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ベストリハ株式会社 ベストリハ台東

コミュニケーションの質と量にこだわった施策で、従業員満足度のみならず顧客満足度も向上し利用者数が3年で5倍以上に

ベストリハ株式会社 ベストリハ台東

所長 齋藤 拓也 氏

事業内容

・ヘルスケアソリューション事業

デイサービス、訪問看護、訪問介護、訪問鍼灸、児童発達支援、放課後等デイサービス

・PHRプラットフォーム事業

食事支援、システム開発、機器開発

部署の業務内容

ヘルスケアソリューション事業の拠点の一つとして、専門職(介護福祉士、理学療法士、看護師、臨床心理士など)が、身体機能・生活機能の維持改善などを目的としたサービスを提供

業種 サービス

企業規模

51名~100名
部署規模 ~10名

課題

  • 取り組んだ組織課題は、内部統合(目標達成意欲に課題)

効果

  • 施設の延べ利用者数が3年で5倍以上に増加
  • 新規契約数がひと月に平均2~3件のところ、5~6件は獲得できるようになった
  • 離職率が大幅に改善。50%から11%に低下
  • 残業時間を15%削減

ベストリハ株式会社は、デイサービスや訪問看護、ジュニア教育支援などの事業を展開しています。ベストリハ台東は、2018年に開所した通所介護ステーションの一つです。開所当初、他の店舗から集まったスタッフは仕事のやり方も考え方もバラバラで、組織に一体感はありませんでした。前任者から所長を引き継いだ齋藤氏は、部下が自分に付いてきてくれないことに悩み、組織改善を決意します。コミュニケーションの量と質にこだわった地道な施策により、ES(従業員満足度)を高めることからCS(顧客満足度)の向上につなげ、利用者数の大幅増を実現。会社から「ロールモデル店舗」と位置付けられるほどになるまで、大きな変革を遂げました。

部下からの信頼がなく、スタッフが付いてきてくれない

「抱えていた課題」

齋藤氏:ベストリハ台東は比較的新しい店舗で、開所が3年前になります。私も含め、いろんな店舗からスタッフが集まってきたのですが、初めて一緒に働くスタッフばかりなので、最初はみんなが探り探り仕事をしているような状態だったと思います。店舗ができて半年後に、前任の所長の退職にともなって私が所長を任されることになりました。

所長になって、最初の悩みになったのが部下との関係です。まだまだ所長として未熟な部分も多かったので、「前の所長だったらこうだったよね」「ちょっと頼りないよね」といった声が耳に届くこともありました。私が何か言えば、所長が言うことなのでスタッフは「分かりました」と言いますが、行動が伴いません。「自分に付いてきてくれていないな」というのは、比較的早い段階で感じたことでした。

別々の店舗から集まってきたスタッフなので、やり方も考え方も違います。私が「こういうふうにやっていこう」と言っても、「私はこう思います」といった反発もありました。私との関係がうまくいかず、そのまま退職してしまうスタッフもいました。ひと月に2人辞めてしまったときは、精神的にもきつかったですね。

みんながバラバラの状態なので、店舗としての業績も良くありません。当時は、目標に対する達成度が50%~60%くらいで、全店舗のなかでも下から数えたほうが早いような位置でした。

コミュニケーションの量と質にこだわり、スタッフとの関係性を構築

「改善のためのアクション」

齋藤氏:まずはスタッフとの関係性を構築しようと、コミュニケーションの量を増やすことから始めました。月に一度、「プライムトーク」という面談があるのですが、そこで仕事のやり方のすり合わせをしたり、プライムトーク以外の時間でもこまめにコミュニケーションを図ったりするようにしました。

所長になったときに、「利用者様が楽しく来てくれる場所」「スタッフが働きやすい場所」という2本柱で店舗のビジョンを掲げたのですが、賛同してくれるスタッフばかりではありません。そのときは、「なんで合わせてくれないんだよ」といった気持ちもありましたが、マネジメント職に就いたからには、部下の意見にも耳を傾け、きちんと納得してもらったうえで働いてもらいたいと思っていましたので、お互いの意見をすり合わせて、共感・納得してもらえるような伝え方をするように心がけました。

スタッフの行動を褒めることも、心がけていたことの一つです。弊社は、全社員が見ることのできる日報があるのですが、その日報で、小さな行動でも褒めることを続けました。きちんと評価すれば、相手もやって良かったなと感じるでしょうし、ちゃんと見てくれているという安心感にもつながると思います。他のスタッフからも、「頑張ってるんだな」と認められるようになりますしね。

また、店舗全体のサービスレベルを上げるために、個人個人の得意分野を伸ばす取り組みを始めました。リハビリや入浴サービス、利用者様とのコミュニケーションなど、誰にでも得意な仕事があるものです。たとえばリハビリであれば、日頃から率先して利用者様の状態を把握したり、成果が出たリハビリ事例を共有したりと、それぞれが得意分野で店舗内でナンバーワンになれるように強化していきました。

あとは、店舗内での情報共有ですね。ミーティングの場にしても、コミュニケーションツールにしても、とにかく自分が得た情報をスタッフ全員に共有するようにしつこいくらい言っていました。利用者様の情報を共有できていないと、誤ったサービスを提供してしまったり、クレームに発展してしまったりすることがありますので、「知らない人がいる」という状態を作らないようにしました。

情報共有をするだけでなく、その後の対策やアプローチ方法まで話し合うようにしたのも心がけたポイントです。終業前のミーティングで情報共有をしたら、「その課題に対してどう対処するのか?」「その利用者様に対してどうアプローチするのか?」というところまで明確にして、すぐに翌日から実行に移せるようにしました。

コミュニケーションの量が増え、ある程度スタッフとの関係性ができてきたら、コミュニケーションの質も意識するようにしました。「的確なタイミングで伝える」というのもその一つです。すぐに伝えるべきこともありますが、内容によっては「今言っても意味がない」というケースもあるじゃないですか。ですから、相手にとっていちばん効果的なタイミングを見極めて伝えるようにしていました。

また、ただ伝えるのではなく、相手に考えさせることを意識しました。「今日、◯◯さん(利用者様)がこういうことをしてたけど、君はあまり見えていなかったよね? あの時間帯に◯◯さんを見られるようにするにはどうしたらよかったかな?」というような質問を投げかけるんです。単純に「こうしてください」「分かりました」の関係では、いつまで経っても自立できません。ですから、質問したり意見を求めたりして、なるべく考えさせるようなコミュニケーションを増やしていきました。

「会社がこう言ってるから」という伝え方が、モチベーションの低下を招いていた

「改善していく中で感じたこと」

齋藤氏:部下へのマネジメントでは、正直「自分でやったほうが早いよな」って思うことも多々ありました。実際に、手を差し伸べたり、代わりにやったりしたこともありました。ただ、これだとスタッフの成長につながりませんし、同じ状況になったとき、また自分がやることになりかねませんので、歯がゆいけれど、できるだけ我慢するようにしていましたね。

取り組みの成果もあり、スタッフのレベルも徐々に上がり、店舗の雰囲気も良くなってきたのですが、目標を達成できない時期が続いたことがありました。「みんな頑張ってるのに、なんで達成できないんだろう」と悩みましたが、あらためて最初に掲げた「利用者様が楽しく来てくれる場所」というビジョンに立ち返って、そこをもっと突き詰めていくことにしました。

そのために、一人ひとりのスタッフに明確な目標を設定しました。それでもすぐに結果は出ませんでしたが、半年くらい経って目標を達成できたんです。そのときは本当に、スタッフも利用者様も店舗を好きになっていた瞬間だったと思います。今まで感じたことのなかったような充実感がありました。

ES(従業員満足度)の向上を起点に、利用者数と離職率を大幅に改善

「組織の変化ともたらされた成果」

齋藤氏:残業時間で言うと、組織改善の前に比べて15%削減できました。以前は、各スタッフが独りよがりだったというか、一緒に働くスタッフへの思いやりに欠ける状態だったと思います。「自分のことは自分でやる」「人のことは知らない」という感じで、周りのスタッフが何をしているのかも分かっていませんでした。ですが今は、「◯◯さんがそれをするなら、私はこれをします」というように、状況に応じて役割分担をしたり、困っている人に手を差し伸べたりできるようになり、結果的に残業時間の削減につながりました。

店舗の延べ利用者数も大きく増加しました。開所翌月の2018年10月時点では163名でしたが、2021年10月には908名となり、5倍以上にすることができました。また、ベストリハの各店舗における新規契約数は、ひと月に平均で2~3件ですが、うちの場合、平均で5~6件は獲得できるようになり、多い月では15件という月もありました。

要因は、ES(従業員満足度)を追求したことに尽きるのではないでしょうか。ESを大切にしようと確信した忘れられない出来事があります。以前、施設の見学にいらしたお客様がいたのですが、ひと通りの見学とご説明を終えて「ご利用はいかがいたしますか?」と聞いたときに、「ここは雰囲気が良くないから通いたくない」って言われたんです。初めて来た方がそう感じるくらい、うちの店舗の雰囲気は悪いんだって、すごくショックでしたね。ですから、コミュニケーションを中心にESを高めることに努めました。

ESを大切にすることで仕事へのやりがいや仲間意識が高まり、徐々に店舗全体が明るくなっていきました。そういった生き生きした雰囲気が利用者様にも伝わるようになり、CS(顧客満足度)にも良い影響を与えたのだと思います。利用者様はある意味、店舗の「広告塔」です。利用者様の満足度が上がれば、外部のケアマネージャーさんの耳にも入りますし、他のお客様の耳にも入ります。それにプラスして営業活動をおこなった結果、外部からの評価が上がり、利用者数が増えていきました。

離職率も大幅に改善しました。組織改善前の離職率は50%でしたが、今は11%にまで下がっています。これもESを追求した結果だと思っています。先ほどお話ししたように、部下の良いところを見つけてアウトプットするという取り組みを私から始めたのですが、それをスタッフにもやってもらいました。人ってあまり好きじゃない人のことは、嫌なところが大きく見えちゃうじゃないですか。ですが、良いところを見つけて評価することで印象が変わり、人間関係が良くなったりします。誰でも褒められたら嬉しいですし、モチベーションにもつながります。自分では気づけていなかった長所を発見できることもあります。このような取り組みも、離職率を下げる要因になったのではないでしょうか。

今のやり方にこだわらず、柔軟に変化に対応できる組織づくり

「今後の展望」

齋藤氏:組織としてまずは、数値目標の達成ですね。当たり前のように毎月達成できる組織にしていきたいと思います。

もう一つは、環境の変化やスタッフの変化に柔軟に対応できる組織ですね。今後、新人が入ったり環境が変わったりというのは、当然あるはずです。そういった変化があったときにも、今と同じサービスレベルを維持できる組織でなければいけません。今のやり方が、1年後、2年後にも正しいとは限りません。ですから、様々な変化に対して柔軟に対応できるような組織づくりをしていきたいと思っています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時 (2022年1月) のものです。
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