事業内容 | 超小型衛星等を活用したソリューションの提案 超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造 超小型衛星の打ち上げアレンジメント及び運用支援・受託 超小型衛星が取得したデータに関する事業 |
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業種 | 情報・通信・広告 機械・エレクトロニクス |
企業規模 | 51~100名 |
導入規模 | 51~100名(導入時) |
70人程度の組織になったタイミングで、一体感が下がってしまっていた
内製のサーベイでは、他社との比較や科学的な知見に基づいた分析ができなかった
満足度が低いことすべてに対応した結果、中途半端な状態になってしまっていた
期待度を考慮するようになった結果、集中して取り組むべきことが明確になった
エンジニアや営業など、立場の異なる人達が同じ目標に向かっていくことを改めて確認する機会をつくれるようになった
「事業内容」
弊社は2008年の設立以来、株式会社ウェザーニューズや宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けの専用人工衛星開発事業を行ってきました。2020年2月現在、5機の超小型人工衛星の設計開発・打ち上げ・運用の実績を有しています。
2015年に19億円の資金調達を行って以降、質量約100kgの超小型衛星を数十機単位で軌道上に打ち上げ、世界中を毎日観測できる次世代の地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」を構築、そこから得られる画像データおよびそれらを解析・加工した情報を提供する事業を進めており、今後はこのAxelGlobeを弊社の中核事業としていく予定です。
「組織の特徴」
弊社は2008年創業です。会社としての歴史は長いものの、組織規模を拡大し始めたのは2015年の資金調達がきっかけでした。それまでは受託の仕事をしていたのですが、2010年頃からシリコンバレーでも宇宙ビジネスに注目が集まり、我々も次の成長を目指そうということでアクセルを踏みました。
それまでは規模を追い求めることもなく、20〜30人くらいのいわゆる居心地のいい規模で組織を運営していましたが、そこから急に人数も増えて今は70名程の規模になっています。
衛星を打ち上げて、衛星から得られたデータを必要な形でお客様に提供するビジネスをしていますので、設立以来の機能である衛星というハードウェアの開発に加え、多くの衛星を同時に自動運用するためのITシステム開発、AI等を駆使した画像の解析など、会社として扱う技術の幅も一気に広がりました。
こうした事情もあり、社員のバックグラウンドも本当に多様になりました。特徴の一つとしては、外国人の社員が多いこと。3割以上が外国人社員です。国籍もバラバラで、約20カ国の国籍の社員が、弊社で働いています。
技術職で見ると、筋金入りのハードウェアエンジニアから、最先端のAIを駆使するデータサイエンティストまで、扱う内容も本当に幅広い。ここまで多種多様な人が一つのオフィスに集まっているという点では、日本に限らず世界中を探しても、なかなか弊社のような会社は稀だと思います。
「モチベーションクラウド導入の背景」
20人〜30人で、いわば「ツーカー」で通じあえていた組織から、70人という規模に成長していく中で、やはり「同じゴールに向かって進む一体感」というのは、過去に比べて相対的に下がっていったように感じていました。
そのような中で、組織開発としてまず実施したのが、社内で独自に実施したスタッフサーベイでした。社員それぞれの現状を知るという意味では、一定役に立ったとは思うものの、「他の企業と比較した現状把握」をすることはできず、「実施後のアクション」についても手探りな状況でした。
そこで、もっと体系的・効率的に、組織開発を行っていきたいという思いから、モチベーションクラウドの導入を決めました。モチベーションクラウドを選んだのは、心理学をベースとした科学的な手法を取り入れているからです。
経験則ではなく、科学的に分析されていることが重要です。当社はエンジニアが非常に多い会社なので、「エンジニアにしっかりと説明できるか」ということを重視しました。当社は経営に対してメンバーが発信しやすい雰囲気が醸成されている会社だとは思います。
ですので「なぜサーベイをするのか」「どんな効果があるのか」「どんな分析が行われたか」という質問に、ちゃんと答えられるツールを選びました。
「モチベーションクラウドの価値」
当社は事業内容が特殊であることもあり、入社時点で個々人が仕事の意義を明確に持って入社してきてくれていると感じます。
それでも、仕事をする日々の中で、改めて自分たちがしている仕事の意義について再確認する機会というのは重要だと考えています。モチベーションクラウドのサーベイをすることは、仕事の意義を考えるきっかけにもなると思っています。
特に私たち経営陣や営業を担当する社員は、社外の人と話すことが多いので、自分たちの存在意義を確かめる機会に繋がるのですが、ずっと社内にいるエンジニアには、改めて考えるきっかけを意識的に創っていくことが大切だと思っています。そういう効果も期待して、モチベーションクラウドを活用しています。
実施してみて、最も価値を感じたことは、集中して取り組む課題が明確になったことです。独自のスタッフサーベイで調査をしていた時には、問題として浮き彫りになったこと全てに対処しようと、欲張りになったことで中途半端に終わってしまったこともあります。
やるべきことを絞って、その部分のスコアが上がれば、成果が出たという達成感を得られると思うので、そこを目指していきたいですね。
また、結果を公開しながら実施できるので、「組織開発は経営者がやるもの」ではなく「みんなで組織を良くしていく」というマインドを持ってもらえることも大切だと思います。
前回のサーベイ結果から「営業の成果をもっと見えるようにする」というテーマに取り組みました。やはり当社のビジネスは、わかりやすいソフトウェアを売るわけではないので、営業難易度が高いです。
これまで使ったこともないサービスを売るために、お客様に何を見てもらえれば、どう話せばその価値が伝わるだろう、と営業は苦慮します。エンジニアからすると、自分たちが作ってきたものに自信もプライドもあるので、その議論の中で衝突が起きることもあります。
どちらが間違っているということではなく、立場の違う人たちが同じものを見て、同じところを目指していることを確認するというのは非常に重要で、まさに私たちがこれからより強化していかないといけないと感じていた課題を、モチベーションクラウドが後押ししてくれた感覚です。
「今後、モチベーションクラウドで目指したい組織像」
当社の組織としての強みは、多様性です。様々な国籍・バックグラウンドから生まれる考え方、それぞれの分野における高いプロフェッショナリズムを活かせる会社でありたいと思います。意見が異なることを、ネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えられる文化を創りたいと思っています。
そのためには、例えば技術が営業のことを、例えば社員が経営のことを知るということは、その第一歩になると思っています。効率だけ考えると、全部自分でやる方が楽ということもあります。
でも、そこをちょっと引いて、チーム全体でアウトプットを最大化する方向に目を向けると、より大きな成果が出せるはず。1+1が2よりも高くなる世界を目指していくには、個人の能力の集積ではなく、組織力・チーム力が必要になってくると思っています。
私が理想とするのは、一人一人がディシジョンメイキングして自律的に動けている組織です。一人一人が自律的に動いても、会社全体としての方向性としては間違っていない、そんな組織にしたいと考えています。
100人になっても、200人になっても、1,000人になってもツーカーが通じる状態を創りたい。「100人なら可能かもしれないけれど、1,000人は無理だ」という意見があることも理解しています。
けれど、ミッション・ビジョンを共有しながら、時間をかけて組織を創っていけば、きっと可能です。普通の人からすれば「宇宙は限りなく遠い場所」ですが、私たちにとってはそうではありません。決して届かない場所ではない。
実際に今は、宇宙からの情報をサービスとして多くの人に届けられる世界になっています。であれば、目指す組織像も、決して不可能ではない。科学的なアプローチを実現できるモチベーションクラウドを活用しながら、私たちは理想の組織へと向かいたいと思います。
部署の業務内容 |
衛星のペイロード(光学とカメラシステム)の設計、開発、及び試験 |
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業種 | 機械・エレクトロニクス |
部署規模 | 11名~30名 |
取り組んだ組織課題は、組織風土(社内の一体感や意思疎通に課題)
チームの一体感が高まったことで困難を乗り越え、超小型人工衛星の打ち上げを成功させることができた
エンゲージメント向上を実現した部署のリーダーの方に、組織変革のストーリーを伺いました。
株式会社アクセルスペースは、超小型人工衛星の設計・製造・運用とともに、データの利活用まで含めたソリューションビジネスを展開する企業です。衛星内部のコンポーネントを設計・開発する宇宙機設計グループ ミッション&コアドメインユニットは、エンジニアの数が増えたことでメンバー個々の問題や業務量のアンバランスに気づきにくい状態になっていました。また、専門分野が異なるエンジニア同士の業務理解も不足していました。ユニットリーダーのアルフォンソ氏は、コミュニケーションの方法や仕事の割り振りを工夫するなど、組織の改善に着手。徐々に、エンジニア同士に「同じチームの一員」という意識が芽生え、協力し合う関係が生まれていきました。結果、困難を乗り越え、超小型人工衛星の打ち上げが成功しました。
「抱えていた課題」
アルフォンソ氏:当初、私たちのチームのメンバーは4人しかいませんでしたが、あるタイミングで13人まで増え、担当する技術領域もかなり広くなりました。4人だった頃のほうが、マネジメントが楽だったのは言うまでもありません。4人であれば毎日全員と話ができますし、部下の業務を正確に管理することができます。しかし、13人になってからは、悩みや問題を抱えているメンバーがいても以前より気づきにくくなりました。また、エンジニア間で業務量のアンバランスが生じていても、それを把握するのが難しい状態になっていました。
もともと私はマイクロマネジメントが好きではなく、メンバーが自分自身で「やるべきだ」と考えることは何でもやらせるようにしてきました。エンジニア自らが、注力すべきことを選択できる自由を与えたいと思っているのですが、なかには「あまりに自由だとかえって戸惑う」というエンジニアがいるのも事実です。そういった意味でも、人数が増えたことはマネジメントについて考え直すきっかけになりました。
また、対応する技術領域が拡大したことで、専門分野の異なる複数のエンジニアが一つのチームで働くことになりました。もちろん、専門分野が違うエンジニア同士も協力して仕事を進めていく必要がありますが、お互いに何をやっているのか把握できていないという問題も出てきました。
その他、メンバーと話していて気づいたのは、経営陣が考えていることをエンジニアが正しく理解していないということでした。これも、人数が増えたことで生じた問題だと認識しています。
「改善のためのアクション」
アルフォンソ氏:経営陣の意図をエンジニアに正しく伝えるために、週次のミーティングを始めました。私が結節点となり、経営陣が達成してほしいと考えていることについて説明することにしたんです。私のチームのエンジニアの多くは外国人なので、間違いなく伝わるよう、翻訳に力を入れました。また、「あなたはこれをしなさい」と言うのではなく、「私たちはこれをする必要がある」「会社はこれを望んでいる」というように背景や目的を伝えることを重視しました。目的さえ正しく理解できれば、エンジニアはその目的を達成するために取るべき効果的な方法を選択できます。
メンバーが4人だった頃は個別に説明してもたかが知れていましたが、人数が3倍になったらそうはいきません。そのうえ、コロナ禍でリモートワークが増えていたので、コミュニケーションが以前より難しくなりました。ですから、全員で集まるミーティングを設けることにしたんです。
「ハチマキ」を作ったのは、ユニークな取り組みだったと思います。メンバーが4人だった頃の話ですが、ストレスのかかるプロジェクトを進めていたときに、職場の雰囲気を軽くしようと思ってハチマキを作りました。ハチマキなんてバカげたジョークだと思うかもしれませんが、まさにそういった「軽い雰囲気」を作りたかったんです。できあがったハチマキを見たメンバーは、初めこそ「本当にこれ、つけるんですか?」という感じでしたが、実際につけて楽しんでくれましたし、他部署の人にもおもしろいと感じてもらえました。
私はよく「組織の雰囲気を楽しくフレンドリーなものにするには、どうしたらいいんだろう?」ということを考えます。ハチマキに限りませんが、楽しむためのひと工夫でメンバーのモチベーションってグッと高まるのかなと思います。
仕事の割り振りをする際は、他の技術分野で働いているエンジニアとペアになるように割り振ることを意識しました。お互いの結び付きが深まるように、あえてそうしました。技術的な成長を考えるうえでも、異なる分野のエンジニアからフィードバックをもらうことは大事ですからね。
また、メンバーに対して「あなたは何をやり遂げたい?」「3年後、あなたは何を達成していたい?」といったことを、絶えず問いかけるようにしていました。ありきたりな質問かもしれませんが、それぞれのメンバーのやりたいことに合った仕事を割り振ることでモチベーションは高まるはずです。メンバーは、プロジェクトを完遂するための単なるリソースではありません。個々の方向性に沿った仕事を割り振ることで働く意欲が高まりますし、自分の仕事に満足するほど、成果も良いものになっていくのだと思います。
「改善していく中で感じたこと」
アルフォンソ氏:週次のミーティングは、インタラクティブ(双方向)なものになるよう、できるだけメンバーに意見を求めたり聞き出したりするようにしていました。メンバーはたくさんの仕事を抱えていますので、ミーティング中に話を聞いていながら、同時に他のことをしているかもしれません。できるだけ、そうならないようにインタラクティブなミーティングにすることを心がけました。
また、「あなたがやるべきことはこれです」というように単なる指示になってしまうと、みんな退屈して聞くのをやめてしまいます。ですから、冗談を言ったりして、あまり堅い雰囲気にならないようにしていました。
形式張らないようにしていたのは1on1も同じです。人事から提案があり、毎月メンバー全員と1対1で話す時間を設けたのですが、私はオフィスの近くのカフェでよく1on1をしていました。素敵なテラス席があるので、そこに座ってコーヒーを飲みながら話します。当然ですが、目的はコーヒーを飲むことではありません。今考えていることや抱えている問題を、私に話す機会を提供することです。
1on1で気を付けていたのが、話題は必ずメンバーに決めてもらうということです。私に話したいことや話すべきだと思うことを、メンバーに準備してきてもらいます。もちろん、常に私に話すべきことがあるわけではないので、その場合はカジュアルな話題でも構いません。実際、プライベートな話もしたほうがお互いの結びつきは深まると思っています。
コロナ前は、メンバーと一緒にランチに行くこともありましたし、飲みに行ったり、週末に山へ出かけたりもしました。こういうのは、会社とは関係のない非公式なこととしておこなうべきです。ですから、上司としての私が提案するのではなく、同僚の一人として提案します。特定のメンバーを誘うのではなく、「一緒に行きたい人いない?」といった聞き方をして、「いいね」と手を挙げた人と一緒に行きます。重要なのは、決して強制しないことです。
「組織の変化ともたらされた成果」
アルフォンソ氏:組織改善の取り組みをして、全体的に「同じチームの一員」という意識が高まってきていると感じています。誰もがチームのみんなのことを友人の一人と考えるようになり、「いつでも力になりますよ」という姿勢が見えるようになってきました。チームのみんなが一体となって働くようになったのは、一つの大きな成果だと思います。
先ほどお話ししたハチマキの件も、目に見えない成果につながっています。私がハチマキを作ったのは、衛星の出荷前の最終段階のことでした。当時は、試験において様々な技術的問題が見つかっており、みんなで必死に解決に取り組んでいましたが、いかんせん納期の余裕がありません。「私たちのせいで、衛星を打ち上げることができなくなってしまうかもしれない・・・」という並々ならぬプレッシャーがかかっており、職場の緊張感も高まっていました。そんな状況でのハチマキだったんです。
厳しい状況でみんなピリピリしていましたが、ハチマキをすることによって精神的な安心感が生まれ、雰囲気がだいぶ軽くなりました。「僕らは楽しんでいるんだ」という感じで、あらためて高いモチベーションで仕事に向き合うことができました。
あのハチマキがなければ衛星は打ち上げられなかったということはないかもしれませんが、あのハチマキがあったから困難な状況を乗り越えられたのは間違いありません。ハチマキがあったことでエンジニア集団の一体感が高まり、「絶対に打ち上げを成功させるんだ」という強い意志で結束できましたし、その結果、衛星の品質や信頼性は大きく高まりました。あのときの衛星が今も毎日、世界の様々な場所の写真を撮り続けていることを考えると、他の何よりも大きな成果だったんだなと思います。
理想は、リーダーが必要とされないチーム
「今後の展望」
アルフォンソ氏:経営陣の考えをエンジニアに正確に伝えるというお話をしたように、現状は、上から下へのコミュニケーションに注力しています。ですが今後は、下から上に向けてのコミュニケーションを改善していきたいと思っています。チームのメンバーが考えていることや感じていることを、私の上司や上層部に分かってもらうことも私の役割の一つですから、今後は下から上へのコミュニケーションに重点を置いていきたいです。
私が考える理想のチームは、メンバーが4人だった頃の状態に近いもので、メンバーがお互いに話し合い、協力し合って仕事を進めていけるチームです。言い換えれば、リーダーが必要とされないチームです。もちろん、リーダーがいない組織というのは現実的ではないでしょう。ですが、今のチームの中で私はいなくてもいい存在でありたいと思いますし、そうなろうとしています。
また、技術的な成長も欠かせません。今必要な技術だけでなく、今後必要になると考えられる技術も、すぐに使えるようにトレーニングしておかなければいけません。航空宇宙業界は絶えず技術が進化しており、毎日のように新しいことが起こっています。近い将来、あるいは明日にでも、新しい技術・知識を使うことになるかもしれません。ですから、常に先を見て「これを学んでおこう」「この技術に注目しよう」とチームに呼びかけ、準備を整えていく必要があります。
私たちは、「T」型のエンジニア集団を一つの理想としています。これは、「T」のタテ線のように自分の専門分野に精通しているのと同時に、「T」のヨコ線のように専門外の分野についても十分な知識を有しているエンジニアのことです。今のメンバーは、自分の専門分野に関しては極めて秀でていますので、今後やるべきことは「T」のヨコ線の強化です。他の分野のエンジニアと連携・協力することで、もっと知識の幅を広げられるようにしていきたいですね。