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「選びたくなるまち三条」の実現へ
~新潟県三条市が挑む、エンゲージメントを軸にした組織改革~

三条市

人事課 課長補佐 市橋 陸 氏
人事課 主任 藤井 佑佳 氏 
事業内容 行政サービス
業種 その他

自治体規模

501名~1000名

導入規模

501名~1000名

期待

  • 採用競争の激化、離職増加、メンタル不調増加という人事課題を改善したい

  • 調査だけで終わらせず、結果をもとに具体的な改善行動につなげていきたい

効果

  • サーベイ結果に基づいて組織改善に向けた議論ができるようになった
  • 課題の優先順位や打ち手に対する共通認識が取れるようになった
  • 1on1や定期的なミーティングの実施などにより、所属長と職員の間のコミュニケーションが増えた
  • エンゲージメントの取り組みが、採用活動における説明会等での差別化につながった

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新潟県の中央に位置する、アウトドアのまち

「三条市の概要と人事課の役割」

市橋氏:三条市は、新潟県のほぼ中央に位置する人口約9万人の自治体です。古くから、金属加工や刃物、工具といったものづくりのまちとして知られており、アウトドア用品の産業も含め、日本国内だけでなく世界でも認知度が高まっています。2023年7月には「アウトドアのまち三条」を宣言し、東京から新幹線で約2時間という立地も生かしながら、市全体の魅力向上に取り組んでいます。

私は、人事課の課長補佐として、課内のマネジメントを中心に、人事課全体の業務を担っています。三条市では課長補佐は管理職に位置づけられており、特定の担当業務だけでなく、組織運営そのものを支える役割も担っています。

藤井氏:私は、人事課の主任として、エンゲージメントサーベイの担当に加え、職員の研修や評価制度、メンタルケア、健康管理などを担当しています。職員一人ひとりの状態と組織全体の状態の両方を見ながら、各種人事施策の推進を行っています。

採用競争の激化・離職増加・メンタル不調という人事課題

取り組み前に感じていた課題感」

市橋氏:三条市では、エンゲージメント向上の取り組みを始める前から、職員の採用や定着、メンタルヘルスには強い危機感を持っていました。

まず採用では、公務員の人気低下や人手不足の影響を受け、かつてのように「特別なことをしなくても受験者が集まる」という状況ではなくなってきています。三条市は、県庁所在地である新潟市や県内2位の人口を誇る長岡市という大きな地域に挟まれており、強い競合となる自治体が近くにある状態です。そのような状況のなか、受験者数が減っていることに加え、内定を出した後の辞退も増えるなど、採用は年々難しくなっています。

また、採用後の定着についても課題がありました。近年、メンタル不調を抱える職員が増え、長期離脱者も発生しています。また、転職市場の活性化などに伴い退職者数も年々増加傾向にあります。これまでは若年層の退職が中心でしたが、最近では係長級など、組織の中核を担ってほしい層が転職を理由に離職するケースも目立つようになってきました。

藤井氏:職員に対する研修や人事評価、メンタルケアを担当している立場から見ても、個別の事案に対応するだけで、解決できる状況ではなくなってきていると感じていました。採用競争の激化・退職者の増加・メンタル不調者の増加という三つの現象は、「組織として職員にどう向き合っているのか」という組織のあり方に関わる課題だと受け止めるようになっていきました。

民間出身の市長の就任と、先行自治体への視察から始まった「エンゲージメント」への注目

市橋氏:組織のあり方が問われる中で、エンゲージメントに注目するきっかけになったのが、2020年に当選した現市長の存在です。市長は民間企業出身で、公務経験のない立場から市役所に入りました。そのため、民間企業での経験を活かし、「いい人材を集めるには、まず職場が魅力的でなければならない」「職員の働きがいを高めることが、ひいては市民サービスの向上につながる」といったメッセージを強く発信しています。

象徴的なのは、働き方に対する感覚です。従来公務職場では、自分の名刺は自費で用意するのが当然という雰囲気がありましたが、「仕事で使うものなのだから職場が用意するべきである」という考えを持ち込み、自分たちの感覚を見直すきっかけになりました。そのほか、モバイルPCやWeb会議システム、デュアルモニター、チャットツール(LINE WORKS)、通年ノーネクタイの導入など、ハード面でも働き方の面でも、民間企業の水準に一気に近づいてきたと感じています。

こうした改革が進む中で、市長が注目していた自治体のひとつが大阪府の四條畷市でした。四條畷市はDX推進や副市長の公募など、他自治体と比較しても先進的な取り組みを行うことで知られており、その一貫として職員のエンゲージメント向上にも取り組まれています。私たち人事課や政策推進課の職員も視察に伺い、実際に話を聞いたことで「三条市でもエンゲージメントを軸に組織を変えていけるのではないか」と感じるようになり、エンゲージメントサーベイの導入を検討するようになりました。

診断ではなく「実行支援」に価値がある

「モチベーションクラウドを選んだ決め手」

市橋氏:エンゲージメントサーベイの導入にあたっては、プロポーザル方式の公募を実施し、複数社のサービスを比較しました。比較する中で注目していたのは、サーベイを実施した後、改善に向けて「どのような支援をしてくれるのか」という点です。実際に、サーベイを通じて組織状態が可視化できたところで、私たちには、組織改善に関するノウハウは十分にありません。そのため、改善に向けてどのような支援を行ってくれるのかを重要視していました。

リンクアンドモチベーションは、モチベーションクラウド エンゲージメント内のサーベイ機能だけでなく、組織改善に向けたコンサルティングやフォロー体制が手厚いことが印象的でした。加えて、担当コンサルタントの方がプロポーザルや事前打ち合わせの場で、高い熱量を持ってお話してくださる姿も印象的でした。「診断して終わり」ではなく、「一緒に改善まで伴走してくれるパートナー」だと感じられたことが大きな決め手になりました。

藤井氏:サーベイの結果を読み解き、「どのような順番で何から変えていくのか」について、専門家から具体的なアドバイスをもらえることは、非常に大きなメリットだと感じています。その中でリンクアンドモチベーションが持つ「コンサルティング」や「フォロー体制」は、当市にとっても高い価値があると感じました。

市橋氏:導入当初は、「なぜこうした取り組みにお金や時間をかけるのか」という声も上がっており、目的や意義を理解してもらうことにハードルを感じる部分がありました。これまで市役所には、職員に投資するという発想があまりなく、「職員よりも市民向けの事業に投資すべきではないか」という見方もありました。

そのなかで大きかったのが、リンクアンドモチベーションの存在です。人事課から内部に向けて、「職員に投資することが大事だ」と言っても、「何を言っているんだ」と否定的に受け取られてしまうことがあります。しかし、さまざまな組織を見てきたリンクアンドモチベーションが第三者の視点で、「エンゲージメント向上が、最終的には市民サービスの向上につながる」と説明してもらったことで、少しずつ職員内での受け止め方に変化が見られるようになりました。

結果は時に「残酷」だが、管理職の受け止めは変わりつつある

「サーベイ結果を受けて」

市橋氏:サーベイの結果は、良い部分も悪い部分も含めて、現実を突きつけてくれます。正直、結果だけを見ると、時に「残酷」だと感じることもあります。特に、初めて結果を見た所属長にとっては、自組織の状態がはっきりと定量化されるため、自身の認識とのギャップを感じ、ショックを受けることもあったと思います。

藤井氏:部長層や課長層は、複数回サーベイを経験するなかで、「この項目は組織にとって重要だから、改善に向けて自分たちの行動を変えていこう」と前向きに捉える方が増えてきました。

ある所属長は、初めて自部署のエンゲージメントスコアを目にし、大きな戸惑いを感じていました。ですが、一緒に課題解決に向けた議論を重ねていく中で、少しずつ結果と向き合い、自分なりの改善アクションに取り組み始めています。

市橋氏:サーベイ結果を受けて、三条市では特に二つの取り組みに注力しています。一つ目は所属長と職員一人ひとりとの対話の機会を創ることです。代表的なものに「1on1面談」があります。

所属長と各職員が定期的に1対1で話す場を設けており、過去には、副市長が係長と面談する取り組みも行いました。また、サーベイ結果から主任層のエンゲージメントが低いことが分かったため、所属長と主任の面談を重点的に実施するなど、階層ごとの課題に合わせて取り組みを進めています。

藤井氏:積極的に1on1を実施している部署は、エンゲージメントスコアが上がっています。1on1をきっかけに所属長と職員の対話が増えたことで、所属長が出先機関に足を運ぶ回数が増えたり、職員同士での定期的な対話や情報共有が増えるなど、組織全体の雰囲気が変わってきていると実感しています。

もう一つの取り組みが、自分たちの役割や目指す姿の言語化です。所属によっては、自分たちのミッション・ビジョンを策定したところもあります。全組織としての動きとしているわけではないですが、自発的に策定した所属の職員からは、「目標が明確になったことで、所属の一員として何を大事にしながら働けばよいかが分かった」「日々の業務と組織として目指す方向性が結びつきやすくなった」など、前向きな声も上がっています。

マネジメントのあり方が変わった

「取り組みを通じて実感した成果」

市橋氏:所属長と職員の対話などを通じて、マネジメントのあり方が変わってきていると感じています。以前は、上意下達の文化が色濃く、所属長・職員ともに「所属長がやると言ったら、職員は意見せずにやりきる」という認識がありましたが、その認識にも変化が見られるようになりました。

藤井氏:リンクアンドモチベーションの担当コンサルタントの方から、「人間は『完全合理的な経済人』ではなく、『限定合理的な感情人』である」という考え方を教わりました。「納得して動いてもらう」ためのコミュニケーションやマネジメントをどう設計するか。エンゲージメントサーベイを軸に議論する中で、そうした視点が当市にも少しずつ浸透してきていると感じています。

市橋氏:「エンゲージメント」という言葉が単なる流行語ではなく、「組織と人をどう捉え、どう関わっていくか」を考えるうえでの“共通言語”として、組織の中に根づき始めていると実感しています。

段階を踏む変革プロセスの重要性に気づいた

「段階を踏む変革プロセスの重要性に気づいた」

藤井氏:モチベーションクラウド エンゲージメントを導入し、リンクアンドモチベーションと一緒に改善活動を続けてきた中での一番の気づきは「変革に段階がある」ということです。これまで、何か新しい取り組みを始める際は、「これが正しい」と思う方向に一気に舵を切ろうとする傾向がありました。その結果、職員の共感が得られず、逆に反発が生まれてしまうことも少なくありませんでした。

どうすれば職員の共感を得られるのかを悩んでいた際、コンサルタントの方から「変革には3つのステップ(Unfreeze(溶かす)→Change(変える)→Refreeze(固める))があり、まずはUnfreeze(溶かす)のステップが重要です」という話を聞いたことがとても印象に残っています。いきなり改革案を押し進めるのではなく、まずは職員の不安や不信感を少しずつ溶かし、対話を通じて変化に対する共感を育んだうえで、次のステップに進んでいく。エンゲージメントサーベイは、組織を映す鏡であり、対話のきっかけでもあると理解するようになりました。

市橋氏:このお話を伺うまでは、結果を見ると「ここが悪いから、すぐにこう変えよう」と考えがちでした。ですが、組織や人の感情を変えるためには、一定の時間と変化のためにステップを刻むことが必要で、そこを飛ばすとうまくいきません。エンゲージメント向上の取り組みの中で、変化を起こすには「まずは溶かすことが大事だ」という学びを得られたことは、私たちにとって大きな転換点だったと思います。

三条市の「採用ブランディング」にも好影響が生まれている

「当社との連携協定における効果・メリット」

藤井氏:三条市は2025年8月に、リンクアンドモチベーションと職員の採用戦略やキャリア形成などの組織人事に関する連携協定を締結しました。また、コンサルタントの依光氏を「人事戦略アドバイザー」として任命し、エンゲージメントサーベイに基づく組織改善だけでなく、採用や育成、組織風土に関する相談も含めて、ワンストップで伴走いただいております。

市橋氏:人事課としては、採用に関する課題が多くある一方で、予算の関係上、採用の課題解決のみを外部のコンサルティングファームにお願いするのは難しい側面があります。そのなかで、エンゲージメント向上の支援を軸にしながら、採用活動のフォローアップやメッセージ設計まで一緒に考えてもらえることに大きな価値を感じています。

採用説明会などで、「三条市はエンゲージメント向上や働き方改革に取り組んでいます」と伝えると、他自治体との差別化にもつながりますし、応募希望者からの反応も良いと感じています。エンゲージメント向上の取り組みが、三条市の「採用ブランディング」にも好影響を与えていると感じますし、一緒に伴走しながら取り組んでいただけるリンクアンドモチベーションの存在は大きいです。

「選びたくなるまち三条」の実現へ。新潟県三条市と組織人事に関する連携協定を締結
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000006682.html

やらされ感ではなく、当事者として変わる組織へ

「今後目指していきたい組織像」

藤井氏:今後は、所属単位でのエンゲージメント向上の取り組みに加え、サーベイ結果をもとにした組織全体の制度設計や運用改善にも取り組んでいきたいと考えています。所属ごとのアクションと全庁的な改善がうまく噛み合えば、相乗効果でエンゲージメントが高まっていくはずだと感じています。

市橋氏:エンゲージメントを高めることで、退職者やメンタル不調者を少しでも減らしたいと考えています。そして、優秀な人材が集まり、定着している状態を実現したいと考えています。最終的には、職員が市民に対して質の高い市民サービスを提供し続けることで、三条市という地域そのものがより良い地域になっていく。そこまで見据えて取り組んでいくつもりです。

こうした取り組みの中で、大切にしたいのは「職員にやらされ感を感じさせない」ということです。エンゲージメント向上の取り組みは、職員一人ひとりの意識や行動に深く関わるからこそ、取り組みの目的や意義を理解し、納得したうえで取り組んでもらう必要があります。

急な変化を起こすのではなく、まずは職員の不安や不信感を少しずつ「溶かしていく」ことで、変化に対する共感を育み、一つずつステップを踏みながら変えていきたいと考えています。

藤井氏:無理やり変化を起こして、一時的にエンゲージメントが高まっても、それは本当の意味で職員の退職やメンタル不調の抑制、働きがいの向上にはつながりません。これからも、職員一人ひとりが当事者として「この職場を自分たちで良くしていこう」と思えるような関わり方を大事にしていきたいです。

リンクアンドモチベーションには、これからも人事戦略アドバイザーとして、診断だけで終わらない実行支援と、私たちでは気づけない視点を提供し続けてほしいと期待しています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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