林有理/1980年生まれ、大阪府出身。慶応義塾大学総合政策学部卒業後、2003年、リクルート入社。2007年より『スーモマガジン』編集に携わり、不動産情報の提供に従事。2011年1月より住宅情報誌『スーモマガジン』編集長へ。住まい研究所(旧リクルート住宅総研)主任研究員兼務。まちづくり分野のフィールドワーク、講演、研究活動に携わるなかで「当事者として、まちづくりに参画したい」という志のもと、2017年10月1日、四條畷市×エン・ジャパンの公募プロジェクトを通じ、大阪府四條畷市初の女性副市長に着任。2歳の娘の子育てと市政の業務を並行する、ワーキングママ。
「どのような組織なのか」
大阪府・四條畷(しじょうなわて)市は、人口およそ5.6万人ほどのコンパクトな街ですが、その行政機能を担う私たち四條畷市役所は、全国や大阪府内でも初となる取り組みを行ってきました。
■四條畷市公式LINE@活用(道路の損傷を市へ通報、その後の対応をHPで確認できる)
■市役所窓口でのQRコード決済
■公民連携による、子どもの見守りサービスの導入
■自治体のネット番組配信
■市民協働の新たな形として『なわてオクトーバーフェスト』『コーヒーフェス』などの開催
■子育てマップの作成&配布(その店舗を利用しなくても、ミルクのお湯がもらえたり、オムツ交換ができたりするところがわかる)
■住民票のオンライン請求
加えて、受動喫煙防止条例(道路全面禁煙)制定、その他都市整備なども進めています。これらの取り組みは東市長が着任した2017年から少しずつ進めてきたものです。そういった取り組みなどを通じて、もともと減少が進んでいた四條畷市の人口は2018年に11年ぶりの転入増となりました。
「モチベーションクラウド導入の背景」
私は元々リクルートで『スーモマガジン』という媒体の編集長をやっていました。全国展開で、不動産とか住宅などの地域情報をまとめあげた雑誌です。この雑誌を通して、地域の町づくりに貢献したいという想いで取り組んでいました。
ただ、当時は地方の空き家問題などが顕在化してきた頃で、『スーモマガジン』の仕事で全国の地域を見る中で、人口が減り続ける街、維持できる街、それぞれに何か大切な要素や法則性があることに気付いたんです。
それがきっかけとなり「当事者として、まちづくりに参画したい」という志のもと、2017年10月に、四條畷市の公募プロジェクトを通じ、大阪府四條畷市初の女性副市長として着任させていただきました。
副市長に着任して当初、現状を把握するために職員の皆さんにヒアリングをしていたのですが、多くの職員が、日々の業務の煩雑さや非効率性を指摘し、独自の施策の追求や真の課題解決に時間を割きづらいと答えました。
しかし、私はそれが本当に問題なのだろうかと思いました。というのも、そもそもそれを語るマネジメント職の方にどことなく覇気がなく、つられるように職員の方々も疲弊して元気がないように感じたのです。
その中で、東市長が目指す「日本一前向きな市役所」をどう実現するかという議論を重ねるうちに、やはり組織状態を定量的に調査することが何よりも重要だという話になったんです。
そこで、組織改善サービスとして有名だったモチベーションクラウドに問い合わせをして、最終的に導入を決めました。
役所である私たちが、モチベーションクラウドの導入に際して気を付けたのは、職員がその必要性をしっかり理解してくれるか、という点です。私たちの予算は市民の皆様の税金であり、そのすべてを市民の皆様の生活をより良いものにするために使わなくてはなりません。
市民の皆様の生活をより良いものにするためには、まず自分たちから変わり、東市長の掲げる「日本一前向きな市役所」になることが大事、そしてそのためには組織の状態を可視化して改善していくことが不可欠なのだと、部長陣には私から、職員全般には人事から丁寧に説明しました。その点はやはり前例がなかったので、苦労した点ですね。
「モチベーションクラウドの価値」
モチベーションクラウドを導入したのは2018年の12月でしたが、順調に滑り出したと思っています。実際にモチベーションクラウドを使わせていただいた今、感じている価値としては2つあります。
1つ目は、組織の状態や課題が可視化されたことで、特にマネジメントレイヤーの方に対して建設的な議論ができるようになったことです。今までは正直、かなり感覚的に話しているところが大きかったのですが、今は明確です。
◯◯さんはどの項目を課題として、どんな施策を行って、その進捗は◯◯で…という話を月1の面談の中でできるようになってきました。
現在では、部長級の査定に組織のエンゲージメントスコア (※モチベーションクラウドのデータベースから算出した、組織状態を表す数値) を指標として取り入れている人もいるのですが、「新しい課長が就任して組織全体のスコアが下がったのは、理念の共有という項目の数値が下がっているからなんじゃないか」という話ができたりしていて、議論がすごく前に進むようになったと感じています。
2つ目は、何よりも組織変革のパートナーとしての心強さですね。例えば、私たちの組織で何かクリティカルな課題がわかったとして、それを他はどんなやり方で乗り越えているのか、リンクアンドモチベーションさんに聞くと、すぐに色々な事例やアドバイスを教えてくださるんです。
20年間コンサルティングの事業を行ってきているからこその、常に横に伴走してくださる、組織変革のパートナーとしての価値を感じています。
「モチベーションクラウドで感じた手応え」
直近では部長級のスコアを上げることができ、手応えを特に感じています。モチベーションクラウドを導入した当初は、今よりも部長級のスコアがずっと低くて。組織を変えようとするなら、まずはこの部長級の方々を巻き込んでいかなければと思いました。
実際にやったこととしては、いきなりですが「私たちは13人の経営ボードだ」と宣言して、定期的に打合せを持つようにしました。とにかくその人たちとまずは一体感を持ちたくて。各部がやっている案件を一覧化してもらい、進捗確認会をやり始めました。
私が元々いたリクルートでは、「ヨミ会」という名で伝統的に進捗確認会をやってきたので私としては当然のことだったのですが、本市としては初めての試みだったようです。
それまで、人に進捗確認されるっていうことはなかったみたいで戸惑いもあったようですが、やってみたことで隣の部が何をしているか初めて知ったという声や、助け合うことができたという話も出てきて、結果として全体で一体感を生むことができました。とても良い結果を生むことができました。
少しずつ内容は変えながら、今も隔週で一回1時間、月前半の回は進捗管理、月後半の回は部長級メンバーで市全体の課題などを話し合う場を設けています。
「今後目指したい組織像」
職員の皆さんが四條畷市役所に勤めていることを心から誇りに思える、そんな組織にしたいというのが今の私の目標です。
市役所の仕事は、市民の皆様からお褒めの言葉をいただくことがある一方で、実はその何倍も苦しかったり辛い仕事があります。また、国の決め事で大きくやるべき仕事が変わるなど、自分たちの意志と関係なく物事が決まってしまう感覚があったりするんです。
そんな色々なことを複雑に抱える中では、四條畷という街を自分たちが良くするんだという志をしっかり持って仕事に向き合ってほしいなと思っています。その中で、リンクアンドモチベーションさんやモチベーションクラウドには、横に並走していただけるパートナーとしての役割を強く期待したいと思います。