事業内容 |
コインチェック株式会社は、アプリダウンロード数No.1*、ユーザー数256万以上**を有する暗号資産取引サービス「Coincheck」を運営しています。「新しい価値交換を、もっと身近に」をミッションに掲げ、最新のテクノロジーと高度なセキュリティを基盤として、暗号資産やブロックチェーンにより生まれる「新しい価値交換」を身近に感じられるように、より良いサービスを創出を目指しています。 暗号資産取引サービス Coincheck * 2021年1月〜2021年6月 データ協力:App Tweak **2021年3月末時点 |
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業種 | 金融、情報・通信・広告 |
企業規模 |
101名~300名 |
導入規模 |
101名~300名 |
組織の急拡大に伴う組織課題を解決したい
離職を減らしたい
全社をあげて、エンゲージメント向上にコミットするようになった
経営と現場の意思疎通が強化された
エンゲージメントが向上したことで離職が減った
「事業内容」
今井氏:Coincheckという、暗号資産の取引ができるサービスを運営しています。最近では、NFTというNon-FungibleToken(非代替性トークン)を暗号資産と簡単に交換できるマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」を提供開始しました。
他にも、Sharely(シェアリー)というオンライン株主総会のサービスも提供しており、暗号資産の取引サービスから事業の幅を広げているところです。
森山氏:私たちは暗号資産関連や金融の事業にこだわっているわけではなく、世の中の大きな環境変化に対するニーズの変化にテクノロジーで対応する、新しい価値を生み出すというのが創業時から会社のコアにあるんです。
Sharelyのようなサービスを提供しているのは、業界内からすると異色に見えるかもしれませんが、これもコロナ禍でも株主総会を安全なオンラインで実施したいというニーズから生まれたサービスです。事業の幅は広がっていますが、会社のコアは変わっていません。
「モチベーションクラウド導入の背景」
森山氏:当時は会社の従業員数が急激に伸びていた時期で、その成長速度に組織づくりが追いつけていない状態でした。そこで、皆が納得できるような評価制度、人事制度を策定しなくてはと考え、リンクアンドモチベーションに相談をしました。
制度を作るにあたって、その効果測定もしていく必要があると考え、モチベーションクラウドを合わせて導入することにしたんです。
モチベーションクラウド導入前の組織状態は決して悪くはありませんでした。コインチェックでは、2018年1月に暗号資産NEMの不正流出事件が発生し、多くのお客様にご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。その出来事自体は確かに大変なことですが、当時は大きな課題に向き合う中で、逆に一致団結することができたんです。
全員で全てのステークホルダーに納得してもらえるよう対応することに全力で向かっていたので、悲観的なムードはあまりありませんでした。2018年4月にマネックスグループ入りし、私はコインチェックに出向してきましたが、皆が前向きで、組織に活気があることに驚かされました。
実は事件が起きる直前まで採用活動をしていて、内定も出していたんですね。あのようなことが起きたら、内定者へのフォローが疎かになってしまいそうなものですが、そんなことはありませんでした。
記者会見の直後に内定者向けの説明会も開催し現状を包み隠さず伝え、その上で入社するかどうかを決めていただく対応をしたと聞き、この会社はきっと将来もっと強くなるしマネックスグループの未来を担う存在になるだろうと感じましたね。
今井氏:実は私もあの事件の少し後に入社したんです。内定後にオフィス見学させてもらった時、暗い雰囲気で仕事をしてるのかなと思っていたのですが全くそんなことはなく、とてもエネルギッシュな人たちばかりでした。
こんな人たちとだったら一緒に働けそうだと感じましたね。また、こんな課題を乗り越える体験は自分の人生においてなかなかできないだろうと思ったので、ここはチャレンジしてみようと考え、入社を決めました。
森山氏:その頃はピンチに対して皆が一枚岩になっていたのですが、むしろ組織の問題はその後から起き始めました。
「取り組み前の組織課題」
今井氏:マネックスグループの傘下に入り、経営体制が変わった時でさえ一致団結していたのに、その後になって離職が増え始めたんです。
森山氏:2018年4月にマネックスグループ入りして以降、まずは「暗号資産交換業者」の登録を受けることを第一目標に掲げました。その実現に向けて1年間で約2倍の組織に拡大しました。
めでたく2019年1月に暗号資産交換業登録は採れたのですが、一気に人が増えたことで、その後組織としての歪みが出てきてしまいました。
例えば、経営層と現場との縦の意思疎通に時間がかかるようになったり、部長によるマネジメントがうまくいっている部署とうまくいっていない部署がはっきりしてきたり、急激な組織成長がゆえにありとあらゆる課題が噴出しました。
そのような状況でサーベイを取ったところ、エンゲージメントスコア (※) はかなり落ちてしまっていました。
※エンゲージメントスコアとは、社員の会社に対する共感度合いを表す指数です。
しかも、当時は暗号資産の相場が凪の時期で、事業としても自分たちが想い描いていたようにうまくいかない状況でした。
今は「守り」のフェーズだと思ってる経営層と、登録を取れた今こそ「攻め」のフェーズに移行していきたいという現場との間で、コミュニケーションもずれてきてしまい、離職者も現れ始めるという負の連鎖が起こっていました。
経営層と現場のメンバーの気持ちが一番離れてしまった時期でしたね。サーベイ結果でも、「経営に対する信頼感」の満足度が低く出てしまっていて、かなり危機感を持ちました。
メンバーが辞めてしまっては、これから暗号資産の相場が好転して「攻め」のフェーズになっても事業成長を加速させることはできません。
ましてや人材流出がずっと止まらなければ攻めるどころか既存事業の継続性にも影響するので、経営としても「まずはメンバーに向き合うことが必要だ」と判断し、そこから本気でエンゲージメントの向上に取り組むことになりました。
厳しい状況に直面し、人事部だけではなく経営陣が本気になったことが大きなきっかけだったと思います。
まずはエンゲージメントスコアを50以上にしようと決めました。相談をしていたリンクアンドモチベーションのコンサルタントの方からも「まずは50を上回れば他社の例を見ても離職の連鎖は収まります。エンゲージメント経営を実現させましょう」と励ましてもらい、すごく心強かったですね。
「改善に向けた取り組み」
森山氏:その後の取り組みでエンゲージメントスコアが50を超え、2021年3月のサーベイ結果ではエンゲージメントスコアが62.5、エンゲージメントレーティング (※) がAAにまで上がりました。すると、コンサルタントの方からお話いただいたとおり、本当にエンゲージメントスコアが50を超えてから、離職の連鎖が止まりました。
※エンゲージメントレーティングはエンゲージメントスコアを11段階で格付けしたものです。AAは上から2番目のレーティングです。
エンゲージメントスコアが上がるまでの、ここ1年間くらいは苦しい時期だったので、正直人事内でも「エンゲージメント向上に取り組み続けることに意味はあるんですか?」というネガティブな意見もあったんです。もしそこで私がやめる判断をしたら、組織が変わることはなかったと思います。
私はマネックスグループから人事部長としてこの会社にきましたが人事のスペシャリストではありませんでした。マネックスグループに新卒で入社し、マネージャーや管理職を目指すジェネラリストとして、ほぼ3年ごとに異動しながらいろんな部署を経験してきました。
いろんな現場を経験してきたからこそ、エンゲージメントが向上しなければ私がこの会社にきた意味はないと思っていましたし、変化の早い暗号資産業界において自立して動ける組織にするためにはエンゲージメント経営は必要だと思っていました。
すぐに成果が出るものではないですが、諦めなければいつか必ず変化のチャンスがくるはずだと信じて推進してきました。結果として、エンゲージメントが向上して少しホッとしています。
森山氏:具体的な施策ですが、まず経営メンバーの中でエンゲージメント向上に対する責任者をハッキリ決め、人事部がスコア上で課題となっている項目に対する施策を練り、その内容や進捗を2週間に1回必ず全社員が集まる全体会で状況を共有することを続けました。
各課題の解消状況が感じられるよう課題に対応するエンゲージメント項目については具体的な数値でKPIを設定し、目標達成に向けて具体的に何をどう改善していくかといったコミット内容や進捗状況をその場で報告していました。
サーベイを取ったけれど、その後のアクションが曖昧になって「あれってどうなったんだっけ?」となるのが一番良くないと思っていたので、これを隔週で続けました。
さらに、特に一番大きな課題となっていた「経営に対する信頼感」を向上させようと経営合宿を実施したこともかなり効果は大きかったです。
その場をブラックボックス化させないように、経営合宿で今後の事業をどうしていきたいと考えているのか、会議のアジェンダや議論のプロセス経営陣個々の意見や考え方もすべて議事録にして社員に開示し、皆にも共通の温度感や当事者意識を持ってもらうことを心がけました。
また、経営以外の現場寄りの観点ではサーベイ結果からマネジメントが上手くいってる部署とそうでない部署で差の開きを定量的に比較して見ることができたので、マネジメント層のマネジメントスキルが十分ではない部署という仮説を確信に変えることができました。
コインチェックの特徴は各分野の専門家が多いスペシャリストの集団ですが、特定の分野で成果を発揮するスペシャリストが必ずしも良いマネジャーかというと、それは別問題ですよね。
それまでは傾向としてスペシャリストをマネジャーに登用することも多かったのですが、徐々にマネジメントスキルもちゃんと考慮した登用に変えていきました。
エンゲージメントは組織のメンバー全員で向上させていくものだと思いますが、やはり部長やリーダークラスのマネジメント層の責任は重いと思います。
マネジメント層にとって、エンゲージメントスコアと向き合い続けることは自分のマネジメント力が丸裸になるのでとても大変なことですが、向き合わずに放置しておくことはできません。マネジメント層が内省しながら自助努力で適切なマネジメントを実現させられよう、我々人事がリードやサポートをしながら進めていこうと意思決定しました。
「モチベーションクラウドの価値」
森山氏:私はリンクアンドモチベーションさんとお付き合いをする前、自社で起きていることを外の人に考えてもらうなんて甘えているし、自分たちのことは自分たちで考えるべきだと思っていたんです。これはコインチェックが今でも大切にしているカルチャーでもあります。
ただ、組織改善を進める中で「私の考えは本当に正しいのか?自己満足になっていないか?」と不安になったり、自信を失いそうになることもありました。そんな時に、客観的な視点をくれるのが、モチベーションクラウドであり、サポートしてくれているリンクアンドモチベーションのコンサルタントの皆さんです。
自分が「裸の王様」にならないために、必要な支援をいただいていると思います。いつも的確なアドバイスをいただき、組織に向き合う勇気をくれています。精神的にも支えてくださる存在ですね。
また、モチベーションクラウドでは、他社が似たような課題に対してどのように取り組んでいるかを知ることができます。豊富なデータと他社事例から、アドバイスをいただけるのは大きな利点だと思っていますね。
エンゲージメントスコアが上がった下がったというような表層的な話ではなく、経営課題と紐付けて一緒に考えてもらったのは大きかったです。リンクアンドモチベーションさんとは「強力タッグ」を組ませてもらっています。
「今後目指す組織像」
森山氏:私たちの業界は環境変化が激しいのですが、スペシャリスト集団だと変化への対応に弱いのではないかという課題感があります。これからは、自分の専門外の領域にも手を伸ばしていけるような、環境変化に強い組織になっていきたいですね。
例えば、コインチェックはエンジニアが優秀ですが、サービスはエンジニアに限らず誰が考えて生み出しても良いもののはずです。専門性に囚われず、皆で新しい価値を生める組織風土にする必要がありますし、もっと変化を楽しむことができれば、唯一無二の面白い会社にできるはずです。
今井氏:私はコインチェックの良いところは多様性だと思っています。社内には実に幅広い年齢やバックボーンを持つ方がいます。今後はそういった風土や文化をコインチェック社の明確な強みとして確立したいです。
自分たちの強みやコアバリューは外から与えられるものではなく、自分たち自身で思考し、生み出すものだと思っていますが、その過程で壁にぶつかることもあるはずです。これからもリンクアンドモチベーションにサポートをいただきたいと思っています。