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目の前の弱みではなく、あるべき姿に向かうことでチームの一体感を醸成

株式会社いけうち
営業本部 販売促進課

営業本部 販売促進課 課長 吉田 恭敏 氏

事業内容

スプレーノズルを提案・販売するスプレーノズル事業、スプレーノズルから発生する霧の特性を利用して課題を解決するソリューション事業

部署の業務内容

自社商材の販売促進(カタログ・Webサイトの更新、チラシ作成、動画編集、導入事例制作、Web広告出稿など)

業種

機械・エレクトロニクス

企業規模

501名~1000名

部署規模

~10名

取り組んだ組織課題

内部統合

約1年間でのエンゲージメント

スコアの変遷

48.5 ⇨ 71.3

抱えていた
課題

  • チーム内のコミュニケーションは必要最小限で、情報共有の不備からミスにつながることも多かった。

  • メンバーごとに異なる理想をもっており、みんなが違う方向を向いているような一体感のないチームだった。

改善のための
アクション

  • 終礼や勉強会を設けて、コミュニケーションの量・質の向上を図った。

  • 会社の方針をそのまま伝えるのではなく、チームとしてどう捉えるべきかを併せて伝えた。

  • サーベイで抽出された弱みを克服する取り組みだけでなく、チームの目的やあるべき姿を実現するための取り組みに注力した。

得られた
成果

  • メンバーの発言量が増え、活発かつポジティブなコミュニケーションが生まれるようになったことで、ミスが減った。

  • 会社の考え方や未来像に納得することで、個々のメンバーの理想と会社の理想の整合性が取れるようになった。

コミュニケーションは最小限で、各々がバラバラの理想を描く一体感のない組織だった

「抱えていた課題」

吉田氏:以前から、販売促進課では必要最小限のコミュニケーションしかありませんでした。業務におけるちょっとしたことでも、周囲のメンバーに共有しておいたほうが良い情報は結構多いと思いますが、そういった情報を積極的に共有する雰囲気はなく、情報共有の不備から問題が生じることも多々ありました。たとえば、カタログに掲載する情報が変わったらWebサイトも修正しなければいけないのに、それが遅れるといったミスは少なくなかったと思います。

その頃、リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドが導入されましたが、最初のエンゲージメントサーベイの結果は芳しくないものでした。今でこそ、エンゲージメント・レーティングは「AAA」になっていますが、最初は「B」で、エンゲージメントスコアは48.5でした。結果を見て、「この組織を変えるのは無理なんじゃないだろうか・・・」と思ったのを覚えています。

※エンゲージメント・レーティングとは、エンゲージメントスコアを11段階で格付けしたものです。
※エンゲージメントスコアとは、従業員エンゲージメントの指標です。

なぜ、こんなにエンゲージメントが低いのだろう?と考えたのですが、そもそもチームとしての一体感が欠けていたことが大きかったと思います。チームのメンバーはそれぞれが違う理想を描いており、それぞれが「こうあるべき」だと思っているけど、実態はそうなっていない。それに対して、みんなが「会社が間違っている」と考えているような状態でした。いろんな理想がごちゃ混ぜになっていて、みんなが違う方向を向いているような統一感のないチームだったと思います。

弱みをつぶす取り組みから、あるべき姿の実現に向けた取り組みへ

「改善のためのアクション」

吉田氏:モチベーションクラウドが導入された当初は、個々のメンバーがエンゲージメントを高める意味を感じられず、やらされ感でサーベイに回答しているような状態でした。やらされ感ではなく、納得感を持って取り組んでもらうため、「なぜ、エンゲージメントサーベイをおこなうのか?」という意義から丁寧に説明しました

また、サーベイの設問に関する認識合わせもおこないました。というのも、会社のことをイメージして回答すべきなのか、チームのことをイメージして回答すべきなのかを迷ってしまうような設問もあったからです。そこで、一度みんなですべての設問を見ながらディスカッションをおこない、「何番から何番までは会社全体のことを前提にして答え、何番から何番まではチームの状況をイメージして答える」というように決めて、共通認識のもとでサーベイに回答するようにしました。

メンバーとのコミュニケーションについて、特に経営からの情報を伝達するときに心がけるようにしたのが、自分の考えも合わせて伝えることです。通常、上位の方針は示されても、販売促進課の方針までは明文化されません。ですから、「経営がこう言っているから、会社全体としてはこういうふうに動いていくだろう。そうなったとき、販売促進課としてはこうしたほうが良いと思う」というように伝えるようにしました。会社の方針をそのまま伝えるのではなく、「会社の方針を販売促進課としてどう捉えるのか?」という自分の考えも一緒に伝えるのが、意識していたポイントです。

似たようなことですが、メンバーにはできるだけ「裏側の話」もするようにしました。表層に現れた言葉や事象だけを受け止めると、判断を誤ってしまうこともあります。特に販売促進課の業務では、隠れている事象に配慮しながら動くことも重要になってきます。ですから、メンバーには見えにくい、方針や判断の背景も包み隠さずに伝えるようにしました。

終礼や勉強会を始めたのも取り組みの一つです。終礼はちょっとした情報共有の場ですが、コミュニケーションの量と質を向上させるきっかけになればと思って始めました。勉強会は、主に商材についての理解を深める場として、週に1回実施するようにしました。弊社は幅広い商材を取り扱っていることもあり、「現場のことが分からない」というメンバーも少なくありませんでした。現場のことを知るのであれば、人に教えるのが効果的だろうということで、担当者が持ち回りで、自分で学んだことを教えるスタイルの勉強会にしました。勉強会の時間を設けることで商材理解を促すのはもちろん、メンバーに「学ぶ習慣」を身に付けさせたいという狙いもありました

エンゲージメントサーベイは継続して実施していますが、途中でサーベイに対する考え方を変えたのも一つの転機になりました。サーベイを実施すると組織の弱みが抽出されるので、最初の頃は、「弱みをいかに改善していくか」ということに注力していました。ですが、目先の課題にばかり向き合うのが、私も含めて皆だんだんしんどくなってきたんです。サーベイをすれば弱みが出てくるので、克服するためにはこれをしなければいけない。次にまたサーベイをすれば別の弱みが出てくるので、今度はあれをしなければいけない。このような「弱みつぶし」の繰り返しがしんどくなってきたので、あるときから「チームの目的やあるべき姿」の実現を目指すという方向で考えるようにしました。

販売促進課の役割は、営業の売上目標の達成を支援することです。それを大前提に置いたうえで、「どんな項目を伸ばせばいいのか?」と考えるようにしました。弱みを見ないようにしたわけではありませんが、弱みをつぶすことに追われるのではなく、営業の目標達成に貢献するために、どのような組織になるべきかという考え方にシフトしたんです。

もちろん、弱みを一つずつ克服することでも組織は良くなるでしょう。ですが、それ自体が目的になってしまっては、やっていて楽しくないんです。弱みを克服した先の目的や意義に向かうことで、取り組みをしんどいものではなく、おもしろいものにしたかったので、サーベイ実施後のアクションの方向性を変えることにしました。

コミュニケーションの量・質が向上し、組織の底上げにつながった

「組織の変化ともたらされた成果」

吉田氏:会社の方針などの情報を共有することで、個々のメンバーの理想と会社の理想の整合性が取れるようになってきたと感じています。あるメンバーから、「昔に比べると、上の人たちが考えていることが分かるようになった」と言われたこともありましたし、「どうすれば自分が評価されるのかが、何となく分かってきた」という声も届いています。メンバーは、会社の戦略や未来像など、会社全体の情報を求めていたんだなということがよく分かりました。

先ほどお話ししたとおり、サーベイの実施後、あるべき組織像に向けた取り組みに注力するようになってからは、メンバーの姿勢にも変化が現れました。「うちのチームにとってこれは大事だから、もっと伸ばしたほうがいいよね」「そのためには何をしたらいい?」「こういうことをやったらいいんじゃないかな」というようにメンバーの発言量が増え、活発かつポジティブなコミュニケーションが生まれるようになりました。「弱みつぶし」をしている頃に比べると、取り組み自体をみんなが楽しめるようになったと思います。

終礼や勉強会も一定の効果がありました。エンゲージメントが低かった頃に比べると、周囲に声をかけたり情報共有をしたりする心理的なハードルが下がりました。その結果、コミュニケーションの量・質が向上し、「組織の血流」がスムーズになったと感じています。商材に関する情報共有もこまめにおこなわれるようになったため、カタログとWebサイトで載っている情報が違うというような齟齬はほとんど見られなくなりました。メンバー同士がお互いの業務状況を把握できるようになり、助け合いが生まれるようになったのも大きな変化ですね。また、個々の学びが習慣化したこともあり、チーム内で交わされる会話のレベルも高くなりました。

販売促進課には、パートさんも含めて8人のメンバーがいます。自分の考えとして、ポジショントークばかりをするような上司や、威圧感で押していくような上司にはなりたくありませんでした。ですから、一人ひとりのメンバーと視線を合わせて接するようにしてきました。リーダーなら、もっと部下と距離をとって厳しく接していくべきではないかと悩んだこともありましたが、エンゲージメントが高まり、組織の状態も良くなってきたので、今は「話しやすい上司像」みたいなものをつくれてきたのかなと思っています。

全員で点を決める、会社の事業成果に貢献できるチームへ

「今後の展望」

吉田氏:ここ最近はエンゲージメントスコアも高い水準で推移していますので、今やっている取り組みを継続していこうという方針でいます。ただ、販売促進課としては来期以降、全員が何かしら情報発信していくチームにしていきたいと思っています。

販売促進課は大きく、「保守・管理」寄りの仕事をしているメンバーと、「情報発信・集客」寄りの仕事をしているメンバーに分けることができますが、今後、会社の人事評価として、販売促進課はいわゆるバックオフィスとして評価されるのではなく、営業という括りのなかで評価されることが決まっています。保守・管理の仕事は引き続き大事ですが、より情報発信・集客に力を入れていかなければいけません。業務の割り振りなどを見直しながらしっかりとPDCAを回し、全員が協力して点を決められる、会社の事業成果に貢献できるチームにしていきたいなと思います。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
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