事業内容 |
・ICTシステムのコンサルティング、設計、構築、保守、運用サービス ・医療・介護機器、その他の各種機器・装置の設置、保守、修理サービス ・ICTシステム導入時の関連諸工事に関わる設計、構築、施工、監督、請負 など |
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部署の業務内容 |
埼玉県西部エリアにおけるハードウェア保守サービスを中心としたICTサポート業務 |
業種 | 情報・通信・広告 |
企業規模 |
2001名~ |
部署規模 |
11名~30名 |
NECフィールディング株式会社は、ICTシステムのコンサルティングから設計、構築、保守、運用に至るまで、ICTシステムのライフサイクル全領域をカバーしたワンストップサービスを提供する会社で、全国に361箇所(2021年3月末時点)もの拠点を展開しています。川越営業所の所長に就いた菊地氏は、現場の意見・要望が通りにくい現状に対して心苦しさを感じながらも、メンバーには「意見を出し続けること」を求め、現場の意見を上層部にあげ続けました。その結果、現場の意見が採用されるケースが増え、保守サービスのクオリティや顧客満足度が向上。環境変化に対応できる組織のベースができあがっていきました。
「抱えていた課題」
菊地氏:私が川越営業所の所長に就いて最初に思ったのは、営業所がとてもクローズドな状態にある、ということでした。他の営業所など周囲との接点が少なく、外からの情報があまり入ってこない、もしくは遅れて入ってくるといった特殊さを感じました。逆に考えれば、個々のカスタマエンジニア(CE)の能力が高く、周囲に頼らなくても自分たちでできるという側面があったとも言えます。キャリアの長いメンバーが多く、「自分たちで何とかする」という考え方で動いていて、実際にそれができてしまう組織だったのかなと思います。
ただ、3年、4年と経つと、社会の流れもお客様のニーズも変わってきて、「環境変化に対応していかなければ」と考える時期が来ました。私が着任した5年前の業務内容はハード機器の保守がメインでしたが、その頃に比べると明らかに業務の幅は広くなっていました。また、保守業務に求められるスキルも多様化していたので、さらなるスキルの習得やスキルの平準化が大きな課題として突き付けられました。会社全体の方針としても、保守以外の部分でお客様にアプローチしていくことが求められ、やるべきことが増えていたので、所長としては限られた人員でどのように回していこうかという点も頭を悩ませましたね。
以前であれば、方向性が安定しており、メンバーも「これをやっていれば大丈夫」というのがありましたが、環境変化を目の当たりにして、メンバーも「これから、どうしていけばいいんだろう・・・」という不安を感じていたと思います。
また、現場のメンバーからは日常的に意見や要望が出ていたのですが、それを上層部にあげてもなかなか通らないという現状がありました。たとえば、お客様から吸い上げた要望について相談をしても、結局、コストや仕様の問題で「ちょっと無理です」となってしまいます。そういったことが続いていた時期もあり、メンバーからは「要望を出しても無駄」「いくら言っても変わらない」という声も聞こえていました。
「改善のためのアクション」
菊地氏:所長になったのは川越営業所が初めてだったのですが、着任したときは、私がそれまでやってきたことをメンバーにどんどん教えていきたいと思っていました。ですが、その一方で「郷に入りては郷に従え」と言うように、川越営業所がそれまでに築いてきたやり方に私が順応していかなければいけない部分もあるのかなという思いもあり、そのバランスには悩んでいました。ただ、まずは川越営業所のやり方と、メンバー一人ひとりを私が知ることから始めるべきだと思ったのです。
そのために、最初にCEに同行して、一緒にお客様先を回るようにしました。もちろん、お客様へのご挨拶という意味もあるのですが、まずはCEに同行してみて、お客様への接し方など、以前までとの違いや川越営業所のやり方を感じてくることを主な目的にしていました。
1対1で本音を言えるような機会を増やしたのも組織改善のための取り組みの一つで、5年前に着任したときからずっとやってきたことです。一人ひとりのメンバーの意見や思い、愚痴も含めて全部聞く。良い意見も悪い意見も全部聞く。そんな、ぶっちゃけトークの場を設けていました。
その場で意識していたのは、「これってどう思う?」と質問を投げかけて、メンバーが「どう考えたのか?」を把握することです。一人ひとりで、好き・嫌いも違えば、得意・不得意も違うわけじゃないですか。一人ひとりのメンバーの特性を理解して、その特性に合わせて方向性を示してあげたいと思っていました。誰でも「会社から言われたけどやりたくない、でもやらなきゃいけない」っていうことがあると思うんです。そういった部分も含めて把握して、腹落ちさせるというか、納得してもらったうえで仕事を進めてもらうことを意識していました。
先ほどお話しした、現場の意見や要望がなかなか通らないという課題に関しては、正直なところ、私も「たしかにそうだよな」とメンバーに同調するような気持ちもありました。ですが、やはり環境変化が起きている真っ只中で、お客様のニーズに対応しきれないようなケースも出てきていました。そこを何とかしていくためには、たとえば部門間連携を強化したり、会社のルールを変えたりするようなことも必要です。ですから、メンバーには常に「あきらめちゃダメだ」「言い続けなきゃダメだ」という話はしていました。
私も、現場の意見や改善要望、メンバーが期待していることを聞き続けようと思いましたし、聞いたことは必ず文面に残すようにして、私自身もあきらめずに追い続けていました。放置することなく、「今こういう状況だよ」「結果は分からないけど、こういうところまで進んでいるよ」など、経過をフィードバックするようにしていました。もちろん、解決できないことや実現できないこともありますが、そういったことも含めてしっかり情報共有していましたね。
現場の意見・要望を上層部にあげるものの、ばっさり切られてしまうこともありました。それならばと、途中からは、ただ「こうしてほしいです」と求めるだけでなく、「こうすれば、これが実現できるのではないでしょうか?」というように、相手側の目線に立って伝えるように心がけました。一方的に要望を突き付けるだけでは、相手側が実現する方法をイメージできないかもしれません。ですから、相手が動いてくれそうな策や、より実現しやすくなりそうなひと工夫をメンバーと一緒に考えてから、社内の様々な部門が集まる会議にあげるようにしました。
「改善していく中で感じたこと」
菊地氏:メンバーとのコミュニケーションで工夫していたのは、自分の弱音やウィークポイントを隠さないということです。「正直、これ苦手なんだよ」「ちょっと知恵を貸してくれないか」といったイメージです。上司だからといって肩肘を張らず、自分の苦手なことがあれば部下に頼るということもしていました。
もう一つ、コミュニケーションで言えば「感謝の心」です。一人ひとりの仕事や一つひとつの行動に対して「ありがとう」を言ったり、一つひとつのメールに対しても何かしら感謝の言葉を添えて返信したりするのは、私から呼びかけて徹底していたことです。感謝の心を示すことでコミュニケーションって円滑になりますし、本音を言いやすいような関係性ができてきますからね。
「組織の変化ともたらされた成果」
菊地氏:少しずつですが、現場の意見や改善要望が取り入れられるケースが出てくるようになりました。たとえば、シフトのローテーションに関して、あるメンバーから「こうしたほうがいいのでは?」という改善要望が出てきました。そのメンバーはそういった細かなところにも気付いてくれて、その意見が取り入れられたんです。また、社内システムに関しても、川越営業所のあるメンバーの改善要望から全社のシステム改定が進められたりと、次々と現場の意見が反映されるようになりました。
こういった成功体験は、「言い続けていれば、会社を変えていける」という手応えになりましたね。メンバーの中にあった「言っても意味ない」「どうせ無理」といった空気も解消されていったように思います。
顧客満足度で言うと、顧客満足度アンケートにおける「不満の声」がゼロになったのは大きな成果ですね。川越営業所の顧客満足度アンケートは前回比で大きく改善しており、様々な不満が解消されたという結果が出ています。昨年度、上期は5件ほど不満の声があがっていたのですが、下期はゼロになりました。川越営業所の場合、平均的に5件くらいはあったので、ゼロになるのは大きいですよね。部門間連携が進んで、特に営業との連携が強化されて、お客様対応や提供するサービスのクオリティが向上した結果、不満の声が減ったのかなと考えています。「今後の展望」
菊地氏:現場の意見が、もっと組織全体の活動に反映されてほしいですね。ですから、今後も現場の意見をどんどん吸い上げて、どんどん上にあげていこうと思っています。意見が採用されれば、メンバーも自分のやりたいことができたり不満を解決できたりするので、モチベーションも高まるはずです。そういった支援を続けて、メンバーの喜びにつなげられるような組織にしていきたいと思っています
今、環境が変化して、お客様のニーズも昔とは変わり、会社としてもICTの保守だけをやっていれば安心という状況ではなくなってきています。そのため、試行錯誤しながら新しい領域を開拓したり、新しいサービスを作ったりしています。そんな過渡期を生き残っていくためには、現場の意見が重要になってくるはずです。今以上に現場の意見・要望を多く取り入れて、部門間連携に生かしたりサービス改善に生かしたりしていかなければいけません。
そのためには、やはりあきらめないことが大切です。「あきらめずに声をあげ続けていこう」というのは、私がずっとメンバーに言ってきたことであり、今後もその姿勢は変わりません。