事業内容 |
竹中工務店のバンコク支店として、日本同様、設計及び建設サービスを提供している。 |
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業種 | 建設-不動産 |
企業規模 |
2001~名 |
導入規模 | 301~500名 |
従業員の声を客観的且つスピーディに収集し、組織の現状を正しく認識したい
組織課題を把握し、経営やマネジャー陣を巻き込んでエンゲージメント向上に取り組みたい
サーベイを実施することで、従業員や組織の実態を明確に把握することができた
サーベイの結果を共有し、丁寧にコミュニケーションを図ることで、経営陣やマネジャー陣から前向きな変化の機運を醸成することができた
「事業および部署の概要」
梶川氏:
Thai Takenaka International Ltd.は竹中工務店のグループ会社として、タイで建設事業をおこなっています。主として、日系企業のタイ進出のお手伝いをしていますが、近年はタイの企業や外資系企業の顧客も増えています。
そのなかで、私たち人事が大きなミッションとしているのが、人材の確保・育成や組織改善です。昨今はマーケットが変化し、これまでの戦い方が通用しなくなりつつあります。そのため、マーケットの変化に対応した人材を確保したり、マーケットに適応できる人材を育成することが、私たち人事に求められています。
「モチベーションクラウド導入前の課題と導入の背景」
Bulan氏:
以前、組織の現状を把握するために、人事で全従業員と1on1をしたことがありました。しかし、そこで得られた情報は信頼に欠けるものがほとんどでした。「何も問題はありません」「会社に満足しています」というように、「美しい回答」をしようとする従業員が多かったように思います。私たちは「事実」を必要としていましたが、残念ながら1on1で事実を得るのは難しく、場合によっては感情的なことを言われることもありました。
梶川氏:
人事は、従業員の声に耳を傾け、課題を把握し、解決に向けて動かなければいけません。ですから、私たちは従業員の声を拾い、給与や設備など様々な問題改善を経営陣に上申していました。しかし、経営陣からは「誰がそう言っているのですか?」と返されます。「みんなです」と答えると、「みんなとは何人ですか?」と返されます。「1人、2人、、、5人くらいです」と答えると、「じゃあ、だめですね」と取り合ってもらえませんでした。
このような背景もあり、人事としては「自社の実情を網羅的で客観性の高いデータとして把握したい」「エンゲージメントを高めて課題解決を図りたい」という思いがありました。エンゲージメントは、会社の事業計画や戦略の成否に関わる重要な要素の一つです。そのエンゲージメントを改善していくには、まずエンゲージメントサーベイによって客観的なデータと率直な声を把握しなければいけません。これが、モチベーションクラウドを導入した大きな理由です。
「モチベーションクラウドを導入してみて」
Bulan氏:
モチベーションクラウドを導入し、最初のサーベイを実施するにあたっては、担当の方に従業員向けの説明準備を手伝ってもらいました。そして、エンゲージメントサーベイを実施することを従業員に説明しました。このとき、私たちが強調したのは、「嘘をついたり、良く思われようとせず、事実を教えてほしい」ということです。「みなさんが正しい情報を示してくれることではじめて、組織の改善ポイントが分かるんです」という話をしました。
こうして初回のサーベイを実施しましたが、結果はとても興味深いものでした。特に、私たちに共通する弱みや課題を知ることができたのは有益でした。
梶川氏:
スコアは決して良いものではありませんでしたし、従業員のコメントを読んで、私は結構ショックを受けました。「そういうふうに思っていたんだ」と、驚かされるコメントもありましたが、すべて事実です。受け入れて、行動を起こすしかないと思いました。
サーベイを実施した後、従業員から「何だかよく分からない」「もうこんな面倒なことはやりたくない」といったネガティブな意見が出る可能性もあったと思います。そうならないよう、私たちは事前に「みなさんの声はしっかり受け止めますし、結果もきちんとシェアします」と宣言しました。
そして、最初は人事だけで、サーベイの結果を読み解くワークショップをおこないました。人事が深く理解できていないと、マネジャー陣を間違った方向に導いてしまうおそれがあるためです。
そのうえで、マネジャーを対象としたワークショップをおこないました。このときは、サーベイの結果を評価に使うことはないと約束し、「スコアの高低は気にしなくていいから、中身をきちんと見てほしい」と伝えました。そして、マネジャー陣とコミュニケーションを図り、マネジメント面や環境面など、エンゲージメントを高めるためにどこを改善するべきかを話し合いました。
こうしたワークショップやコミュニケーションのおかげで、当初懸念していたようなネガティブな方向に進むことはありませんでした。
「モチベーションクラウドの価値」
梶川氏:
モチベーションクラウドを導入して良かったことは、経営陣がサーベイの結果に真剣に向き合ってくれたことです。いろいろな課題が明らかになりましたが、経営陣はその課題に注目してくれました。
具体的には、労働環境や設備の課題が可視化され、その結果を見た経営陣は、すぐにオフィスの改修を決めました。これは、サーベイに回答した従業員にとって、非常に分かりやすく印象的な施策だったと思います。IT機器に関する項目も課題になっていましたが、比較的改善しやすいところなので、すぐに改善に着手しできました。評価制度が不透明なことなど、短期での改善が難しい課題は、段階的に改善していくことにしました。
基本的に、簡単に改善できるところから着手し、評価や人事制度など一筋縄ではいかない課題は、「時間はかかるけど、改善を進めていくから協力してほしい」と従業員に伝えました。
弊社では、300人ほどの従業員が働いています。300人がサーベイに回答すると、300人に結果をフィードバックしなければいけません。ですから、経営陣や人事はサーベイの結果にコミットする必要があると思います。経営とマネジメント層陣そしてを動かすという意味で、モチベーションクラウドは非常に効果的なツールだと感じています。
Bulan氏:
サーベイでは、従業員から多くのコメントが寄せられます。これらを要約するのは大変ですが、数値やグラフはすぐに出て、課題や改善ポイントが明らかになります。モチベーションクラウドは「期待」と「満足」の2軸で測るので、「期待値は高いけど満足度は低い」など、優先的に解決すべき課題が明確になります。逆に、自社の強みも数値ではっきり認識できるので、良いところに自信を持って組織を運営していくことができます。
また、サーベイをおこない、私たちが改善に取り組むことで、従業員側も「会社が自分たちのことを考えてくれている」と感じられます。このような点も、モチベーションクラウドの一つのメリットだと言えるのではないでしょうか。
梶川氏:
また、興味深いデータでがあります。 たとえば、タイに来ている日本法人の駐在員のサーベイ結果*と、タイの従業員のサーベイ結果を比較したとき、満足しているポイントは似ていたのですが、期待しているポイントがまったく違っていたのです。日本人に「いちばん仕事に期待していること」を聞くと、「やりがい」と答える人が多いのですが、タイの従業員はそれほど仕事にやりがいを求めていません。どちらかと言うと、「みんなと仲良く、チームワークを大切にして働きたい」「良い関係性のなかで仕事をしたい」という思いを持っている人が多いです。
※竹中工務店では2019年より、竹中工務店関連会社では2021年以降よりエンゲージメントサーベイを展開しており、竹中工務店からの派遣社員(駐在員)は2019年よりサーベイを実施している。
そのため、やりがいを重視する日本の駐在員が、「タイの人たちも一緒でしょ」と考えてコミュニケーションをとると、なかなかうまくいきません。「こんなにチャレンジングな仕事を任されたら、嬉しいでしょ?」と言われても、タイの従業員からしたら「なんで?」となります。このようなギャップが日常的に生まれていたように思います。
ですが、サーベイの結果を比較してみたら、「だから、ああいうことが起きていたんだな」と、腑に落ちることがたくさんありました。国民性や文化の違いがサーベイの結果に如実に表れます。日本の駐在員とタイの従業員が気持ち良く働くためには、お互いの違いを認識し尊重することが大切です。このような気付きから、今は他のアジアの法人でもモチベーションクラウドを導入したほうが良いのではないかと思っています。
文化なのか国民性なのか分かりませんが、多くのタイ人は本音を表に出すのが苦手です。その本音を引き出し、把握することができるのは、モチベーションクラウドの大きな価値だと思います。サーベイのデータを分析することで、従業員が何を考えているのかが分かりますし、組織の改善ポイントを正しく把握することができます。
私たちはモチベーションクラウドに詳しくないので、担当のコンサルタントにアドバイスをいただきながら運用しています。伴走してもらっていなかったら、最初のサーベイの結果を見て、「これはやばいね」と言うだけで終わっていたかもしれません。伴走支援をしていただいたおかげで、うまく滑り出すことができました。
「組織改善に向けた取り組み」
Bulan氏:
サーベイから自社の強み・弱みに関する情報を得て、どうすれば次回のサーベイでスコアを改善できるのか、マネジャー陣と話し合いました。そして、改善のためのアクションをしました。なかでも、コミュニケーションの促進は力を入れた部分です。
その結果、2回目のサーベイでは大きな変化があり、エンゲージメントスコアが改善しました。「私たちの方針は間違っていなかったんだ」「正しく従業員に働きかけることができたんだ」と実感できました。
今後は、フォーカスサーベイをうまく活用していきたいと考えています。フルサーベイの結果、「ここを改善しよう」と決めた項目にフォーカスし、その改善度合いを従業員に問うのは非常に効果的だと思います。フォーカスサーベイは1~2問で、1分程度で終わりますから負担にもなりません。フォーカスサーベイをこまめに実施することで、エンゲージメントを高めていけたらいいですね。
「今後、モチベーションクラウドで実現したいこと」
梶川氏:
常にコミュニケーションを図り、想いを共有できる組織が、私たちが理想とする組織です。そのような組織では、誰もが、会社の戦略や組織の問題、人事の取り組みなどを理解しています。だからこそ、私たちはいかなる状況においても情報を共有し合い、コミュニケーションに努めていかなければいけません。
弊社には、社是の中に「誠実インテグリティ(Integrity)」「プロフェッショナリズム(Professionalism)」「チームワーク(Teamwork)」「イノベーション(Innovation)」という4つのキーワード4つの大きな方針があります。これらは実際の社是を、グローバルのメンバーにわかりやすいようシンプルな英語にしたものです。日本法人では、この4つの方針社是が浸透しており、強みの源泉になっています。これらの方針は、言語にかかわらず世界共通で実践できるものであり、それぞれの市場における競争力につながるものです。この4つの方針社是のキーワードを、タイをはじめアジアの支社各現地法人が体現できるようになるといいなと思っています。
また、私が理想としているのは、経営者と従業員が一緒にビジョンを描き、一緒に成長していける組織です。経営者はビジョンを掲げているけど、従業員は「自分には関係ない」と思っているような組織ではいけません。私たちは家族ではありませんが、一つのチームとして働くことができます。共にビジョンを描き、一緒に強くなることができます。そのような組織づくりのために、モチベーションクラウドをうまく活用していきたいですね。