「モチベーションクラウド導入の背景」
木下氏:私は、2005年にアコムへ入社しました。その翌年、上限金利問題を含めた法改正の流れが加速し、貸金業者は大変厳しい時代を迎えました。当社においては、2006年にグループ経営改革を、2009年に経営体質強化策を発表し、断腸の思いで希望退職を募りました。
さらに私の入社当時に約300あった有人店舗を半分以下にまで縮小せざるを得ませんでした。しかし、そんな厳しい冬の時代であっても、目の前には一生懸命頑張っている社員がいました。
私は、彼らのためにも、どうしたらこの会社を再び元気にできるのか、地に足のついたビジネスができるのかを一心に考えながら事業を推進してきました。
その後、ようやく経営状態が上向きになってきたこともあり、社員をもっと幸せにしたい、生き生きと働いてもらいたいという気持ちがより強く、大きくなりました。それ以来、「社員と家族が昨日より今日、今日より明日、幸せな1日を送れる組織」を目指すことを全社員に伝えてきました。
そのような中、社員研修などで接点のあったリンクアンドモチベーションさんから、組織診断による効果的な組織活性化の施策を検討できるツールのご提案をいただき、導入を決めました。
導入してまず感じたことは、リンクアンドモチベーションさんの熱量の高さです。現在も、サーベイの結果を報告するだけでなく、私たちがより良い組織創りができるように本気で向き合っていただいています。
サーベイ結果が出てからの組織変革にかける熱量が他社とは圧倒的に違うと感じています。また、モチベーションクラウド自体もツールとして非常に良いものでした。組織診断結果がわかりやすく、浮かび上がった課題も明確で、今後「どこの部署にどんな手を打つべきか」を考えるヒント、指針となっています。
「モチベーションクラウドの価値」
木下氏:モチベーションクラウドを導入したことで、社員が組織に対して何を感じているか手に取るようにわかるようになりました。当社には2,500人の社員がいますが、サーベイで社員が書いてくれたコメントはすべて目を通しています。
なぜなら、経営陣が張り切って組織変革をしようとしても、社員からのフィードバックを反映しなければ上手くいくはずがないと考えているからです。
今まで使っていたサーベイは、いわゆる従業員満足度調査でしたが、モチベーションクラウドは社員が組織に何を期待していて、それに対してどの程度満足しているのかがわかります。期待と満足のギャップから読み取る、エンゲージメントスコアがいかに大事なものか理解できます。
また、リンクアンドモチベーションさんがコンサルティングをしてきた何千社という企業の事例をもとに、「今の組織はこういった健康状態で、ここに病気を持っています。ですから、打ち手としてはこういったことが考えられます。他社ではこのような取り組みで組織状態が改善されました。」といったように、膨大なデータや分析結果に基づくアドバイスをいただけることは、まさにリンクアンドモチベーションさんならではと思っています。ビジネスパートナーとしての価値を十分に感じています。
また、サーベイ結果が出るまでのスピードが早いことにも驚きました。以前、他社のサーベイを実施した時は、分析結果が出るまでにかなりの時間を要していましたが、モチベーションクラウドはサーベイを実施した翌日には私の手元に結果が届いています。
このスピードには感動しました。せっかく社員から様々な意見をもらっても、手を打つまでの時間が長ければ長いほど社員の不満は募る一方です。今後もこのスピード感を維持し続けたいと考えています。
脇川氏:モチベーションクラウドを使い始めて、課題に対して効果的な改善策を打つ事が出来るようになり、組織状態は順調に良くなってきていると実感しています。一方で、階層間の意識に差があることに気付かせてもらいました。
部長クラスは経営陣と顔を合わせる機会が多いため、理念や戦略を理解していますが、社員は全員がそうではありません。従って、部長たちが部下に対して理念や戦略の意味などを「これはこういうことだよ」と丁寧に伝えていく必要があります。
今後は、上司自らが話しやすい雰囲気をつくり、上下のコミュニケーションの質と量を高めていくことで、組織がより改善していくと考えています。
越智氏:確かに、私が社歴や職位が近い社員と話すときは、理念がどうだとか伝えなくても共通認識を持ってコミュニケーションが取れますが、現場でのコミュニケーションはそう簡単ではないと思います。環境や役割の違いによって理念浸透に差が生まれないように、常日頃から伝え方に留意すべきだと考えています。
松村氏:私もそこが大事だと思う一方で、あまり悲観はしていません。例えば先日、ビジネスカジュアルの本格導入に向けて、社員の皆さんにヒアリングをしました。すると、皆さんから様々な意見をいただき、私の後輩は基準の設定に苦労していました。
そこで私は、「私たちの会社の理念に照らし合わせて考えれば節度のある服装は自ずと決まるはず」とアドバイスしました。その後は、理念に照らし合わせたアコムらしさを追求し、スムーズにビジネスカジュアルの導入を進めることができました。
きちんと伝えれば、皆さんに理解してもらえるのですから、「理念を元に考える」ということをさらに推し進めていくことができれば、もっと自走できる組織になれると考えています。
木下氏:アコムの社員は全員が、企業理念を唱和できます。しかし、企業理念の中にある一つ一つの言葉の意味を真に理解しているかというと、必ずしもそうではないと思います。
また、今回のサーベイからも、「理念戦略」の項目に対する期待度が低いため、当社が創業以来大切にしている「お客さま第一義(※)」を自分の言葉で語ることができ、実践出来る社員が一人でも多く育つ事が重要だと考えています。
(※)アコムにとって、お客さまは理屈抜きに尊い存在、絶対の存在であることをこの理念に込めています
その課題解決の一環として、役員がファシリテーターを務め、20人程度の社員が理念について率直に話し合う場を設けています。私たちの存在意義はなんだろうか、「お客さま第一義」はどういう意味なのか?などについて、これまでの「お客さま第一義」に則った経験や、実践出来なかった経験などを話すことで伝承しています。
私は、この活動にはとても意味があると思っています。なぜなら、理念の意味を理解し、考えることで、理念が上から与えられたものではなく、一人ひとりが自分にとっての「お客さま第一義」を表現できるようになっていくからです。そして、そのような会社にしたいと強く願っています。
こうした行動の成果は少しずつですが、着実に出てくるものだと思います。リンクアンドモチベーションさんには「社員と家族が昨日より今日、今日より明日、幸せな1日を送れる組織」への道のりを一緒に歩んでいただきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
部署の業務内容 |
提携金融機関が販売するローン商品を利用されるお客さまの債務保証 |
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業種 | 金融 |
部署規模 | ~10名 |
取り組んだ組織課題は、支援行動(上司の業務・成長支援に課題)
エンゲージメント向上を実現した部署の方に、組織変革のストーリーを伺いました。
アコム株式会社の保証事業部は、提携金融機関が販売するローン商品の債務保証を受託するとともに、提携金融機関のカードローン販促支援を主なミッションとしています。保証事業部 第一提携推進チームのチームリーダーに着任した岩崎氏は、教育体制が整っていないことや評価指標が曖昧なことに不安を覚え、組織改善に着手します。KPIと連動した評価指標を設け、研修を中心とした教育体制を整備するとともに、個々のメンバーに自己研鑽を促すことで組織のボトムアップを実現。自ら考える提案型組織に生まれ変わった第一提携推進チームは、提携金融機関との関係性をより深いものにして、先方の業績向上に貢献していきます。
「抱えていた課題」
小林氏:私は、2018年4月に入社して保証事業部に配属されたのですが、当時は人事異動による人の入れ替わりが激しく、業務のノウハウが共有されていませんでした。教育はOJTがありましたが、担当者の知識や教え方に依存するところが大きく、担当者が知らないことは習う側も知りようがなく、教育にムラがあるように感じていました。
岩崎氏:私は、2020年1月に保証事業部に着任し、第一提携推進チームのリーダー職に就きました。組織全体を見たとき、若いメンバーが多く、みんな一生懸命仕事をしていましたが、言われたことをやっているだけで「何のための業務なのか?」目的が分からないまま仕事をしているような印象を受けました。
私は長年、コンプライアンスや人事の部署にいましたので、異動してきたときは保証事業のことが全然分かりませんでした。しかしながら、誰かが教えてくれるわけでもなく、自分で周囲の人に聞いて回るしかありませんでした。そのとき、「これってもしかしたら、自分だけではないのでは・・・」と思いました。そこで他部署から異動してきたメンバーに、どうやって保証事業のことを学んだのかを聞いてみたところ、想定通り、「学んだことはありません」という回答でした。
小林が言うように、目の前の仕事のやり方はOJTで教えてもらえますが、業務の目的やビジネスモデルを一気通貫で学ぶ機会はありません。「そんな状態で、どうやって提携先と話をするのだろう?」と思ったのが、組織改善に取り組むきっかけになりました。
評価の部分でも目標が明確になっておらず、メンバーからすると「何が評価されるのか?」が分からない状態でした。評価者によって評価が変わったり、フィードバックがなかったりという話も聞かれたので、「これは変えていかなければならない」と痛感しました。
「改善のためのアクション」
岩崎氏:まずは評価の基準を明確にして、KPIを設定しました。メンバー全員と面談して、「あなたはこのKPIでやりましょう」とコンセンサスを取り、そのKPIに向かって半年間頑張るという極めてシンプルな取り組みです。とはいえ、半年後に「あなたは達成できなかった」で終わるのは良くないので、3ヶ月に一度面談をして修正しながら進めていきました。進捗が良くなければ原因を確認し、ギャップを埋めるにはどうしたら良いのかを話し合っていました。
管理職の評価に関しては、部下の育成についても重視するようにしました。「部下が目標達成できるように支援しましょう」「部下が目標を達成できていないのに、あなただけが評価されることはありません」ということですね。これは上司・部下の関係だけでなく、誰に対しても同じです。周りのメンバーに対してどんな働きかけをしたのかということを評価するようにしました。「自分だけ仕事ができたらいい」という姿勢は良くないと思ったので、縦・横・斜めで助け合い、チーム全体で仕事をするという意識を持たせるようにしました。
業務を可視化して手順書を作ったのも取り組みの一つです。目的は、教育の均一化・平準化です。以前は、OJTの担当者によって、若手の成長度合いに差が出ることがありました。そういったことが起きないように、いったん業務を可視化したうえで「これを見れば誰でも同じようにできる」というような手順書を作りました。
同時に、教育体制の一環として研修をスタートしました。保証事業部のビジネスモデルをカテゴリ分けして、それぞれをプログラム化し、必要な人が必要な研修を受けられる仕組みを作りました。研修が終わったら受講者の感想や意見をもらい、ブラッシュアップする形で運用を始めています。
企業理念の浸透も、あらためて徹底した部分です。「お客さま第一義」はアコムの重要な基本理念なのですが、これだけはブレることがないように指導しました。メールの返信ひとつでも気になることがあれば、「それってお客さま第一義になってるかな?」と確認していましたね。もちろん、お客さま第一義に正解はありません。時代が変わればお客さまから求められるものも変わるわけで、その時その時で最善の解を出すしかありません。ただ、どんな行動でも「お客さまのことを考えたうえでの行動だったのか?」という点は必ず見るようにしていました。
「改善していく中で感じたこと」
小林氏:岩崎からはよく、自己研鑽の時間を取るように言われました。読書にはじまり、最近では美術館に行くことまで、とにかく自己研鑽をしなさいと。最初は正直、「プライベートがあるんだけどな・・・」と思っていましたが、実際に本を読んでみると仕事に活かせることも多いですし、視野が広がって自分の血肉になっていくのを感じました。
読書で言えば、岩崎からは「月に3冊読もう」と言われています。1冊目は自分の好きな本であれば何でもOK。2冊目はビジネスに関係する本。3冊目は自分にとって興味のない本です。興味のない本では最近、子供向けの「菜根譚」を読んだのですが、これが結構おもしろくて気づきも多かったですね。
岩崎氏:私も古典には全然興味がなかったのですが、多くの経営者が古典から学んでいることを知り、「読んだらどう変わるのか?」を自分で試してみようと思ったのがきっかけです。例えば、学生の時は論語を読むと「何だこれは? “子曰く”ばっかりだ」なんて思っていたのですが、社会人になって改めて読んでみると、印象に残る言葉や好きな言葉が出てきたんです。読み終わった後もその言葉が頭に残り、その言葉を意識して行動するようになったりして、古典を読む意義を感じられました。
同時に思ったのが、「もっと若いときにたくさん本を読んでおけば良かった」ということです。読まなければ気づきもないですし、血肉にもなりません。人としての厚みや深みを得るためにも、部下には読書を続けてもらいたいなと思っています。
小林氏:読んだ本の内容をチーム内で共有したり、みんなで回し読みしたりすることで、チーム全体のレベルアップにつながっています。「インプットがないとアウトプットって出てこないんだな」というのは、身にしみて感じますね。
岩崎氏:手段は読書に限りませんが、部下にはよく「自分の市場価値を高めなさい」と言ってきました。「自分には何もないから、今の会社にしがみつくしかない」といった後ろ向きなキャリアプランを考えるような人にはなってほしくありません。ですから、自分の市場価値を高めるために常に勉強してほしいと思います。
「組織の変化ともたらされた成果」
小林氏:研修の効果は大きかったと思います。私の1つ下の後輩から研修を受け始めているのですが、同時期の私に比べて知識量は圧倒的に多いですし、戦力になるのも早かったですね。個別のOJTに費やしていた時間を鑑みると、集合研修にしたことで数十時間の削減と教育の均一化が図れたと思います。
岩崎氏:ベテランのメンバーは、長くいるからこそ「今さら」になってしまい、聞けないことがあると思うんです。ですから、「おさらい」の意味も含めて、ベテランのメンバーにも研修に参加してもらいました。実際に気づきが多かったようで、「研修を受けて良かった」というフィードバックもたくさんもらいましたね。
小林氏:みんなで助け合う雰囲気もすごく高まったと思います。私の不在時に、後輩が私の仕事を代わりに対応してくれたことがありました。今までであれば、自分の仕事しかしませんでしたし、そもそも自分が担当している金融機関以外のことは分かりませんでした。ですが、教育が平準化され、理念が浸透した結果、他の人の仕事に対する理解が深まり、積極的にフォローする姿勢が生まれてきたのだと思います。
岩崎氏:今は「自分のことだけやっていればいい」と考えているメンバーはいないのではないでしょうか。お互いがお互いのことを気にかけられるチームになってきたと思います。一人ひとりが自ら考えて動けるようになりましたし、アウトプットする力もかなり底上げされてきました。資料のクオリティにしても、去年の資料と見比べたら各段によくなりました。
小林氏:提携先との関わり方もだいぶ変わりました。距離が縮まったというか、パートナーシップが強固なものになったと感じています。
岩崎氏:私たちは必ず、提携先の理念やパーパスを理解するようにしています。私たちはアコムの社員ではありますが、アコムの理念を相手に押し付けるのは違います。先方の理念やパーパスを深く理解したうえで、「お客さま第一義は何なのか?」を考えるということですね。そこを理解しないまま仕事をしても、良い関係は築けないのではないでしょうか。
以前に比べると、提携先とのコミュニケーションの量が全然違います。私が着任した当時は月に1回の定例会に行くだけでしたが、今は電話やメールも含めて、日々何かしらコミュニケーションを取っており、先方と協同で仕事を進めています。定例会でもただ数字を報告するだけでなく、積極的に施策を提案するようになりました。また、提携先へ社員を派遣するだけでなく、新規集客などの広告戦略についても、積極的に提案を行うなど幅広くサポートしています。
私たちは、提携する金融機関のカードローン拡販に貢献することを大きなミッションとしていますが、コロナ禍にありながら、複数の提携先が実績を伸ばしています。
「今後の展望」
岩崎氏:何はともあれ、みんなが楽しく働けること──行き着くところはこれですね。朝起きたら「会社に行きたいな」と思い、「楽しかったね」で帰る組織が理想です。メンバーにはプライベートの時間も大事にしてほしいですし、自己研鑽の時間も作ってもらいたいです。公私ともに充実した生活を送ってもらうのが一番ではないでしょうか。
小林氏:若手もベテランも関係なくみんなで切磋琢磨し合い、今以上に一体感を高めていけたら、もっと良い会社になれるはずです。今回の組織改善でも、若手の成長が刺激になって上の人たちを動かしていった部分がありますので、どんどん若手が変わっていってチーム全体を活性化させられたらいいなと思います。
岩崎氏:部下が頑張っていると「自分もやらなきゃ」と思いますし、そういうのは嬉しいですよね。物事を継続することは非常に大切なことですが、長く続けるのは簡単ではなく、誰でも途中で中だるみするときがあります。ですが、そんなときに仲間の誰かが頑張っているのを見ると、再び火がついたりするものです。このような良いサイクルをこれからもチーム全体で維持していけたらいいですね。