事業内容 |
求人メディア事業、キャリアデザイン事業、CSV推進事業。 |
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部署の業務内容 |
既存顧客(クライアント、ユーザー)とのコンタクトセンターかつカスタマーサクセスとしての実行部隊。 |
業種 |
情報・通信・広告 |
企業規模 |
101名~300名 |
部署規模 |
11名~30名 |
取り組んだ組織課題 |
組織風土 |
約1年間でのエンゲージメント スコアの変遷 |
68.8 ⇨ 81.1 |
大規模なシステム改修により顧客からの問い合わせが急増。目の前の対応を優先することで、チーム内の連携が崩れつつあった。組織の各所に「ムリ」「ムラ」「ムダ」が蓄積され、有事に弱いチームになっていた。
チームの業務特性上、対処療法的な業務に陥り、ボトムアップで提案や要望を出すことの優先度が下がっていた。
部署間・階層間でのコミュニケーション経路やプロセスを見直し、役割・立場を超えて連携を強化した。
企画の立案から実行までをメンバーに任せることで「役割リーダー」を育成。対処療法にとどまらない顧客の課題解決方法を考えられるようにした。
マネージャーとメンバーが信頼し合い、意見を出し合って全体最適で動けるチームになった。
メンバーの主体性が育ち、自ら課題解決する姿勢が見られるようになった。問題が起きる前の先回りした動きによって、結果的に一人一人の負荷が軽減した。
売上・社数ともに前年比120%に伸長した。
「抱えていた課題」
武藤氏:私たちの部署は、中途のメンバーを中心に経験豊富なプロフェッショナルが多く、平時であれば問題なく業務を遂行できていました。ですが、2年半ほど前、全社で大規模なシステム改修プロジェクトがあった際に様々な問題に直面しました。
前提として、当チームには「お客様のお問合せの発生とともに業務を行う」という業務特性があります。加えてこの時はプロジェクトの性質上、お客様からのお問合せが平時よりもかなり多く発生したため、ひとりひとりが目の前のお客様対応に精一杯という状況でした。またノウハウを共有する余力もなく、結果として組織の各所に「ムリ」「ムラ」「ムダ」が蓄積され、それがシステムのリリース直前に爆発してしまったんです。
そのときに、「有事に弱いチームだった」ということを痛感しました。自分自身の、マネージャーとしての余裕のなさを省みるとともに、従来のような個々のメンバーの力量に依存したやり方では限界があると感じ、組織の再起動をかけていくことになったという背景があります。
赤羽氏:うちの部署は、お客様の要望を受けることが主な業務になることもあり、「誰かのために」という他者貢献欲求がとても強いチームだと思います。またお客様に対してだけでなく社内においてもそうした姿勢が強く、たとえば、他部署の人に「こうしてほしい」とお願いされたら、それをそのまま受けてしまうことが多く、その結果、自分たちが大変になってしまうという状況もよく見受けられました。もちろん「誰かのために」という姿勢は素敵ですし、うちが大切にしている文化ではありますが、だからといってメンバーが苦しんでしまうのは本意ではありません。
また、「お客様のお問合せの発生とともに業務を行う」というチームの業務特性上、自分の意見を発する前にまず相手の話を聴いて、その問題を解決していくという対処療法的なことを求めざるを得ないことから、自分たち発信で「こうしたい」「ああしたい」という提案や要望を出すことにためらいがちなところもあったのかもしれません。
「改善のためのアクション」
武藤氏:先に申し上げた通り、大規模なシステム改修プロジェクトでチームがつまずいてしまった大きな要因のひとつは、ひとりひとりが業務を抱え込むことの反動で、様々な階層間の意思疎通や共通認識が満足にはかれず「ムリ」「ムラ」「ムダ」が発生していたことでした。そこで、各部門の横の連携や情報共有を密なものにするために、大きなトピックスだけでなく、ライトな課題感などもシェアできる場をつくりました。マネジャー同士、リーダー同士、メンバー同士など、部署をまたいだ連携を強化して、粒度の細かいコミュニケーションを促したのがアクションの一つです。
同時に、部署内でも朝礼や定例ミーティングなどの会議体を見直しました。何となくコミュニケーションの量だけを増やすのではなく、「なぜその会議をするのか?」「どこに、どのような情報が足りていないのか?」といったことを明確にして、会議を再設計しました。
また、マネージャーとしてメンバーの想いを拾い切れなかったこと、そもそものコミュニケーションの質量が足らなかったことの改善策として、まず、朝会は「今日一日を気持ち良く頑張ろう」というフランクなものにしました。加えて、全体で事業に関する話をする定例会議を設けたり、全体では話しづらいようなことをフラットに話せる1on1を散りばめたりと、目的に応じた場づくりをきめ細かく設計し、実施しました。
赤羽氏:私は、武藤とは少し異なる立場から、お客様とチーム全体の両方のことを考えた時に判断軸が曖昧にならないように、会社としての判断軸や本質論をメンバーに伝えていきました。
たとえば、チームの中で「営業時間中は電話を受けるのが何よりも優先」といった固定観念があったとします。たしかに顧客対応は重要ですが、メンバー全員に同じ粒度で情報が共有されていることで、より良い顧客対応ができるという側面もあります。ですから、たとえば日中に時間を削って情報共有の場を設けることも長期的に見たら、自分たちだけでなく、お客様にとっても重要な取り組みになるはずです。
このような判断ができるように、「私たちの部署は、会社の中でどのようなミッションを担っているのか?」「自分たちには、どのような存在意義があるのか?」など、できるだけ全体感を意識できるような落とし込みをしました。
武藤氏:赤羽が言ったように、メンバーに理念やミッションを伝えていくタイミングがありました。理想は全員で同じ未来に向かうことですが、当然共感するメンバーもいれば、そうでないメンバーもいます。ですが、お互いにとって何がベストかを議論し、すり合わせていった過程こそが、変革期のチームにとって必要だったと思います。
もちろん、当事者としてはしんどい思いもしましたが、メンバーを信頼して向き合い、本質的な議論を重ねてきたことが、結果的に自部署が社内の結節点になるようなチーム創りにつながったと感じています。
赤羽氏:仕事におけるメンバーのやりたいことや要望を吸い上げたのも、取り組んだことの一つです。日ごろお客様と最前線で接しているメンバーからの意見には、会社のサービスをより良くするためのヒントやきっかけが沢山詰まっています。そのため、どんなに小さなことでも、「こうしたい」「ここを改善したい」と思っていることがあれば、出してもらいました。とはいえ、取り組めないことや解決できない問題もあります。そのような問題に関しては、理由をきちんと伝えるようにしていました。
武藤氏:これまで、ボトムアップでメンバーから声があがってこなかったのは、「自分が意見を言っていいのか分からない」「改善自体のやり方が分からない」ということも大きかったと思います。ですから、改善点について自分で解決するためのプロセスを示すようにしました。
赤羽氏:意見の中には、私たちから見て「それ、やればいいじゃん」という要望もたくさんありました。ですから、まず「自分たちでやっていいんだよ」ということを伝えました。そのうえで、「こういうやり方もあるよ」「こうやったらできるんじゃない」などとサポートすることで、メンバーが主体的に解決できるように関わっていきました。
武藤氏:加えて、自ら施策を考えることでより主体性が生まれ、リーダーシップの種を育てていけると考えていたので、メンバーによる施策の企画・実行を支援しました。そこには、以前のようにマネジャーがメンバーに施策を落とす構図ではなく、メンバー自身に施策の企画・実行を任せることで、役職ではなく「役割リーダー」を育成したいという狙いがありました。
「組織の変化ともたらされた成果」
武藤氏:メンバー間のコミュニケーションの質量が増えたことで共通認識や共通の判断軸が芽生え、それによってチーム内での「ムリ」「ムラ」「ムダ」は格段に減りました。また、「自分たちも意見を言っていいんだ」という雰囲気が自然と生まれ、メンバーの主体性が育ってきたのは一つの大きな成果だと思っています。自分からどんどん声をあげていこうという姿勢が見られるようになりました。
みんな、より当事者意識を持って仕事に向き合えるようになったと思います。コミュニケーション一つを見ても、以前のように「誰々がこう言っていたから」といった伝書鳩のようなコミュニケーションはなくなりましたね。
赤羽氏:これまでは自分のこと、目の前のお客様のことで一杯いっぱいだったメンバーがチームのことを考えるようになり、自部署のことしか考えられなかったメンバーが他部署のことを考えるようになり、さらに会社の目線も持てるようになってきたりと、ひとりひとりの視野の広がりを日々実感しています。このような変化を見ると、純粋に嬉しいなと思いますね。そして、前職での成功体験に寄りかからずに、マネージャーとして強いチーム創りに挑み続ける武藤にも、より頼もしさを感じています。
チームの収穫としては、多くのメンバーが「先を見られるようになったこと」も大きいですね。今は、1年後、2年後を見据えて、みんなでスキルを高めていくような取り組みもしています。目線が長期に向くメンバーが増えたのは、組織として非常に心強いことだと思っています。
武藤氏:一昨年からのコロナ禍は、もちろん美容・ヘルスケア業界への影響も大きく、特に2020年春頃にはお客様からのお問い合わせが急増し、我々の部署も対応に追われました。
これは、先ほどお話しした大規模なシステム改修プロジェクトと同じくらいの有事でしたが、自部署だけではなく、他部署と連携し何とか乗り越えることができました。予期せぬ大きな有事を乗り越えることができたのは、組織改善の取り組みやプロセスを経て、チームがたくましくなっていたおかげだと思います。
事業面での成果としては、売上・社数ともに前年比120%で伸長し、月平均の売上も右肩上がりで推移しています。
モチベーションクラウドのエンゲージメントスコアも60点台から80点台へと伸びており、メンバーもこの1年で11名から16名に増えましたが、退職者は一人も出ませんでした。
サーベイをおこなうときはいつもメンバーに、「会社の健康診断だから悪いところがあるのはネガティブなことではなく、それが分かることが重要なんだ」と伝えています。「大丈夫だろう」ではなく、「今、組織がどういう状態なのか?」を都度確認し、項目ごとに「様子見にするのか、改善に取り組むのか」の判断基準として活用しています。
「今後の展望」
武藤氏:チーム再構築のきっかけは有事でしたが、一番成長させてもらえたのは、実はマネージャーを務める自分自身だったかもしれません。メンバーに、それを気付かせてもらいました。そして、今まさに、「変化に対応し続けられるチームづくり」をテーマに取り組みを進めているところです。環境変化や有事は意図しないところで起きますが、どんな変化が起きたときでも、自分たちが大切にしている価値観や想いを提供し続けられるチームでありたいと思っています。
営業やマーケ等の他部署とも連携を深め、一気通貫で「カスタマーサクセス」の体制を形にしてお客様の声をプロダクトにより活かしたいという想いもあります。ですから、今後も変化に強い組織づくりに注力していきます。
赤羽氏:CS・CGチームのメンバーには、もともと「お客様の気持ちに寄り添える」「ひとりひとりが責任をもって業務を遂行する」といった、素晴らしい長所があります。こういった長所を活かしつつ、さらに期待するならば、自分視点からチーム視点、チーム視点から全社視点、最終的に経営視点を持てるくらいに視野を広げ、視座を高めていってほしいです。そうすればよりお客様に寄り添えるチーム、より良いサービスを提供できるチームになると信じています。