事業内容 |
水インフラ関連のコンサルティング事業並びに情報処理システムの開発・販売、人材派遣。建築・土木工事業の請負・施工・監理。 |
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部署の業務内容 |
ポンプ場・処理場の施設に関する設計・計画 |
業種 |
サービス |
企業規模 |
501名~1000名 |
部署規模 |
11名~30名 |
取り組んだ組織課題 |
継承活動 |
約1年間でのエンゲージメント スコアの変遷 |
58.5 ⇨ 66.3 |
メンバーがベテランと若手に偏っており、中堅技術者の育成が大きな課題だった。
コミュニケーションや技術承継に十分な時間を割くことができず、若手が孤立していた。
バディ制を導入し、若手とベテランをタッグにしてプロジェクトにアサインするようにした。
部署間連携を促進するため、各種会議の定着を図るとともに、積極的に東西(東部施設部と西部施設部)の交流をおこなった。
繁忙期でない時期は若手育成に力を入れ、若手自らがテーマを企画する勉強会を開催した。
メンバーが孤立することがなくなり、プロジェクトで疑義が生じた場合も、すぐに相談・打ち合わせができる雰囲気が醸成された。
生産性の向上により組織の作業金額が5~6億円から8億円に増加、売上は昨対比109%増、利益は118%増の見込みとなった。
「抱えていた課題」
宮本氏:私は7年前に、東日本を管轄する東部施設部から西日本を管轄する西部施設部へ異動し、部長に着任しました。当時の西部施設部はメンバーの離職が続いていたこともあり、十分な人員体制とは言い難い状況でした。全体的に業務過多に陥っており、ピリピリした雰囲気で、メンバーは目の前の業務をこなすことに精一杯だったと思います。
西部施設部のメンバーはベテランと若手に偏っており、年齢構成として中間の30代・40代が少なく、「いかに中堅技術者を育てていけるか?」という点が積年の課題でした。しかしながら、コミュニケーションや技術承継に十分な時間を割くことができず、若手が孤立していました。
業務過多のためにコミュニケーションを図る余裕がなかったこともありますし、職場の環境的にもコミュニケーションをとりにくい状況だったと思います。たとえば、打ち合わせ用のテーブルには書類やメンバーの私物が山積みになっており、集まって会議することもできないような状態でした。
また、ベテランのスペシャリストは独力で全部できるため、仕事を一人で完結させてしまう傾向にありました。それが、若手の伸び悩みにつながっていたところもあったと思います。毎年、若手の退職者が出ていたのですが、辞めるときに「将来が見えない」「10年後、自分が今活躍しているベテラン社員のようになれるイメージができない」といった話を耳にすることが多かったことを覚えています。
「改善のためのアクション」
宮本氏:組織改善の出発点になったのは、ある年の部門方針を発表したときです。年に1回、部門の年度方針を発表するのですが、私が着任して3年目のときに結構強めの宣言をしました。
うちの部署は、日水コンの「下水の要」だという自負があり、下水道施設の企画・設計に関する技術・ノウハウは、業界的に見ても非常に希少価値が高いものです。それを承継できないまま、若手が育たずに辞めていってしまうのは、会社の未来だけでなく業界の未来にとって大きな損失になってしまうという危機感がありました。
部門方針を発表したときに、このような私の危機感や「組織を変えなきゃいけない」という真剣さがメンバーにも伝わったのではないかと思っています。大きな方針として「人を増やし、減らさない努力をする」ということを打ち出し、様々な施策をおこなっていきました。
たとえば、受注量の調整です。営業部門が受注しようとするのは当然ですが、我々のキャパシティにも限界があります。品質を保つためにも、何でも受けるのではなく、営業部門と協議しながら先を見据えて受注調整をおこないました。
また、若手の孤立を防ぐために「仕事のやり方を変える」取り組みにも着手しました。その一つがバディ制の導入です。ひとつひとつのプロジェクトに対してメンバーをアサインするのですが、できるだけベテランと若手の2人をタッグにしてアサインするようにしました。
繁忙期でない時期には、中堅技術者を育成するための勉強会にも力を入れました。部内の勉強会だけでなく社外の講習会や現場見学など様々ですが、何を学ぶにせよ、我々が押し付けるのではなく、若手に企画させることを重視していました。主体性をともなわない勉強会では、成長にはつながらないと考えていた為、「どんな技術を習得したいのか?」「どこに現場調査に行きたいのか?」といったことを若手に自ら企画させることを最も大切にしていました。
加えて行ったことは職場環境の改善です。打ち合わせ用のテーブルに山積みされていたものを全部取り払って、55インチの大型モニタを設置し、いつでも会議ができる環境を整えました。そのうえで、課内会議、工種間調整会議、プロジェクト会議など、各種会議の定着を図っていきました。
東西の施設部の交流も新しく始めた取り組みです。東部施設部と西部施設部は、担当エリアが違うだけで業務内容に違いはありません。にもかかわらず、以前はほとんど交流がありませんでした。そこで、「技術研究会」という場を設けて年に数回集まるようにしました。技術研究会では、そのときどきのトピックスや技術的な情報を共有したり、特定のテーマを設定したうえで東西混合のグループを作り、グループディスカッションをしたりしています。
「組織の変化ともたらされた成果」
宮本氏:バディ制を導入したことで、メンバーが孤立することがなくなりました。ベテランは若手に目を向けやすくなりましたし、若手もベテランに相談しやすくなりました。プロジェクトにおいて何らかの疑義が生じた場合でも、すぐに質問や打ち合わせができる雰囲気になったと思います。
ベテランから若手への技術・ノウハウの承継も促されました。技術やノウハウの承継は、やはりOJTがもっとも効果的だと思います。バディ制の導入によって、近くで先輩の仕事を見て、教わりながら覚えていくという好循環が生まれました。
東西の施設部で交流を図ったのも良かったと感じています。例えば、技術的な問題に直面したとき、今までであれば、同じ西部施設部の直属の先輩くらいにしか聞けませんでした。しかし今では、東部施設部のメンバーにも聞くことができます。最近は、リモートも活用して若手同士の交流が生まれるなど、エリアを超えて気軽に相談できる雰囲気ができています。
各種会議を定着させるコミュニケーションインフラ構築の取り組みについても大きな効果が得られました。下水道施設のプロジェクトを進める際は、各部署から様々な専門性を持った技術者を集めてチームを組むのですが、我々事業部はそこで「要」になるべき部署なんです。我々がコミュニケーションをとりやすい環境を整え、会議を主導するようになったことで部門間連携が強化され、プロジェクトが円滑に進むようになりました。
このような取り組みの結果、組織全体の作業効率が改善され、生産性が向上しました。たとえば、私が着任したときの作業金額は5~6億円でしたが、現在は8億円を超えています。組織の人数はほとんど変わっていないので、単純に一人あたりの生産性が上がっているということです。
売上は昨対比で109%増、利益は昨対比で118%増の見込みとなっています。利益率も36.4%から39.4%と3.0ポイント伸びました。生産性が向上したことで時間的にも余裕が生まれ、顧客ともしっかりコミュニケーションを図れるようになり、顧客満足度の向上にもつながっています。
モチベーションクラウドのエンゲージメントスコアも徐々に上がってきています。サーベイは「上司に対する評価」のような側面もありますので、やはり高いスコアが出れば嬉しいですよね。
様々な項目でスコアが出るので分析もしやすいです。たとえば、メンバーが「会社に何を求めているのか?」「何をモチベーションに仕事をしているのか?」といったことも可視化されるのですが、我々の傾向として顕著なのが、「インフラを支えている」という誇りを持った社員が多いことです。世の中への貢献を実感しながら働けているのは、すごく良いことだなと思っています。
「今後の展望」
宮本氏:ここ数年、様々な取り組みによって組織が好転してきたという評価はいただいているのですが、私自身、振り返ってみると保守的だったかなと思うところがあります。「自部署を守る」という姿勢を強めに出していたのですが、一方で、他部署からしたら保守的に映っていたかもしれません。
今後は、下水道施設の「要」になる部署としてリーダーシップを発揮して、もっと攻めた取り組みをして他部署にも好影響を及ぼしていきたいですね。今、インフラは再構築の時を迎えており、事業環境的には追い風です。その追い風に乗って、今後は部署の拡大も図っていきたいと思っています。そうすることで、技術戦略や営業戦略に携わっていく部署にしていくのが長期的な目標です。