事業内容 |
■ 株式会社西武ホールディングス - グループ全体の経営戦略策定、グループ事業会社の経営管理、グループ全体の資金管理・調達、グループ全体の広報、グループコンプライアンスの推進 ■ 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド - ホテル・レジャー事業 |
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業種 | 物流・運輸 |
企業規模 |
2001名~ |
導入規模 | 2001名~ |
新たな西武グループ人財戦略の一つである「働きがいのある組織」実現のために、エンゲージメントの向上が不可欠だった。
グループ全体で統一された指標をもとに、エンゲージメントの向上に取り組みたかった。
導入企業が多いエンゲージメントサーベイを活用し、世の中の水準や他社と比較しながらエンゲージメント向上を図りたかった。
サーベイの結果が分かりやすくアウトプットされるので仮説が立てやすく、スムーズに効果的な改善策を講じることができるようになった。
モチベーションクラウド上でアクションプランの進捗を確認・管理できるため、改善活動を効率的に進めることができ、結果として、グループ全体でエンゲージメントスコアが向上した。
各職場で「働きがいを高めよう」という気運が生まれ、「どうすれば自分の職場を良くできるのか?」ということを本気で考えるようになった。
「会社および事業の概要」
西武ホールディングス(以下、西武HD) 石橋氏:西武ホールディングスは純粋持株会社で、国内外合わせて80超のグループ会社を取りまとめています。不動産、ホテル、鉄道など、事業内容が異なる様々な事業会社でグループを形成しているのが大きな特徴ですが、こうしたグループ会社を同じ方向に導いていくのが我々ホールディングスの役割であると認識しています。
西武・プリンスホテルズワールドワイド(以下、SPW) 大森氏:当社は、100年超の長い歴史を持つ業界最大規模のホテルチェーンであると自負しております。国内に60、海外に26(2025年2月現在)のホテルを展開するだけでなく、レジャー・スポーツ・アミューズメント施設も数多く運営しております。
当社は、コロナ禍前は、土地、建物の保有からホテルオペレーション(運営)まで、すべてを手掛けていましたが、2022年より、ホテルのオペレーションに特化した会社に生まれ変わり、商号も「西武・プリンスホテルズワールドワイド」に変わりました。「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン」の構築を経営戦略に掲げ、西武ホールディングスと一緒に取り組みを進めています。
「エンゲージメント向上に取り組む背景」
西武HD 町田氏:当社は、お客さまに「でかける」という価値を提供するグループですが、コロナ禍によって大幅に需要が減少しました。その危機を乗り越えるべく、鉄道は鉄道、ホテルはホテル、不動産は不動産というように、事業を明確に切り分ける組織再編をおこないました。組織再編によって各事業会社の専門性が高まることから、各事業の専門人財が必要になり、経営戦略と紐づける形で新たな西武グループ人財戦略を打ち出しました。
西武HD 石橋氏:新たな西武グループ人財戦略には、「人財スキル・人員数の確保」「働きがいのある組織」「組織の成長」という3つの柱があります。まず、個人の能力を伸ばすことが重要になりますが、その伸ばした能力を最大限に発揮するために欠かせないのがエンゲージメントです。エンゲージメントが高く、働きがいを感じながら仕事をしている従業員は、本来持っている能力以上のパフォーマンスを発揮できることがあります。そして、そのような個人が集まって組織になったときに、1+1が2以上の力になると考えています。このような組織を目指すための人財戦略になっており、エンゲージメント向上は特に2つ目の柱である「働きがいのある組織」を実現するものであると捉えています。
「エンゲージメントスコアの開示について」
西武HD 町田氏:当社は、統合報告書などでエンゲージメントスコアの推移や目標値を開示(※)しています。これまで、「実際のところ、どれくらい働きがいのある会社なのか?」という点は、人それぞれ認識が違っていました。働きがいやエンゲージメントを可視化するためにモチベーションクラウドを導入したわけですが、可視化して終わりではなく、いかに働きがいを高めていくかが大事です。
※株式会社西武ホールディングス「統合報告書2024」 46ページ
エンゲージメントを可視化できたのであれば、それを、投資家や沿線にお住まいの方々など、社外のステークホルダーの皆さまに開示することでコミットしたいという思いがありました。開示することで責任が生まれ、取り組みを一層推進していけるだろうと考えています。
西武HD 石橋氏:社外のステークホルダーはもちろんですが、忘れてはいけない大事なステークホルダーが従業員です。そのため、エンゲージメントスコアは社内向けにも開示して、説明をしています。これは、働きがいのある組織づくりのために「もう後戻りしない」という意思表示であり、従業員との約束でもあります。
「モチベーションクラウドを選んだ理由」
西武HD 町田氏:モチベーションクラウドは数多くの企業が導入しているサービスであり、世間一般や他社のスコアと比較がしやすく、指標として魅力的でした。また、単にサーベイを実施するだけでなく、その後のフォロー体制もしっかりしています。伴走サポートに期待できたことも、大きな決め手の一つになりました。
初年度は、グループの中でも中核をなしている西武ホールディングス、西武鉄道、西武・プリンスホテルズワールドワイド、西武リアルティソリューションズ(現・西武不動産) の4社に導入しました。2年目からは、国内グループ会社全社に導入しています。
SPW 大森氏:モチベーションクラウドの導入を聞いたときは、西武ホールディングスを筆頭に、グループ会社全体でエンゲージメント向上に取り組めることに、大きな意味があると感じました。取り組みを進める中で他のグループ会社がどのような施策を講じ、どのようなプロセスで改善を進めているのかなど、情報共有できるのは大きなメリットです。
当社は全国各地に多くの事業所がありますが、事業所同士でお互いに良いところ・改善すべきところを共有できますし、我々本社も各事業所を俯瞰しながら必要な支援をすることができます。効果的に改善活動を進められるのではないかと、期待を持つことができました。
「サーベイを実施して見えた課題」
西武HD 石橋氏:西武ホールディングスに関しては、縦・横の意思疎通に弱みがあることが分かりました。部長と課長、あるいは課長と課長補佐など、階層間の連携が希薄であり、部をまたがる横の意思疎通も弱いことが明らかになりました。
SPW 川﨑氏:当社は、上司の部下に対する業務支援や、会社としての知名度、業界内での影響力などが強みになっていることが分かりました。一方で、IT環境や就労環境などの業務環境や、評価の妥当性などは弱みになっていました。階層別に見ると、管理職や支配人以上のエンゲージメントは高かった一方で、20代後半や30代などの中堅層はエンゲージメントが低い傾向にありました。
「エンゲージメント向上の取り組み」
西武HD 町田氏:年に1回、モチベーションクラウドのサーベイを実施しているのですが、その結果は、全国のグループ会社を1社ずつ回って、各社の社長および人事部門にフィードバックしています。そのうえで、グループ全体として働きがいを高めるため、改善の取り組みをお願いしています。
改善の取り組みは、職場ごとの取り組みと会社全体の取り組みに分けており、会社全体の取り組みは、縦・横の連携強化に力を入れました。サーベイでは、戦略・目標への納得感が低いことが分かりましたが、これはインナーコミュニケーションが不十分だったことに起因していると考えられます。そのため、社長を含む経営陣が従業員と対話をする「タウンホールミーティング」を開催しました。手挙げ制で約130人の従業員が参加しています。加えて、社長と少人数の従業員の座談会も始めました。これは、社長と10人弱の従業員が1時間ほど意見交換をする場で、2024年度は計6回実施しました。
また、「隣の部署のことがよく分からない」という課題もあったため、手挙げ制の「社内インターンシップ」を開始しました。たとえば、経営企画の従業員から「人事の仕事をやってみたい」という希望があれば、1ヶ月間、週2~3日、人事部に行って人事の仕事を経験してもらいます。個人のキャリアビジョンを描くうえでも、重要な取り組みだと思います。
SPW 川﨑氏:当社も、サーベイ実施後に「結果報告会」をおこないました。各事業所に個別にサーベイの結果をフィードバックし、支配人や管理職と一緒に結果を読み解いていきました。その後の取り組みは各事業所に任せており、アクションプランの立案・実行など、その経過をモチベーションクラウド上に入力してもらっています。
SPW 山田氏:事業所のトップが「エンゲージメントを向上しよう」と言うだけでは組織改善につながりません。そこで当社では、総支配人に「自事業所の従業員にどうなってほしいのか?」という「在るべき人財像」を定めてもらいました。これによって、「在るべき人財像に近付くためには、このような施策が必要なのではないか?」というように、各事業所での施策に紐づけています。
SPW 川﨑氏:今年度からは、エンゲージメントが低かった事業所に対して「集中改善プログラム」を実施しています。はじめに、総支配人・各部門の支配人と一緒にサーベイの結果を振り返り、改善のためのアクションプランを考えてもらいます。その後、アクションプランを現場の従業員に共有し、従業員の意見も交えてブラッシュアップし、実行に移すという段取りで進めています。
「取り組みの成果」
西武HD 町田氏:初回のサーベイに比べ、エンゲージメントスコアが上がりました。グループ4社の平均で1.7上がっています。西武鉄道の話になりますが、エンゲージメントを上げるためのアクションプランを考える会を企画し、手挙げ制で参加者を募りました。すると、本社だけでなく駅や乗務所などの職場長が手を挙げてその会に参加してくれました。各現場で「働きがいを高めよう」という気持ちが出てきているのは、大きな成果だと言えるのではないでしょうか。特に、西武鉄道はあまりスコアが上がらなかったので、「本気で取り組まなければ」というような危機感が生まれたのかもしれません。「どうすれば自分の職場を良くできるのか?」ということを本気で考え始めたのは、大きな変化だと思います。
SPW 川﨑氏:当社は、エンゲージメントスコアが2.6ほど上昇しました。変化を感じるのは、事業所と会話をするときに、「エンゲージメント」がキーワードになってきたことです。他の人事施策に取り組むときも、「こうすればエンゲージメントの向上につながるのでは?」というように、エンゲージメントという言葉が浸透しつつあるのを感じています。
また、リンクアンドモチベーションが開催しているモチベーションチームアワードでは、今回、「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」が優秀賞に選出されました。同ホテルは、事業所内で従業員自身が講師になって、他の従業員に自分の専門分野を教える講座など、様々な角度からオリジナリティーのある施策をおこなっていました。こうした施策によるエンゲージメント向上が評価されて、今回の受賞に至りました。このような成功事例をうまく横展開して、広めていきたいと思っています。
西武HD 石橋氏:モチベーションチームアワードは、西武ホールディングスにおいても4部署が入選しました。受賞が決まったとき、私はたまたま受賞した部署のメンバーと打ち合わせをしていたのですが、皆がものすごく喜んでいたのが印象的でした。初めての取り組みだったので、「自分たちがやっていることは正しいのだろうか?」といった不安もあったと思います。エンゲージメントスコアが上がって、「間違っていなかったんだ」という手応えが得られただけでなく、さらにアワード受賞の一報も届きました。数多くの企業のなかでも、自分たちの取り組みが優れた取り組みとして認められたことで、喜びが何倍にもなったのが伝わってきました。
「モチベーションクラウドの価値」
西武HD 町田氏:単にサーベイを実施するだけでなく、その結果が分かりやすくアウトプットされ、なおかつアクションプランの進捗も確認・管理できるのがモチベーションクラウドの大きな価値だと思います。加えて、膨大なデータを裏付けとしたコンサルティングで、改善活動をサポートしてもらえるのも大きいですね。
SPW 川﨑氏:サーベイの結果がマトリクスの4象限で示され、4色になっているのが非常に分かりやすいです。我々ヒューマンキャピタル部は、各所にサーベイの結果を伝える機会が多いのですが、誰が見ても分かりやすいアウトプットになっているので助かっています。強みも弱みもひと目で分かるので仮説が立てやすく、「おそらくここに原因があるから、こういう施策が有効だろう」というように、スムーズにアクションにつなげることができています。
コンサルタントの方々には常に寄り添っていただいており、当社の特徴に沿ったご提案をいただけるので、事業所の従業員も受け入れやすいのだろうと思います。
「今後の展望」
西武HD 石橋氏:冒頭で申し上げたとおり、当社の人財戦略は3本柱になっており、当然3つとも実行する必要がありますが、なかでもエンゲージメントは肝になると考えています。当社は、グループ全社でエンゲージメント・レーティングが「Aレーティング」になるという目標を掲げ、統合報告書でも開示しています。この目標に向かって、誰一人取り残すことなく、後戻りすることなく、邁進していきたいと思っています。
SPW 大森氏:初回のサーベイでは、結果を見て愕然とした部分もありましたが、リンクアンドモチベーション社に様々なご支援をいただき、エンゲージメントを高めることができました。ただ、油断しているとまた元に戻ってしまう可能性もあります。この2年間、取り組んできたノウハウを生かし、各事業所と密なコミュニケーションを図り、引き続き、エンゲージメントの向上に努めていきたいと思います。