開発が必要とされる背景とは

組織開発の重要性が高まっている背景は3つあります。
「事業環境」「労働環境」「社会制約」それぞれの変化に大きく分けられます。
それぞれ簡単に説明していきます。

■事業環境の変化

事業環境には①ソフト化と②短サイクル化と呼ばれる2つの変化があります。

①ソフト化
産業全体における比率で第三次産業が高まっています。


つまり、ハードの時代「商品を生み出す設備やそのための資金が必要だった時代」から、ソフトの時代「商品を生み出す優秀な人材が必要な時代」に変化しているということです。経営における重要度が商品から人材へ移り変わっています。

事業成長のポイントが、「設備の充実度」や「商品ブランド」から、「一人一人のアイデア」に移行してきているのです。


②短サイクル化
商品のライフサイクルのスピードが早くなっています。


上図の通り、一度ヒット商品を生み出せば競争優位性を発揮し続ける長期サイクルの時代から、一度ヒットした商品もすぐに陳腐化してしまう短期サイクルの時代に変化していることがわかります。

つまり、ヒット商品を生み出し続ける組織が重要な時代に変化しているということです。このように事業環境では、「ソフト化」「短サイクル化」という2つの変化が起きています。どちらの変化からも、モノよりもヒトの重要度が上がっていることが顕著に表れています。

■働き手の変化

続いて、働き手の変化についてです。下図の通り、生産年齢人口は減少傾向にあります。


このデータから、「企業が人材を採用しにくくなっている」ことがわかります。また同時に働き手の価値観が多様化しており、カネやポストを求める時代から、やりがいや自己成長を求める時代へ変化しています。

日本においては終身雇用制度があったため、働き手と会社側で相互に束縛する関係が成立し続けていました。しかし、先述した通り、終身雇用制度が撤廃される中、そのような関係は崩壊しつつあります。

働き手は自分に適した企業を選び、一方企業はやりがいなどを働き手に提供するというような関係に変わってきています。

企業と個人は、相互束縛関係から相互選択関係へと変化しているのです。働き手がカネやポストではなく、やりがいを求めるようになっていることを考えると、企業も一層「従業員から選ばれる理由」を強めることが重要になってくるでしょう。

■社会的制約の増大

また、社会の変化や要請による働き手と企業の変化も起こりうると考えられます。

①働き手側への制約
直近だと新型コロナウイルスの影響により、生活環境の変化により働き方の対応や、キャリアへの意識変化がこれまでより更に大きくなっています。

②企業側への制約
もちろん、企業側にも制約が生じます。

例えば、リモートワーク環境下により社員間のコミュニケーションや労働時間の管理に多くの企業は課題を感じています。加えて、最近は新卒採用が主流ではなくなり、ジョブ型採用、フリーランス等も世間で一般的になってきています。

今後、このような企業を取り巻く環境の変化により、様々な働き方や価値観を持ち合わせた従業員を束ねることが、事業成長における重要なポイントです。

組織開発でよくある失敗例

組織開発を行う上で失敗する企業も少なくありません。言い換えると、組織を良くするためのPDCAサイクルのどこかに課題があります。


①組織課題が不明確
正しく課題を把握することなく、勘と経験で課題把握を行っているケースです。全く的外れな課題にアプローチしてしまっているケースも少なくありません。

②改善施策が不適切
効果的な施策が分からず、思いつきで施策立案してしまっているケースです。施策を実行している本人は「やっているつもり」になりますが、実際に成果に繋がることはほとんどありません。

③施策実行が未完遂
やるべき施策は決めたものの、途中で頓挫してしまうケースです。やるべきことをやれていないので、当然このケースも成果には繋がりません。

組織開発でよくあるアプローチ

では、効果的な組織開発とはどのようなアプローチでしょうか。重要なのは、「診断」と「変革」の2つのステップで改善の方法を考えることです。組織開発における「診断」と「変革」の方法について、概要をご紹介します。

■診断

組織開発でまず重要なのは、下記2点です。

・適切な課題を発見すること
・解決の優先順位を付けること

現場の声を聞く、経験を元に判断する事も時には重要ですが、あくまで企業として目指す姿から見て解決すべき課題が何かを適切に見出すことが効果的です。

組織の現状を見える化し、手をつけるべき優先順位をつけることが重要となります。その方法として、「組織診断サービス」が注目されています。弊社では組織診断サービスとして、「モチベーションクラウド」を提供しています。

「モチベーションクラウド」とは、社会心理学を元に「社員が会社や上司、職場に対して求める項目」をもとに、「エンゲージメント」のスコアを算出する組織診断ツールです。

「エンゲージメント」が「従業員満足度」と大きく異なる点は、「社員が会社に満足していること」だけでなく「社員の会社に期待すること」を可視化できる点です。

以下のように、縦軸:期待度(従業員がどれくらい求めるか)、横軸:満足度(従業員がどれくらい満足しているか)の2軸で整理すると、左上の青い領域「期待度(高)かつ満足度(低)」が最も優先的に手をつけるべき課題であることが分かります。


■変革

診断から出た結果を元に変革に向けた施策を実施します。
施策には、「観点」と「ステップ」という二つのポイントが重要になってきます。

①変革に向けた施策の「観点」
施策は主に3つの観点で分類されます。ヒューマンリソースマネジメント、コミュニケーションマネジメント、ルールマネジメントです。

・ヒューマンリソースマネジメント
 人材育成や人材採用のこと

・コミュニケーションマネジメント
 上下階層間や左右機能間のコミュニケーションの担保や、それに伴う信頼醸成のこと

・ルールマネジメント
 評価基準や報酬制度、人材配置や昇格昇進制度等のこと

課題と解決の方針をこれら3つの観点で整理し、実施することが効果的です。


②変革に向けた「ステップ」
変革を効果的に行うためには、その実行ステップが大切です。
代表的なのは、心理学者クルト・レヴィンの唱えた「態度変容の3ステップ」です。

彼は変革を
①Unfreeze(解凍)→②Change(変化)→③Refreeze(再凍結)
の3つのステップに分けています。


例えば、四角い氷を丸くしようとしたときに力尽くで変えようとすると、形はいびつになり、時には割れてしまいます。まずは、①氷を解凍して②丸い容器に入れ、③再び凍らせることできれいな丸い氷にすることができます。

組織変革においても、同様の事が言えます。次に各ステップの詳細を記述します。

①Unfreeze(解凍):「相互不信を解き、期待感を醸成すること」
役割意識や過去慣性などで凍りついた状態を緩和することです。

「自社の問題を直視すること」「関係性の問題が存在すること」「それが解消されることが会社にとっても自分にとっても重要であること」などの意識を醸成し、相互不信を解くことで初めて、変革しやすい状態になります。

②Change(変化):「共感を引き出し、納得感を醸成すること」
変革に向けて「阻害要因は何か」「阻害要因を除去する方法論は何か」「その役割を誰が担うのか」についての議論を行い、具体的な変革へのアクションを明確にすることです。

自らが変革のアクションを考えることで共感を引き出し、アクションに対して納得感を醸成させることで変革へのモチベーションを高めます。

③Refreeze(再凍結):「仕組み化し、変化を実感させること」
起こした変化が元に戻らないように、仕組みを作ることです。
従業員に当事者意識を持たせ、モチベーションを維持し続けられる仕組を設計することがポイントです。

このような3ステップに分けて組織を変革に導くことが大切です。

まとめ

変化のスピードの早い時代だからこそ、変化に適応するための組織開発の重要性が増してくると考えられます。まずは組織の現状を正しく把握し、それを踏まえた変革の打ち手を立案していきましょう。


岩並 克明
岩並 克明

【プロフィール】 株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向け シニアコンサルタント 東京大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション新卒入社。 入社以来、日本を代表する大手企業の組織人事コンサルティングを担当。 担当業界は主に、製薬メーカー、IT・通信、製造業。 モチベーションクラウドをベースに、理念浸透、人事制度、育成体系、採用戦略の トータルコンサルティングを提供。多くの企業の組織改革を成功に導く。 2017年には、全社の中で最も大きな成果を出したメンバーに送られる社内MVPを受賞。

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