事業内容 |
国内外における土木・建築事業、開発事業、エンジニアリング事業、エネルギー・環境分野など |
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業種 | 建設・不動産 |
企業規模 |
2001名~ |
導入規模 | 2001名〜 |
社員の声が「期待度」「満足度」という視点から数値化され、経営層やマネージャー層が納得感を持って結果を受け止めることができた。
マネージャー層が組織の状態や課題を強く意識するようになり、各部署が主体的に改善活動に取り組むようになった。
他社や自社平均との比較によって、会社全体や組織ごとの課題が明確になり、共通の課題認識を持てるようになった。
「事業および部署の概要」
大塚氏:大成建設は、2023年に創業150年を迎える総合建設会社です。1873年の創業以来、日本の近代化や戦後の復興、経済成長、グローバル化といった社会の変化とともに、日本全国、また世界各地で、数多くの「地図に残る仕事。」を手がけてきました。「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念を掲げ、自然と調和した、次世代の夢と希望に溢れた社会づくりに取り組んでいます。
私たちは人事部門として、人材採用や人員配置、人事制度の策定・運用、労務管理などをおこなっています。一人ひとりの社員が高いモチベーションを持ち、働きがいや働きやすさを感じて働けるような環境をつくるとともに、個々の能力を最大化させることで組織の活性化を図り、会社を成長させていくことが私たちの役割です。
昨今は特に、土木・建築の技術者の確保が難しくなっています。優秀な人材をいかに確保していけるかが、これからの私たちにとって大きな課題であると認識しています。
「モチベーションクラウド導入の背景」
武本氏:弊社は、中長期的に目指す姿として「TAISEI VISION 2030」を定め、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを重点課題とし、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。このビジョンに向かうにはさらなる生産性の向上が不可欠であり、そのためには、一人ひとりの社員がエンゲージメントの高い状態で働いていることが重要です。
建設業界は、2024年問題 (※) が目前に迫っています。2024年の労働時間上限規制が控えるなか、生産性向上は避けて通れない課題です。この壁を越えていくためにも、エンゲージメントは重要なエンジンになるものだと考えています。
※ 「働き方改革関連法」が適用開始される2024年4月までに建設業界が解決しなければならない労働環境問題のこと。
まずは、社員のエンゲージメント状態を定期的に診断していく必要があると考え、今回モチベーションクラウドの導入に至りました。
「モチベーションクラウドを選んだ理由」
大塚氏:モチベーションクラウドは、社員のエンゲージメントがどのような状態にあるかを客観的なデータで把握することができます。エンゲージメントサーベイの結果を様々な角度から分析することで、組織課題の改善施策を効率的・継続的に実施できると考え、導入を決めました。
また昨今は、人的資本をはじめ、非財務情報開示の重要性が増していますが、モチベーションクラウドは指標の開示や、指標数値の向上にもつながるものと考えました。
武本氏:他のツールとも比較しましたが、モチベーションクラウドが良いなと思ったポイントが大きく4つあります。
第一に、エンゲージメントに対する考え方が弊社と合致しており、共感できたことです。弊社では、エンゲージメントを「会社と社員の相互理解・相思相愛の度合い(社員が会社を信頼し、目指す姿の達成に向けて自発的・主体的に貢献する意欲を持つという関係)」であると定義しています。これが、モチベーションクラウドの考え方と合致していたということです。リンクアンドモチベーション社が出している本もいくつか読みましたが、サービスの根底にある組織に対する考え方にも納得できました (※) 。
※ ご参考:リンクアンドモチベーションの基幹技術「モチベーションエンジニアリング」について
2つ目が、「期待」と「満足」という2つの軸で組織状態を測っていくところです (※) 。これまで弊社がおこなっていた従業員満足度調査は、満足度だけを測定するものでした。これでは、社員が会社に何を期待しているのか分からないので、施策を講じても効果が得られないおそれがあります。その点、モチベーションクラウドは、社員の会社に対する「期待度」と「満足度」の乖離を可視化することができるので、より効果的な施策を講じていけると考えました。
※ ご参考:モチベーションクラウド「サービス内容」について
3つ目が、データベースの多さです。リンクアンドモチベーション社は、エンゲージメントの領域で国内最大手の企業だけあって膨大なデータベースをお持ちです。それゆえ、エンゲージメントスコアを他社と比較することもできますし、データの信頼性もあります。また、他社の好事例を参考にすることもできます。
4つ目が、サーベイツールの提供だけで終わらず、エンゲージメント向上に向けた改善活動をサポートしていただけることです。リンクアンドモチベーション社は単なるベンダーではなく、コンサルティング会社として組織変革の実績が豊富なので、それも決め手の一つになりました。
「最初のサーベイを実施してみて」
大塚氏:私はサーベイの結果を見たとき、弊社の実態をよく表しており、信憑性が高いデータだと感じました。全体として「思っていたとおり」という感想が大半でしたが、一部からは「そうだったのか」というように、表面化していなかった課題が抽出されることもありました。うまくいっていると思っていた組織のスコアが良くなかったり、その逆もあったりしましたが、いずれにしても、課題が明確になり、改善の必要性を認識できたのは良かったですね。
武本氏:建設業に共通する特色ですが、全社員の半分ほどは工事現場に配属されています。工事現場は小規模な組織がたくさんあって、なおかつ働く場所が有期的かつ異動的で、組織の変動が激しいのが特徴です。
同じオフィスにいれば、極端な話、ひと回りすれば組織状態が何となく分かるかもしれませんが、工事現場は本支店から地理的に離れていますし環境も違いますし、組織状態やそこで働く社員が何を感じているのかはどうしても見えません。しかし、今回のサーベイで初めて現場のことをスコアで把握することができました。この点にも、大きな意義を感じています。
大塚氏:会社全体のエンゲージメント状態は決して良いとはいえず、本支店の各部署、作業所ごとにエンゲージメント状態に大きなバラつきがあることが分かりました。また、「会社基盤」に関する項目の満足度は高いものの、「組織風土」や「人的資源」は期待度と満足度の差が大きく、エンゲージメント向上に向けた課題であることが分かりました。
相対的にエンゲージメントスコアが低い組織は、特に「上司満足度」が低い傾向があることが見て取れましたし、逆にエンゲージメントスコアが高い組織は、上司が部下と積極的に対話をしていることが把握できました。
このように組織ごとに結果が数値化され、自社平均との比較や他社との比較ができるので、非常に分かりやすく分析しやすいツールだと感じました。また、社員の期待度が分かるので課題に優先順位を付けやすく、具体的な改善活動に着手しやすいのも良いところだと思っています。
「モチベーションクラウドの価値」
大塚氏:社員の声が、「期待度」「満足度」という視点から数値化され、経営層やマネージャー層に伝わったので、想像していた以上の気付きが得られました。また、上司に対する期待度・満足度から、マネージャー自身が「自分のマネジメントについて部下がどう思っているのか」を把握できたのは大きかったと思います。
サーベイを実施してから、マネージャー層は、組織の状態や課題を強く意識するようになりました。初回のサーベイの結果を受けて、部署ごとに具体的な改善活動を進めていますが、次回のサーベイでまた結果が数値として明確に出てきます。ですから、自然と数値を改善したいという気持ちになり、主体的に改善活動に取り組めているのだと思います。
平田氏:私は、モチベーションクラウドのカスタム集計の機能をよく使っています。組織ごとにデータを確認したら、次は階層別で見たり年齢層別で見たり、様々な切り口で見ています。事務系と建築・土木では傾向が違いますし、内勤と外勤でも違います。いろんな角度・属性で分析することで課題が見えてくるので、そこはすごく良いところだと思います。しかも集計が早く、すぐに結果が出てくるので助かっています。
武本氏:リンクアンドモチベーション社のサポート体制も大きな価値だと思っています。コンサルタントの方が豊富な経験とデータに基づいて改善活動を提案・支援してくれるので、心強い限りです。また、経営層に対して忖度することなく、客観的に分析結果を示してくれるのもありがたいですね。社内の人間だけではなかなか気付けないこともありますので、今後もリンクアンドモチベーション社の具体的かつ的確なアドバイスには期待しています。
「サーベイ実施後のフィードバックについて」
武本氏:サーベイの結果が出た後、各所でフィードバックの説明会をおこないました。まず社長に報告して、次に経営会議で報告したのですが、いずれもリンクアンドモチベーション社のコンサルタントの方に入っていただき、会社の課題について直接フィードバックしていただきました。あのフィードバックで経営層がより本気になったと言うか、そこから一気に改善への気運が高まったように思います。
その後、本社内の約30の組織と、全国13支店を行脚してフィードバックをおこないました。今後の改善活動につながるよう、各組織のマネージャーに丁寧にサーベイの結果を説明していきました。加えて、全社員向けに社長のメッセージを動画配信し、サーベイの結果を共有しています。
平田氏:サーベイは全部で64項目ありますが、すべての項目で数値が出るので、根拠を持って説明することができます。みなさん興味を持って聞いてくれましたし、前向きに結果を受け止めていて、エンゲージメントスコアが低かった組織のマネジャーは「何でだろう?」と考える姿勢が見られました。弊社は技術系の会社で理系出身者が多いこともあり、感覚的な話ではなく、定量的な数値を根拠に説明をすることで、納得感を持って受け止めてもらえるのだと思います。
「人的資本開示について」
大塚氏:昨今、非財務情報の開示、人的資本の開示と盛んに言われるようになりましたが、当然弊社でも、開示を進めています。ですが、ただ単に開示すれば良いわけではなく、弊社の強みを正確に理解いただけるような指標で開示していきたいという思いがあります。
たとえば、よく見る指標に「研修時間」や「研修金額」があります。弊社の場合、技術者は現場での日々の経験によって技能を高めていくという側面が大きいので、研修時間や研修金額が人材投資のすべてを表現できているとは思いません。それだけでは、弊社の人的資本の本質とはずれてしまうように思います。
優れた技術者がたくさんいることを対外的にお伝えしていきたく、今の段階では、一級建築士等の技術者の人数などを開示しています。弊社の人的資本をどのような指標で開示していくかというのは難しいところであり、今後の課題として認識している部分です。
「今後に向けて」
武本氏:一人ひとりの社員がそれぞれの職場において、「地図に残る仕事。」に携わっていることに誇りを持ち、「働きがい」と「働きやすさ」を感じながら、質の高い仕事をしていってほしいと思っています。弊社の技術力を最大限に生かし、お客様の想像を超える素晴らしい価値を提供し続ける会社を目指していきたいです。
大塚氏:今後はもっとモチベーションクラウドを活用して、社員の声に耳を傾け、根気強くエンゲージメント向上に向けた取り組みを進めていきたいと思っています。
弊社には、すでに優れた技術を持った社員がたくさんいますが、さらに技術に磨きをかけ、他を圧倒する技術力を有する会社を目指していきたいです。弊社は多くの人々が利用し社会の役に立つ『ものづくり』をする会社だと思っています。社員が「大成建設に入って良かった、ここで働き続けたい」「大成建設の技術で世の中に貢献したい」と思える会社にするのが私の目指すところです。