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諦め感を脱し、
町の未来を主体的に考える組織へ
群馬県長野原町の組織改革

長野原町

副町長 梶野 寛丈 氏

事業内容  行政サービス
業種    その他
自治体規模 101~300 名
導入規模  101~300 名(導入時)

期待

  • 職員が「やらされている仕事」から脱し、
    町の未来に向けて主体的に考え、行動できる組織にしたい

  • 組織風土改革を通じ、職員の活性化と町民サービス向上につなげたい

  • トップの考えや方針が、現場に「伝わる」だけでなく
    「腹落ちする」状態をつくりたい

効果

  • 副町長を起点に、管理監督者層との対話の機会が増え、
    組織内のコミュニケーション量が向上
  • 以前は上からの指示を待つ傾向が強かった場面でも、
    職員が自分の意志や考えを発信する場面が増えてきている

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自然とともに暮らす町、長野原町

長野原町は人口約5,000人の小さな町で、草津と軽井沢に挟まれた場所にあります。高原野菜や酪農などの農業も盛んで、浅間高原や八ッ場ダムといった名所もあるなど、豊かな自然に囲まれています。
また、古くから別荘地・高原リゾート地としても知られており年間約90万人の観光客が訪れています。

私は民間企業から長野原町に入り、副町長として着任してから3年目になります。就任にあたり、町長からは「役場の組織を良くしてほしい」という明確な依頼を受けました。もともと行政の仕事に強い関心があったわけではありませんが、「組織を良くする」という役割であれば、自分が担う意味があると考え、この町に飛び込むことを決めました。

副町長として、町長を支えながら幅広い業務に携わっていますが、特に力を入れているのは人と組織に関わる領域です。

組織内に漂っていた、諦め感

取り組み前に感じていた課題感」

実際に役場に入ってまず感じたのは、職員一人ひとりが非常に真面目で、一生懸命に働いているということでした。その一方で、業務量に追われる中で、「やりたいこと」や「自分たちで変えていく」という感覚を持ちにくくなっているようにも見えました。目の前の業務をこなすことに精一杯で、「町の将来や組織のあり方について考える余白がない」、そんな状態に近いのではないかと感じていました。

こうした状況の中、組織を良くするために職員と少しずつ話をしていく中で、印象に残っている言葉があります。

「言われたことをやるしかない」「納得していなくても仕方がない」

こうした言葉は、決して怠慢な気持ちから出たものではなく、これまでの経験や環境のなかで積み重なってきた「組織に対する諦め」の表れだと感じました。この状態を放置してしまえば、どれだけ制度や計画を整えても、組織は前に進まなくなる。とそのように考えたときに、まず必要だと思ったのが、「組織状態を正しく把握すること」でした。感覚や印象論ではなく、事実をもとに対話できる材料がなければ、どこから手を付けるべきかも見えてこないと考えていました。

一通のDMから知った、組織変革に向き合う“同志”の存在

「導入のきっかけ

実は私自身、長野原町に来る以前から「エンゲージメント」という考え方に関心を持っていました。なぜなら、前職の民間企業でも、組織として成果を出すためには、一人ひとりが納得感を持って働けていることが非常に重要だと感じていたからです。そのため、着任当初から「どうすれば一人ひとりが納得感を持って、働くことができるのか」という問題意識を持ちながら、組織変革を進めていました。

副町長1年目のある日、机の上に一通のDMが置かれていました。それが、リンクアンドモチベーションが開催する自治体向けセミナーのDMでした。正直、普段であればそのまま見逃してしまうような案内だったのですが、そのDMに書かれていた内容が、当時自分が抱えていた問題意識と重なる部分があり、気になって目を通しました。

その後、DMで案内されたオンラインセミナーに参加し、他自治体の取り組みを知る中で、「組織や人の課題に真正面から向き合っている自治体がある」ということを知りました。特に印象的だったのが、君津市の取り組みです。同じように悩み、試行錯誤しながら取り組んでいる“同志”がいると感じられたことは、大きな後押しになりました。

「この人たちなら、一緒にやっていけるかもしれない」と思えた

「導入の決め手」

組織変革に向けてエンゲージメントサーベイの導入を検討する中で、リンクアンドモチベーションの担当の方と何度も対話を重ねました。対話の中で印象に残っているのは、こちらが抱えている問題意識や課題感を投げかけたときに、私たちの組織状態を非常に高い解像度で言語化してくれたことです。
ツールの説明以上に、「今、何に困っているのか」「なぜ変えたいのか」という部分をしっかり受け止めてもらえた感覚がありました。「この人たちとなら、一緒にやっていけるかもしれない」と思えたことが、モチベーションクラウド エンゲージメントの導入に向けた一番の決め手だったと思います。

導入にあたり大きなポイントとなったのが、議会への説明です。組織や人への投資は、どうしても理解を得るのが難しいテーマであるため、ここを曖昧にしたまま進めてしまうと、後々議会や職員からの反発が起こる可能性が高いと考えていました。そこで、リンクアンドモチベーションの方に、議員向けの説明会を設けてもらいました。単なるツールの説明だけではなく、質疑応答も含めて、「なぜ今この取り組みが必要なのか」「人や組織への投資が、町づくりにどうつながるのか」を丁寧に共有してもらいました。こうした取り組みの結果、全員が目的を理解し共通認識を持ったうえでスタートできたことは、非常に大きかったと思います。

可視化された課題に対し、副町長自らが主体として取り組みを推進

「サーベイを通じて見えてきた課題」

初回のサーベイを2024年5月に実施して以降、これまで4回実施し、対象である職員134名全員が回答しています。最初のサーベイ結果を見たときの第一印象は、「やはりそうだな」という納得感がありました。特に「課や階層によって感じ方に差がある」「理念や方針への期待は高い一方で、納得感が十分ではない」という課題感が、数字として示されたことは、組織変革を進めるうえで非常に大きかったと感じています。

これまでは、「伝えているつもり」「分かってもらえているはず」という感覚で進めてきた部分もありました。しかし、サーベイ結果を見ることで、「どこが伝わっていないのか」「どこから手を付けるべきか」を具体的に考えられるようになりました。特にコミュニケーションの課題は深刻で、自分が向き合わなければ変わらないと痛感しました。

「具体的な取り組み」

サーベイ結果を受けて、私がまず意識したのは、「誰を起点に変えていくか」という視点です。いきなり組織全体を変えることはできません。そこで、課長一人ひとりをキーマンと捉え、関係性をつくることを重視しました。

例えば、各部署の課長が参加する「課長会議」を単なる報告の場ではなく、理念や方針を共有し、対話する場として位置づけ直したのもその1つです。また、日常業務の中でも、私が一人ひとりの課長と向き合い、話を聞くことを意識してきました。何か相談事や質問があってもまずはその人の話を受け止める。一人ひとりと対話することは当然時間がかかりますが、ここを疎かにしてしまうと課長との関係性が育めないと感じ、注力して取り組んでいきました。

また、課長一人ひとりとの関係づくりと並行して、町長・副町長・教育長の三役と全課長が一堂に会し、組織運営を行う中で普段感じていることや、コミュニケーションに関する課題について、腹を割って対話する場を設けました。ここでは、理念や方針を「伝える」こと自体を目的とするのではなく、「伝わる」ための土台となる信頼関係を作ることを重視しました。トップからの一方通行の説明では、どうしても「聞いたこと」にはなっても、「腹落ち」までは至りません。だからこそ、問いを投げ、言葉を受け取り、相互に確認し合う時間を意図的につくりました。

この場を通じて、三役側にとっても、「何が伝わっていて、何が伝わっていないのか」を把握する機会になりましたし、課長側にとっても、自分たちの受け止め方や迷いを言語化できる良い場になったと感じています。

その他では、人員配置を検討する際にもサーベイ結果を基に、検討するようになりました。「なぜこの人を、この配置にするのか」について、データに基づいた説明ができるようになった結果、人員配置への納得感に関するスコアが大きく向上しました。

風通しの良い風土が醸成され、職員の主体性が芽生え始めている

「取り組みを通じて感じている変化」

組織変革に向けた取り組みを進める中で、変化を感じているのが、「上司と部下のコミュニケーション量の増加」です。正直、3年前は若手職員が副町長である私に気軽に声をかけてくるという場面はほとんどありませんでした。それが今では、業務相談や自身の考えを伝えに来る職員が少しずつ増えてきました。以前と比較して、私から声をかけることも、職員から声をかけてくれることもより自然になってきていると感じています。小さな変化ではありますが、確実に風土が変わってきていると実感しています。

また、副町長である自分自身が、様々な取り組みを通じて、理想とする姿勢を示し続けていることで、組織全体にも少しずつ波及できていると感じています。
以前であれば、上司からの指示を待つことが多かった職員も、「自分はこのように思う」「こうした方が良くなるのではないか」といった前向きな声が出てくるようになりました。

こうした変化は、一朝一夕で生まれるものではなく、取り組みを進めてきたからこその結果だと感じています。

目指す姿に向けた計画を、主体的に実行する組織へ

「今後の展望」

これからの課題は、受け身ではなく、主体的に組織や事業を作っていく職員をどう増やしていくかということです。現在、長野原町では5年先を見据えた総合計画を、職員も巻き込みながら策定しています。ただ、総合計画を立案するだけでは、職員の行動は変わらず、受け身でこなすことになってしまいます。熱量高く実行に移してもらうためには、組織のあり方を変えていくことが欠かせません。来年度以降は、係長層など次世代を担う職員を起点にしながら、主体的に動くチームをつくり、組織全体に熱量を広げていきたいと考えています。

実行力のある組織の実現に向けて、リンクアンドモチベーションの方々と一緒に汗を流しながら進めていけるような仕組みを作れたらと思っています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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